木梨憲武の待望の3rdアルバムが2024年10月30日にリリースされた。題して、『木梨ソウル』。ソウルミュージックはもちろん、ファンク、ヒップホップ、R&B、レゲエなど幅広い音楽性に驚かされるとともに、磨き上げられた最新の音像で木梨憲武ワールドが表現された様は実に圧倒的だ。

さらに〈ノリさんのためなら〉と音楽界と芸能界の枠を超え集まった客演陣はAK-69、CHEHON、RED SPIDER、DJ RYOW、SPACE DUST CLUB、松本孝弘、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、久野美咲、井口裕香、DJ DARUMA from PKCZ®、ナオト・インティライミ、HAN-KUN、AI、Crystal Kay、DOUBLE、福原みほ、Full Of Harmony、林和希、JAY’ED、松下洸平、Mhiro、露崎春女……というオールスターぶり。

この充実作はどのようにして生まれたのか?  音楽ライターの桑原シローを聞き手にじっくり語ってもらった。 *Mikiki編集部

木梨憲武 『木梨ソウル』 KINASHI RECORDS/Virgin/ユニバーサル(2024)

 

トッププロの音楽家と作り上げた最後の(?)アルバム

――今回のテーマは〈ソウル〉でいこう、と決めた理由は?

「『木梨ファンク ザ・ベスト』の次はちょっと違うメンバーとやろうと、マツコ(デラックス)、ミッツ(マングローブ)、宇崎竜童さん、佐藤浩市さん、中井貴一さんとかミュージシャン一本じゃない人たちも含めて知り合いを総動員したアルバム『木梨ミュージック コネクション最終章 ~御年60周年記念盤~』を出しまして。で、思い出第3弾となる今回は、最後のアルバムとしては……」

――あぁ、思い出シリーズ集大成のアルバムとして……。

「いや、これがアルバムとして出す最後の1枚なんで」

――えぇっ、そうなんですか!?

「まぁ、毎回これが最後、って言い続けるのもテーマなんで(笑)」

――そうですか。じゃあこちらも心して作品に向き合いたいと思います。

「(笑)。でもこうやっていままでとまったく違った作品が出来上がると、どんどん欲張りたくなって、じゃああの人に声かけてみよう、他の人にも訊いてみよう、ってなっちゃう。これまでのアルバム作りは大概そんな感じでしたね。

なにせトッププロに曲を書いてもらったり、エンジニアもトッププロばかりだし、彼らといっしょにやれる幸せな環境にいま居るんで。あとは、スタジオに入ってボーカリストとしてどんだけ表現できるか、どうやって感じを出せるか、やってみるだけ」

 

ディスコ育ち、でも演歌や歌謡曲など好きなジャンルは無限

――タイトルで〈ソウル〉と銘打ってますが、中身は非常に雑多なタイプの曲が揃っていて、すごくカラフルな印象を与えます。

「そうですね。62歳でヒップホップやってる人はいないっていうから、ゴリゴリのヒップホップやってる人に〈仲間入~れて〉って声かけて。あとゴスペルとかやったことなかったじゃん、だったらやりたいなと思って。

トップミュージシャンたちにどこまで対応できるか。62歳でどこまで全力を出せるかやってみたところ、こんだけの10個の作品が出来上がったんで」

――けっこうアグレッシブなトラックがビシバシ登場するなぁ、という印象ですが、ノリさんの優れた対応力にまず驚かされます。

「ちゃんとノレているかどうかわかんないけどね」

――そもそもノリさんっていうと、僕らはやっぱ天性のリズム感の良さを思い浮かべてしまいます。今回はそれを披露するうえでこのうえなくいい素材が揃っている気がしました。

「もともと若い頃からディスコに行って、いろんな人と出会っていて。店に入ると、フロアの真ん中でSAMが踊ってたりね。その頃はバブルガム・ブラザーズのBro.KORNちゃんと毎日つるんでた。あとテレビ番組では、鈴木雅之さんと同じ場所で歌わせてもらったり、EXILEのHIRO社長がまだZOOのメンバーだったときにいっしょだったり、そういう育った環境がいろいろと影響している気がする。やっぱ身体動かすのが多かったのは間違いないよ。

ただ、そこにはもうひとり、演歌大好き、歌謡曲大好きな俺がいて、そういう知り合いの方たちと交流しながら現在に至っている。その結果、ひとつに決めることなく、どこにでも行きますよ、と言える自分が出来上がっていて。とにかく好きなジャンルがもう無限にあるんで」