80sと現在を結び付けたディスコなポップソングで自身の記名性を高めてきた2人。聴き手それぞれに〈新たな世界〉を見せてくれるアルバムがいよいよ完成したよ!

信頼と確信

 80sディスコと2010年代のエレクトロ・ポップを結び付ける質の高いトラックと、キュートでありつつ凛とした意志を伝える歌声。J-Popとしての親しみやすさとハイブリッドな音楽性で注目を集める男女ユニット、ORESAMAがメジャーからのファースト・アルバム『Hi-Fi POPS』を完成させた。TVアニメ「アリスと蔵六」「魔法陣グルグル」の主題歌となった“ワンダードライブ”“Trip Trip Trip”“流星ダンスフロア”を含む12曲を収録。「タイアップ曲、シングル曲で興味を持ってくれた方に〈ORESAMAはこういうユニットです〉ということを見せたかった」(ぽん/ヴォーカル)という本作には、ORESAMAの持つ多面的な魅力が反映されている。

ORESAMA Hi-Fi POPS ランティス(2018)

 「〈ポップで楽しい〉というのがORESAMAのイメージだと思っていて。それはもちろん大事な側面なんですが、アルバムでは違った一面も出したかったんです。実際、いまやれることは全部やり切れたし、制作も楽しかったですね」(ぽん)。

 「昨年は“ワンダードライブ”を皮切りにシングルを3枚出して。けっこうなハイペースでリリースを続けてきたことで、自分自身の音楽的な幅、精神的な部分を含めて、かなり成長できた実感があるんです。そこで得たものをアルバムにどれだけ詰め込めるかというのがポイントだったんですが、納得できる12曲を揃えることができた。達成感は大きいです」(小島英也、ギター/トラックメイカー)。

 その充実ぶりを示している楽曲のひとつが“cute cute”だ。ヨーロッパを中心に人気のエレクトロ・スウィングを参照したこのナンバーは、ORESAMAの新機軸と言っていいだろう。

 「もともとフレンチ・エレクトロが好きなんですけど、エレクトロ・スウィングはその流れで知って。スウィング・ジャズとハウス・ミュージックを掛け合わせるという手法がカッコイイと感じたし、ぜひORESAMAでもやってみたいなと。新曲に関しては、ちょっと奇抜なこともやってみたかったんですよね。そう思えるようになったのは、ぽんちゃんの声に対する信頼もひとつの要因。去年の活動を通して〈彼女の歌があれば、どんなサウンドもORESAMAの音楽になる〉と確信できたので。いちばん大事なのはメロディーと歌。それがしっかりしていれば、アレンジで何をやっても大丈夫なんですよね」(小島)。

 「小島君は楽曲提供も多いですし、そこで得た刺激をORESAMAに持ち返ってくれていて、音楽の新しい扉がどんどん開いている感覚があるんですよ。〈次はどういう曲が来るんだろう〉って楽しみだし、いろんなチャレンジができるのも嬉しいですね。曲によっては歌を楽器のように扱っているのもORESAMAのおもしろさだと思います。声にエフェクトをかけたり、いろんな遊びにも挑戦してるので」(ぽん)。

 

全部私です

 『Hi-Fi POPS』は、作詞家としてのぽんの個性がこれまで以上に色濃く投影された作品でもある。彼女がみずからの感情をよりリアルに描きはじめた起点は、シングル“ワンダードライブ”に収められた“「ねぇ、神様?」”だったという。

 「ORESAMAの歌詞は恋の歌だったり、〈楽しもう!〉という前向きなものが多かったんですけど、強くて前向きな自分だけではなく、明るいとは言えない部分――弱さやちょっとズルイところだったり、嫌われたくないという気持ちだったりも、もっと歌詞にしたいと思うようになって。そう思わせてくれたのが“「ねぇ、神様?」”だったんです。自分自身の深い部分をこれまで以上に掘り下げた歌詞で、あの曲をきっかけに自分たちを取り巻く環境も変わってきて。今回の新曲でも、自分のなかにあるいろいろな感情を表現したかったんですよね。矛盾して聞こえるところもあると思うけど、それも含めて〈全部私です〉と言い切れるので」(ぽん)。

 〈わたしの彼此 強さも希望も揺るぎない本音なの〉(“cute cute”)、〈誰もが誰かを演じている〉(“誰もが誰かを”)──。ぽん自身のリアルな思いが込められた歌詞が、本作の魅力を深めていることは間違いない。

 「“cute cute”に関しては、最初から歌いたいことがハッキリしていたんです。生きていくなかで、いつも同じテンションではいられないし、ときには落ち込んだり拗ねたりすることもあるけど、それでも前を向いて進んでいかなくちゃいけない。〈それは私もあなたも同じでしょ?〉というメッセージを伝えたかったんですよね。“誰もが誰かを”は約2年前、“綺麗なものばかり”と同じ時期に作った曲です。少しずつ自分と向かい合いはじめた時期で、歌詞をどんどん書いて、それを小島君に送って曲にしてもらっていたんですが、“誰もが誰かを”もそのなかのひとつ。自分を演じたり、場面によって自分を変えることは誰にでもあると思うんです。それで救われることもあれば、〈これは自分じゃない〉と思ってしまうこともあるっていう」(ぽん)。

 

新しいステージへ

 そして、冒頭の“Hi-Fi TRAIN”にも触れておきたい。ディスコ~ファンクのテイストを採り入れたアレンジ、ヴィヴィッドな色を放つメロディーライン上で〈知らない世界を見せてあげる〉というフレーズが踊るこの曲は、ORESAMAの音楽性を端的に表すと同時に、アルバム全体の方向性を明確に示している。

 「最近は〈こういう曲を作ろう〉と話し合ってから制作に入ることが多くて。“Hi-Fi TRAIN”もそうで、〈もっとたくさんの人を新しい世界へ連れていこう〉というテーマをもとに作ったんです」(ぽん)。

 「今までORESAMAを応援してくれた人たち、これから出会う人たちを含めて、新しいステージに行きたいっていう。それはアルバム全体のコンセプトでもあるし、いまの自分たちの思いがいちばん詰まっているのが“Hi-Fi TRAIN”なんです」(小島)。

 ORESAMAの幅広い表現力を鮮やかに映し出した『Hi-Fi POPS』。J-Popの新たな可能性を切り拓く本作を作り上げたことで、二人は次のステージに向かって歩みを進めることになりそうだ。

 「今回のアルバムを作ったことで新しいアイデアも生まれてきたので、まずはそれを形にしたいです。さらに精度が高いORESAMAのJ-Popを作り上げて、よりたくさんの方に伝えていけたらなと。海外の人たちにもぜひ聴いてもらいたいですね。日本のポップスは(海外の音楽と比べても)すごい音楽だと思っているので。ここで生まれた以上、それを手放す理由はないですよね」(小島)。

ORESAMAの作品。

 

ORESAMAに通じるHi-Fiなポップ感覚を持つ作品たち

fhana World Atlas ランティス(2018)

80sなエレポップ×ディスコ~ファンクを骨子としながら、フィリーなストリングスを配した“流星ダンスフロア”などソウル経由の多彩なアクセントを随所にまぶしたORESAMAの音楽。主に渋谷系由来のものでありつつ、レーベルメイトのこの4人組もそうしたグルーヴィーなポップ感が美点のひとつだ。 *土田

 

SHE IS SUMMER WATER Being(2017)

小島が“出会ってから付き合うまでのあの感じ”の編曲を手掛けた縁もあって、ORESAMAとはライヴでの共演を含めて何かと付き合いのあるSHE IS SUMMER。この初アルバムでは小島がタキシードあたりにも通じるリヴァイヴァル系のブギー・ファンク“NIGHT OUT”を提供している。 *北野

 

DAOKO THANK YOU BLUE トイズファクトリー(2017)

DAOKOのメジャー進出作『DAOKO』(2015年)で本格的に作家業に乗り出した小島。その後もファレル風味の軽快ファンク“BANG!”やユーロ・ディスコ感バリバリな“ShibuyaK”など、この最新作に収められているシングルの表題曲を数多く書き下ろし、彼女の音楽性の更新に大きく貢献した。 *北野

 

Shiggy Jr. SHUFFLE!! E.P. ビクター(2017)

懐かしの洋楽テイストを後追い世代ならではの感覚でフレッシュに採り入れるこのバンドのJ-Popは、ORESAMA好きならば気に入るはず。特に本作に収録の“誘惑のパーティー”は、パワー・ステーションみたいなドラム音のアクセントも80s感たっぷりな魅惑のディスコ・ポップ! *北野

 

Awesome City Club TORSO CONNECTONE(2018)

男女ヴォーカルを擁する5人組の新作は、エレクトロニクスを巧みに組み込んだバンド・サウンドと、ディスコ~ソウル風味をポップに消化したアレンジという持ち味は保持しつつ、あからさまに新章へ突入した感が。歌詞に人間味がより表出している点も特徴で、そうした変化もORESAMAと近い。 *土田

 

BRIAN SHINSEKAI Entrée ビクター(2018)

オリジナル・ニューウェイヴ期のシンセ・ポップをEDM以降の手法で鳴らす自作自演家の最新作。そうなるとORESAMAとの共通項もあるわけで、本作ならフィリーな弦使いのディスコ・ポップ“TRUE/GLUE”やナイル・ロジャースのカッティングを意識した“東京ラビリンス”あたりはいかがでしょう? *土田

 

VARIOUS ARTISTS Electro Swing Circus! ランブリング(2015)

『Hi-Fi POPS』収録の“cute cute”で聴けるレトロでありながらモダンなジャズ風味のサウンドは、ヨーロッパなどで人気の高いエレクトロ・スウィングを下敷きにしたもの。そのホットな音に魅了された人には、その人気曲をまとめて楽しめる本コンピがおススメ! *北野

 

DURAN DURAN Paper Gods Warner Bros./ワーナー(2015)

小島が影響を受けた人物として必ず名前を挙げるのが、シックのギタリストとして知られるナイル・ロジャース。ORESAMAの楽曲で多用されるクリーンなギター・カッティングはナイルの十八番だ。その匠の技は80sの代名詞である盟友バンドと再会した本ダンス・ポップ盤の“Pressure Off”でも炸裂! *北野

 

VARIOUS ARTISTS Ed Rec 100 Ed Banger/Because(2017)

小島の80s感溢れるシンセ音を使ったサウンドメイクには、エド・バンガーに代表されるフレンチ・エレクトロ勢からの影響が多分にあるはず。特に彼も好きだというブレイクボットのディスコ馬鹿ぶりや、メイヤー・ホーソンとビジー・Pのブギーな合体曲はORESAMA好きにも刺さりそう。 *北野