強烈な個性をミュージック・ラヴァーに焼き付けてきた彼女から、11年ぶりのアルバムが到着! 長いキャリアを経てなお未体験だったチャレンジとは?

 〈みんな若い頃に何聞いてた? でも、やり残したことない?〉——これが今回のキーワードだったのかも?と、11年ぶりとなる新作『Stay Gold』のために寄せたEllieのコメントにそう書いてある。一聴してまず気付かされるのは、自由に踊らせて、という感覚。嗚呼、この奔放なシルエットこそEllie。それってラヴ・タンバリンズの頃からまったく変わらない。そう伝えたところ「何か、みんなそれぞれ勝手に私に対してのイメージを持っているみたいで」と愉快げに笑う彼女。ところで今回のレコーディングだが、周囲から〈こういうことをやってみれば?〉というリクエストもいろいろあった模様。

Ellie Stay Gold HIGH CONTRAST(2018)

 「Ellieさんってこういう曲も歌えるよね、とか、こういうのが似合いそう、って、それぞれが自身の音楽的イメージを私に重ね合わせて語ったりする。そういう状況がずっとあって、いつしか、ま、いっか、と思えるようになって、スコンと抜けた。とにかく全部を演じ切ればいいと思い、曲に合わせて声の設定をしていった。つまりすべて曲ありき。私自身がどうこうではなくて。こういうやり方は昔からかも。ラヴ・タンバリンズの頃もグループのサイズ感からはみ出ないように想定内のところでやろうとしていたし。ただし、結果的に今回はだいぶはみ出しましたね。本来ははみ出しがちな人だから(笑)」。

 〈はみ出す〉とイコールなのは収録曲の雑多ぶり。はせはじむが共作したグルーヴィー・ダンサー“So I”や爽快な2トーン・スカ“Go Steady”、蓮っ葉な歌声を響かせるジプシー・スウィング“Pukimak!~ママの代わりはできないわ~”に、以前から歌っていた岡村靖幸のカヴァー“イケナイコトカイ”もある(ライヴで歌った際には岡村ちゃん本人からお褒めの言葉をもらったそう)。これらの曲がザワザワと共鳴し合っている感じが彼女の弾けっぷりをより惹き立てている印象があり。

 「私自身、ヴァラエティーに富んだ人なので。あと盛り込みたかったのは、80年代の、化粧品のCMソングのキラキラした感じ。“赤道小町ドキッ”とかもう、萌え萌え萌え萌え~って感じじゃない(笑)。聴いているだけで、私も綺麗になれるって思えてくるというか、曲から未来への可能性が溢れ出ている気がする。それと90年代的なスタイルもすでに一周しているからやっちゃえって気持ちもあった。いまやっておかないとまた古くなってしまうので」。

 これまで避けてきたものにチャレンジする機会を得た今回の最大のものが日本語詞へのアプローチだ。日本語で歌うことがライヴのなかで即興に出てきて、その発想が芽生えたことが、はみ出したっていいんじゃない?って感覚に繋がっていったのかも、と彼女は言う。

 「私、ちょっと頭の固い人だったんですよ。そのせいで、いろんなお話もずいぶん断っちゃってきたし。でも曲を作っていく段階を経て、別にいいや、って思えるようになった。以前は何事もストイックに取り組んで、思い悩んでいて塞ぎがちだったけど、今回は私、笑ってましたねぇ。生まれて初めてかも、こんなに楽しかったレコーディングは。いい思い出作りができた(笑)」。

 日本語を歌うことは昭和歌謡を歌うライヴなどで場数は踏んできていたものの、日本語詞を書くのは初めて。それにしても、出てきたのが“SUPER STAR”みたく青春感丸出しな世界というのがなんともまぁ。

 「胸キュンしてるでしょ? いまね、めっちゃ青春してるの! 幸せだし、楽しいし、自分が止まらない!って感じ。だけど初めての日本語詞で、いきなり〈イチコロゲッチュー〉とかさ(“Shirley King”)、この振り切れっぷりは自分でも笑っちゃうけどね、何書いてるんだろ?って。まぁ、この抜け感はこの歳だからっていうのもあってね。人生いろいろ大変じゃない? でも、もういいの。突き抜けちゃいました!って」。

 インタヴュー中、〈とにかく笑っていたいんですよ〉と繰り返した彼女だったが、何が嬉しいってこんなに幸せを与えてくれる人たちと一緒に作品を作り上げられたことだと言いたげだったのが印象的で。とにかくいま彼女の周りにはたくさんの可愛い人がおり、そんな愛おしい人たちとの繋がりからくる充実感が胸キュン要素になっているようだ。『Stay Gold』から聴こえてくる〈いまが最高!〉って叫び。これが大事だよな、とつくづく思う。素晴らしき哉青春。