感覚的に分かっていても具体的に説明するのは難しく、使い勝手が良いゆえに多用しがちな〈音楽的〉〈歌心〉という言葉。それが音楽のどこに存在しているものなのか、考えたことはあるだろうか。古楽アンサンブル 〈アントネッロ〉のリーダーを務める著者は、演奏者ならではの理論と実践に基づくアプローチにより、その答えをかなりの程度明らかにしている。参照されるのは各時代の音楽理論のみならず、ファンクやワールド・ミュージック、さらには往年の巨匠の録音(例えばクナッパーツブッシュ)と幅広い。古楽系でありながらいわゆる大時代的な演奏を理想としているなど、考え方もユニークで新鮮。
濱田芳通『歌の心を究むべし 古楽とクラシックのミッシングリンクを求めて』演奏者ならではのアプローチで歌心のありかを探究
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