暑苦しいほどアツい男が〈VOICE MAGICIAN〉たる所以――圧倒的な陽性エネルギーで受け手をあっという間にポジティヴ・ヴァイブへ変えるダンスの現場が映像作品化!

 ファンのことをたびたび〈兄弟〉と呼び、感極まるとすぐに「ハンパねぇ!!」と雄叫びを上げ、何度も繋がりを確認し、冗談交じりに「全員が手叩くまで歌わねえ」と言ってのける――知ってる人はとっくに知ってると思いますが、HAN-KUNは暑苦しいほどアツい男です。クールな振る舞いが良しとされがちないまの時代、彼の存在は異様に映るでしょうか。慣れない人からしたらちょっと戸惑うかもしれません。でも当人はお構いなし。受け手が斜に構えていようとも、ド直球の言葉で人の心に踏み込んで、頭のてっぺんから足の爪先までポジティヴ・ヴァイブに変えてしまう。しかも彼の〈ポジティヴ〉は上っ面なものじゃなく、完全にやり切っている感じがするので、妙に清々しく、嫌味もゼロ。この理屈抜きでヤバイ陽性エネルギーをまだちゃんと浴びたことがないなんてもったいない!……というわけで、〈兄弟〉のみならず、HAN-KUN初心者の方にも先頃リリースされたライヴDVD「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」をぜひ味わってほしいのです。

HAN-KUN HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~ トイズファクトリー(2018)

 舞台は昨年末の東京・豊洲PIT。ソロ5作目『VOICE MAGICIAN V ~DEEP IMPACT~』を引っ提げた全国ツアーのファイナルです。“TEPPEN!!”での幕開けから、デジタル・ノイズがビュンビュン飛び交うハードコアなダンスホールで序盤を猛攻。活動の母体である湘南乃風ではハイトーン・ヴォイスを響かせているHAN-KUNも、ここでは低音のDJイングを織り交ぜ、ソロならではのパフォーマンスでオーディエンスを圧倒します。もうこの時点で会場の雰囲気はライヴハウスというより、完全にダンスの現場。それを演出できた理由のひとつに、あえてバンドではなく、湘南乃風のセレクターも務めるThe BK Soundの卓捌きをバック・サウンドの中心に据えたことが挙げられるでしょう。そこにMayumi(Stoned Rockers)と渡辺貴浩のツイン・キーボードを絡め、キャパ3000人超えの大バコでも見劣りしない臨場感を出している点も流石です。

 そうした空気に包まれながら、ステージはどんどん進行。ギャル・チューン“NEXT TO YOU”にプラターズ“Only You”を挿んで女性客をイジり(コーラスを担当したYOU WANT MEのツッコミもナイス!)、浮気な男心を露にしたかと思えば、トゥーツ&ザ・メイタルズ“Monkey Man”風のスカからウェイラーズっぽいファンキー・レゲエへと展開する“WANNA BE FREE”で自由の素晴らしさを唱えたり、ソカのリズムに合わせてみんなの人生を全力で応援したり、レゲエ讃歌や反戦歌を投入したり……。突然のラバダブっぽいスタイルにドキッとさせられる本編ラスト“RESPECT”、そしてアンコールでの怒涛のメドレーまで、コンシャスなものも下世話なものも、ジャマイカ(ないしカリブ)音楽の魅力をあの手この手で伝えていくHAN-KUNの姿を目撃すれば、彼がなぜ〈VOICE MAGICIAN〉と呼ばれてきたのかわかるはずです。

 そんな本DVDには、2つの新曲――ファンへの感謝を綴った心温まるナンバー“One Song”と、勇ましいビートに乗ってさらなる前進を誓うゴリゴリ系の“New Era”――と、DELTA FORCEのライヴ・ミックスから成る特典CDがプラス。MCでも「ファイナル! 一見ゴールに感じるけど、新しい冒険の始まり」と語っていますが、折しも2018年は湘南乃風のデビュー15周年、HAN-KUN自身もソロ・デビュー10周年の節目にあたります。グループではすでにアニヴァーサリー・イヤーのキックオフを飾るシングル“やめちまぇ!”を発表し、ニュー・アルバムの予告もオフィシャルサイトにアップしたばかり。何やら彼にとって今年は実り多き日々になりそうです。が、まずはその前にソロ・キャリアの現時点までの集大成とも言える「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」をチェックしておかないと。もうひとつついでに、〈New Era〉突入直前のいまこそ、ファンの仲間入りする絶好の機会だということも書き加えておきましょう。