©Josep Molina

「ハイドンはユーモア、驚き、サプライズのある音楽です」

 ポール・ルイスは長期に渡ってひとりの作曲家の作品を集中的に演奏したり、全集録音を行うことを好むピアニストである。2017年から19年にかけて取り組んでいるのは〈HBB PROJECT〉。ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスの作品を組み合わせるプログラムで、17年11月に第1回が開催された。ハイドンのピアノ・ソナタ、ベートーヴェンのバガテル、ブラームスの小品という構成で、次回は2018年11月20日、22日に予定されている(東京・王子ホール)。

 「子どものころからハイドンの作品に魅せられています。ユーモア、驚き、サプライズがあり、人が声を出して笑えるような音楽。どうしてみんながハイドンを弾かないのか、不思議なくらいです。ずっとハイドンをメインに据えた演奏を行いたいと願っていましたが、あまりにも作品数が多いため、絞り込んでプログラムを組むことにしました。ブラームスはハイドンとはまったく逆のキャラクターで、作品もシリアスで奥深い。その間に、橋渡しの意味でベートーヴェンを挟み込むことにしました。ハイドンはソナタ、ベートーヴェンは《バガテル》や《ディアベッリ変奏曲》、ブラームスは晩年の小品を選んでいます」

 ハイドンの話になると目の輝きが一気に増す。

 「私のレパートリーの根幹を成すのはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトですが、幼いころからブレンデルの演奏を聴いてきました。のちに師事するようになり、いまでも大きな影響を受けています。彼はピアニストではなく、音楽家であれということを教えてくれた。人生の導き手でもあります」

 録音にも積極的に取り組み、シューベルト、ブラームス、ベートーヴェンの作品がリリースされている。

 「昨年亡くなったビエロフラーヴェク指揮によるBBC交響楽団とのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、非常に思い出深いものとなりました。いまハイドンに取り組んでいます。全集ではないですが(笑)」

 ルイスはテノールのマーク・パドモアとのデュオをはじめ室内楽も多く、チェリストの夫人、ビョルク・ルイスとバッキンガムで毎夏ミッドサマー・ミュージックの音楽監督を務め、さらにリーズ国際ピアノコンクールの芸術監督も務めている多忙な身である。

 「リーズ・コンクールでは他のコンクールの規範になるような新機軸を考えています。時代の変遷によりコンクールの在り方も変化が求められていますから」

 ルイスのハイドンは健康的で嬉々とし、ベートーヴェンは短編集を綴るよう。ブラームスは内省的で寂寥感が横溢。各作品の違いが浮き彫りになる一方、共通項も垣間見える。実力派の真価発揮となるシリーズだ。

 


LIVE INFORMATION

ハイドン・ベートーヴェン・ブラームス プロジェクト
HBBプロジェクト
Vol. 2&3
○11月20日(火)、22日(木) 19:00開演
出演:ポール・ルイス(ピアノ)
会場:王子ホール  
曲目:ベートーヴェン:11のバガテル 作品119/ハイドン:ピアノ・ソナタ第49番 変ホ長調 作品66/ハイドン:ピアノ・ソナタ第32番ロ短調 作品14-6/ブラームス:4つの小品 作品119  ほか
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