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エルトン・ジョンも太鼓判! 世界を震撼させた“Ants”で衝撃のデビュー

いまだ全員が10代だというスタークローラーは、アロウがドラマーのオースティン・スミスと意気投合したことからスタートした不定形のプロジェクトでした。そこに他のバンドを掛け持ちしていたヘンリーとティム・フランコ(ベース)が加わり現在の4人となりますが、アロウの神秘的なオーラに何かを感じ取った3人は、スタークローラーとしての活動一本にシフトします。

ちなみに、メンバーの音楽的ルーツは見事にバラバラ。アロウは「オジー・オズボーンの『Blizzard Of Ozz』を聴いて人生を変えられたの!」と目を輝かせ、ヘンリーは「両親が音楽家でゲームをやらせてもらえなかったから、ずーっと楽器を弾いていたんだ。音楽家としてはハリー・ニルソンをリスペクトしてる」と語り、寡黙な印象のティムは「家ではビリー・ジョエルとかビー・ジーズみたいなダサい70年代の音楽がかかっていた。ベースを始めたのはここ5〜6年だけど、今じゃすっかり夢中だよ」と、このバンドで演奏できる喜びを明かしてくれました。インタヴューでアロウは必ずオジーの名前を挙げているので、それはバンドの音楽性やキャラクターを紐解く上で大きなヒントになるかもしれません。

おもにアメリカ国内で地道にライヴ活動を続けていたスタークローラーですが、先述のラフ・トレードとサインした2017年初頭には、LAの兄貴分スティーヴン・シェイン・マクドナルド(レッド・クロス、オフ!)をプロデューサーに迎え、結成初期の共作曲だったという“Ants”をシングルとして発表。バンドの名刺代わりとなったこの曲は、ゼイン・ロウら人気DJがパワー・プレイし、あのエルトン・ジョンまでもが自身のラジオ番組〈Rocket Hour〉で流したそうで、バンドはこれ以上ないほど理想的なデビューを飾ることに。

“Ants”は2017年、イギリスで放送されていたユニクロのワイヤレスブラのCMソングにも起用された

 

ロックンロールを愛し、ロックンロールに愛された完全無欠のバンド

地元の新聞〈LAウィークリー〉のカヴァーを飾るなど上昇気流に乗りつつあったスタークローラーは、2017年9月にセカンド・シングル“Let Her Be”をリリース。キュレーターを務めるデイヴ・グロールが真っ先にスタークローラーに出演をオファーしたという〈CalJam〉や〈Desert Daze〉など、故郷カリフォルニアで開催されたフェスでも爪痕を残しまくってきた彼女たちですが、その合間にしっかりとファースト・フル・アルバム『Starcrawler』を完成させていました。

同作にプロデューサーとして迎えられたのは、オルタナ・カントリーの旗手として登場し、いまやアメリカを代表するシンガー・ソングライターとなったライアン・アダムス。オースティンは「ライアンはアロウの母親とインスタ友達でさ。僕らのライヴ後にスタジオに招待されて、出会って1週間後くらいにはもう、何曲かレコーディングしていたね。彼には〈シンプルであること〉がいかに大切なのか教えてもらったよ」と振り返りますが、ライアンも「スタークローラーはロックの未来さ。キッス、エックス、ソニック・ユース、ストゥージズのような存在になるだろう」と心酔のご様子。 

アルバムは、ライアンが所有するレコード会社〈Pax-Am〉のスタジオにて全編アナログテープに録音するという手法が採られたそうで、オジーの“Crazy Train”にインスパイアされたと思しき“Train”に始まり、ブラック・サバスを彷彿とさせるイントロから急加速していく“Chicken Woman”、アロウとヘンリーのヴォーカルがソニック・ユースばりのエロティックな絡みを見せる“Pussy Tower”、あるいはニルヴァーナ譲りのファジーなギター・リフで幕開ける“Full Of Pride”などなど、本作にはロックンロールがもたらす脳天を突き抜けるような興奮や、見る者・聴く者をゾクゾクさせるような色気、今すぐバンド名のタトゥーを彫りたくなる完全無欠のカッコ良さ、そのすべてが純度100%で封じ込められています。

一方、“Tears”では〈今あなたにいてほしい/取り残されて不安だから〉と繰り返す〈弱さ/脆さ〉をさらけ出す瞬間もあり、等身大なティーンの女のコの素顔を覗かせてもいます(実際、歌詞のほとんどはアロウとヘンリーが書いているそう)。全10曲で30分未満という収録時間も、名盤の条件としてバッチリです。

※日本盤ボーナス・トラックを除く
 

そして、アロウが敬愛するジョーン・ジェット(ランナウェイズ)もカヴァーした名曲“I Love Rock 'N Roll”を連想させる“I Love LA”は、地元へのラヴレターにしてライヴのアンセムとなりつつある、シンガロング不可避の名曲。オータムが監督した、メンバーがジャンクなドーナツ屋でアルバイト&演奏するMVがこの曲とバンドの魅力を端的に物語っていますが、ナードな客を「ソイ(大豆)はねェよ、ヒッピー」と突き放すシーンが最高です。

ストゥージズのドキュメンタリー映画「ギミー・デンジャー」をご覧になった読者なら分かってくれるかもしれませんが、ラヴ&ピース全盛の69年、ストゥージズが〈ノー・ファン!〉とブチ撒けた反骨精神をスタークローラーに重ねてしまうのは、おそらく筆者だけではないでしょう。そんな彼女たちが、かつてロックンロール・リヴァイヴァルを牽引したストロークスと同じレーベルからデビューを果たしたという事実も、運命の巡り合わせを感じずにはいられません。

来たる3月のジャパン・ツアーではキャパ300人以下の小箱だけをまわるそうで、もはや暴動寸前の盛り上がりを見せることは必至。新世代のカリスマの勇姿を、しかとその目に焼き付けてください。


Live Information
〈STARCRAWLER JAPAN TOUR 2018〉

2018年3月7日(水) 東京・渋谷 TSUTAYA O-nest
開場/開演:18:30/19:30
SOLD OUT

2018年3月8日(木) 名古屋・今池 HUCK FINN
開場/開演:18:00/19:00
チケット:前売 5,400円(ドリンク代別)

2018年3月9日(金) 大阪・東心斎橋 CONPASS
開場/開演:18:30/19:30
チケット:前売 5,400円(ドリンク代別)

2018年3月10日(土) 京都 CLUB METRO 
開場/開演:18:00/19:00
チケット:前売 5,400円(ドリンク代別)

2018年3月6日(火) 東京・渋谷 CHELSEA HOTEL
開場/開演:18:30/19:30
チケット:前売 5,400円(ドリンク代別)
​共演:未定

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