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インタビュー

バターリング・トリオ(Buttering Trio)の摩訶不思議なサウンドはどこからきた?

LAビートとイスラエル・テルアビブ繋ぐ異形の音楽性に迫る

バターリング・トリオ(Buttering Trio)の摩訶不思議なサウンドはどこからきた?

「今度、〈イスラエルのハイエイタス・カイヨーテ〉をリリースするんですよ」と、レーベル担当氏に薦められたのは今年の春。バターリング・トリオの『Threesome』は、斜め上を行くサプライズに満ちていた。現代ジャズを通過したネオ・ソウルや、フューチャー・ソウルと呼ばれる音楽が飽和気味のなかで、ここまで異彩を放つサウンドも珍しいだろう。

そんなバターリング・トリオの初来日公演が、去る10月に東京・渋谷WWWで開催されたのだが、これがまた素晴らしいステージだった。シンガー兼サックス奏者のケレン・ダン、ビートメイカーのリジョイサーことユヴァル・ハヴキン、ベーシストのベノ・ヘンドラーの3人は、スカスカの空間に一筆書きを交わらせながら、摩訶不思議なアンサンブルを奏でていく。ハウシーで緩やかなビートや、歌心に富んだベースラインのうえで、エキゾティックなヴォーカルが舞い踊り、ときどきサックスも鳴り響く。たったそれだけなのに、気付いたら緩やかなグルーヴに呑み込まれてしまった。それこそ、ハイエイタス・カイヨーテとは似ているようでまったく違う。あの心地良い湯加減は、どこからやってきたのだろう?

プロデューサーとしても活躍するリジョイサーは、イスラエル第2の都市・テルアビブを代表するインディー・レーベル、ロウ・テープス(Raw Tapes)の設立者でもある。その動向を辿っていくと、ジャズやワールド・ミュージックの印象が強いイスラエルで、別の可能性が芽吹きつつあることに気が付くだろう。そこで今回は、バターリング・トリオのケレンとリジョイサーにインタヴューを実施。さらに、ここ日本で彼らの作品をリリースしているringsの主宰で、音楽ジャーナリストの原雅明氏にも参加していただき、テルアビブの新しい夜明けに迫った。

(左から)リジョイサー、ケレン・ダン、原雅明

 

中東系のスケールとサイケデリックな空気、都会的なサウンドの融合

――ライヴの最後に披露された“Little Goat”という曲が、とてもユニークで印象的でした。ケレンが山羊の鳴き声を真似ていたのも可愛かったです。あの曲はどういうイメージで作られたのでしょう?

リジョイサー「いい質問だね。あれは6年前に、初めてベノ(・ヘンドラー)と一緒に作った曲なんだ」

ケレン・ダン「もともとは『Ali Baba And The Forty Thieves』という無声映画のライヴ・サウンドトラックとして作った曲なの」

『Threesome』収録曲“Refugee Song”

リジョイサー「そう。20世紀初頭の古い作品で(1902年)、監督のフェルディナンド・ゼッカは、当時のフランスでは『月世界旅行』のジョルジュ・メリエスと並ぶ存在だった。それで、ケレンの姉はマヤ・ダンイエッツ(MAYA DUNIETZ)という有名なピアニスト/コンポーザーなんだけど、彼女が映画のために曲作りすることを薦めてくれたんだ」

ケレン「あとは、パキスタンの古い民俗音楽をいろいろとサンプリングしたりね。最初はインストにする予定だった」

リジョイサー「イントロのビートでは、ファルフィッサという古いイタリア製のキーボードを使っている。あとからベノが書いた歌詞も、随分ファニーな感じでね(笑)。作るのが楽しかったよ」

“Little Goat”、2016年に7インチ・シングルでリリース

――あの曲もそうですけど、バターリング・トリオの音楽は、中東系のスケールとサイケデリックな空気、都会的なサウンドの3つが上手く融合している感じがしますよね。

ケレン「そうね。今の説明は、私たちの音楽にぴったり当てはまると思う」

リジョイサー「特にサイケは大きいんじゃないかな」

原雅明「今回のライヴも、最初はネオ・ソウル的なノリが強かったのが、だんだん中近東のリズムが前に出てきましたよね。そういうルーツを垣間見ることができたのもおもしろかったです。レコードだけではわからない部分だったし」

リジョイサー「ありがとう。ライヴだとソロのパートも自然と長くなったりするし、僕らのステージはCDとは結構違うと思うよ」

2016年のライヴ映像

――バターリング・トリオはベルリンで結成されたそうですが、2人はどんなふうにして出会ったのでしょう?

リジョイサー「僕らはベルリンにいたとき、同じ高校に通っていたんだ。初めて出会ったとき、僕は16歳で、ケレンは15歳だった。廊下ですれ違ったときに、〈なんて美しいんだ……〉とびっくりしたよ(笑)。赤毛もビューティフルでさ。あれからもう16年も経つんだね」

ケレン「学校を卒業してからしばらくして、(テルアビブで)たまたまユヴァルを見かけたら〈やー、久しぶり〉と声をかけてくれて。そこで彼の作った音楽を渡されて、聴いてみたら凄く良かった。ちょうど私もビートを作ろうと考えていた時期で、同じようなことに取り組んでいる彼に興味を持つようになったの。その頃にはロウ・テープスも立ち上がっていたから、私も参加したかったし」

リジョイサー「そして今では、僕らの両親まですっかり仲良くなって、コスタリカやグァテマラで一緒にボートを漕いだりして遊んでいるみたい(笑)」

2011年のEP『Party Bear EP』

――2人のルーツとなった音楽を挙げてみてもらえますか?

リジョイサー「前に2人でレコーディングしたとき、ケレンが自分のヴァースを〈ニーナ・シモンとクリスティーナ・アギレラの融合〉と表現していたことがあったよね」

ケレン「そうそう(笑)。私はポップもブルースっぽい感じも両方好きだから。小さい頃はサラ・ヴォーンみたいなジャズ・シンガーを聴いていたし、一方でマライア・キャリーにも魅了されていた。ジョージア・アン・アルマドロウも好きだったし、たくさんの女性シンガーに影響を受けているけど、一番大きかったのはキューバのセリア・クルースだと思う」

リジョイサー「僕はもともとパンクを聴いて育ってきた。マイナー・スレッド、ゴリラ・ビスケッツ、バッド・ブレインズとか。そのあと、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーも聴くようになって。そこからア・トライブ・コールド・クエストやマッドリブ、初期のストーンズ・スロウの作品に出会い、少し変わったヒップホップも聴くようになったんだ」

ケレン「ちなみにベノは、ダブやレゲエが好きなの」

リジョイサー「キング・タビーやマッド・プロフェッサー、それにクール&ザ・ギャングやブーツィー・コリンズのようなファンクもね」

――中近東の音楽ではどうですか?

ケレン「アラビア系のおとぎ話にも影響されているし」

リジョイサー「ファリド・エル・アトラシュ(Farid al-Atrash)のような昔のシンガーも好きだよ。それにギリシャの音楽も。イスラエルではそういう音楽も街中で流れているんだよ」

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