才能あふれる日本のミュージシャンたちによるディズニーを愛する想いをこめて制作された珠玉のコンピレーションアルバム。この制作について、エグゼクティブ・プロデューサーをつとめた、世界的に有名な映画監督、演出家のケニー・オルテガ(Kenny Ortega)に聞いてみた。

VARIOUS ARTISTS Thank You Disney avex trax(2017)

――最初にこのアルバムのオファーを受けたとき、どう感じましたか?

ケニー・オルテガ(以下KO)「日本からのオファーは大歓迎だよ。僕は日本の文化が大好きだし、チャンスがあればいつだって、日本に戻りたいと願っているんだ。マイケル・ジャクソンやグロリア・エステファンのツアーで来日したときの忘れられない思い出があるからね。だから、このアルバムにエグゼクティヴ・プロデューサーとして参加して欲しいと言われたときは、本当にワクワクしたよ。それに長年ディズニー作品にたずさわってきたこともあって、ディズニーの音楽は僕にとって特別なもの。おなじみの曲に新たな魅力をつけ加えることができるし、参加アーティストのラインナップもすごい。最初に電話を受けた瞬間から興奮していたし、こうして実際にアルバムを仕上げることができて、最高に幸せだね」

――選曲やアレンジはどのように?

KO「日米で協力し合って進めたんだ。アーティストは日本のレコード会社(エイベックス)が選定して、アメリカの僕たちにCDやミュージックビデオを送ってくれた。こういう方向性がいいんじゃないかという的確な提案をしてくれた一方で、既成のジャンルに捕らわれず、アーティストたちをワクワクさせ、意欲をかき立てるような選曲やアレンジにして欲しい、とも言ってくれた。みんなが僕のアイデアにオープンでいてくれたことに、とても感謝しているよ」

――実際にアーティストたちに会ってみて、いかがでしたか?

KO「夏に来日したとき、7組のアーティストに会うことができた。三浦大知は存在感のある魅力的な人物で、すばらしい才能の持ち主だね。SKE48のメンバーたちにも会ったけど、僕は彼女たちの大ファンだから、うれしかったな。AiNA THE ENDは、ものすごくユニークで独創的なアーティスト。Miracle Vell Magicはカリスマ的で元気いっぱい、まるで流れ星のように輝いていて、すっかり魅了されたよ。May J.とBeverlyにも会ったけど、彼女たちの歌唱力は世界レベル! 世界中のみんなが、彼女たちの歌声を知るべきだと思う。そしてビッケブランカの曲は、話題をさらうこと間違いナシ。みんながぶっ飛ぶような、ホットなトラックになっているんだ。実際に会って、アーティストたちの喜ぶ顔を見たら、努力が報われたよ」

――アルバムを作るときから、ライブで演奏することを考えていたそうですね。

KO「僕はライブパフォーマンスが好きなんだ。オリンピックの開閉会式やスーパーボウルのハーフタイムショー、マイケル・ジャクソンのコンサートなどで演出や振り付けをつとめたからね。日本の観客のために、このアルバムをもとにしたコンサートができるかもしれないと考え始め、それがアルバムの方向性にも影響した。コンサートをやるなら、人々を奮い立たせるアンセム的な曲や、立ち上がって手拍子をしたくなるような曲があったほうがいい。そういった要素も頭に入れて、本作をプロデュースしたんだ」

――仕事をする上でのモットーは?

KO「幸せなことに、僕にはたくさんのメンター、つまり指導者がいるんだ。男女問わず、僕の考え方や仕事の仕方に影響を与えてくれた人たちがね。大勢のメンターが僕の肩に乗っかっているから、すごく重たいんだよね(笑)。なかでも特筆すべき人が2人いて、その1人は(伝説的なダンサーで俳優の)ジーン・ケリー。彼は何事にも〈レゾンデートル〉、つまり存在理由や存在意義がなくてはならないと教えてくれた。どんな仕事であっても、そのなかに意義や目的を見出すことが大切なんだ。もう1人はマイケル・ジャクソン。彼は一緒に仕事をするときに、いつも決まってこう言っていた。「ケニー、恐れを持ち込んじゃダメだよ。恐れは創造力の妨げになるから」と。だから僕は、新しいことを始めるときはいつも理由や意義を探すし、恐れず大胆に取り組むようにしているよ」

――日本のファンにメッセージをお願いします。

KO「もしみなさんが、僕と同じようにディズニーの大ファンだったら、きっとこのアルバムを気に入ってもらえるはず。新鮮で斬新で元気になれる、唯一無二のアルバムになったと思う。参加アーティストも選曲も最高だしね!」

 


ケニー・オルテガ(Kenny Ortega)
「ディセンダント2」エグゼクティブ・プロデューサー、監督、振付師。13歳の時に、俳優としてのキャリアをスタート。演劇やミュージカルに出演したのちに、1980年代に、A &Mのレコーディング・アーティストであるザ・チューブズ(The Tubes)の振付が、歌手シェールの目にとまり、テレビの特集番組の振付を依頼される。彼の名を世間に広めたのが、構想と制作を担当したマイケル・ジャクソンの「デンジャラス」ワールド・ツアーと「ヒストリー」ワールド・ツアー。近年では、ディズニー・チャンネルの大ヒット映画「ハイスクール・ミュージカル」フランチャイズで監督と振付を務め、シリーズ合計3作を生み出し、その後、「ディセンダント」の監督を務める。

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