男女混成の個性的なコーラスワークで青々とした風景を描く6人組。サイケ感も忍ばせたノスタルジックな夏ソングの数々は、太陽が輝く季節の大切な記憶を甦らせるはず──

 男女混成のコーラスと親しみやすいポップセンスが話題を呼び、個性派揃いの京都のインディー・シーンのなかでも注目を集める6人組バンド、バレーボウイズ。新作『なつやすみ '18 猛暑』は、2017年に自主でリリースした『なつやすみEP』の収録曲や再録音曲、新曲などで構成された8曲入りのミニ・アルバムだ。夏にまつわる曲を集めたという本作。躍動感溢れるバンド・サウンドに乗せて〈今年の夏はどこか どこかへ行きたいな〉と歌われる新曲“海へ”を聴くと、これからやってくる夏を想う気持ちが伝わってくる。作詞/作曲を手掛けるネギ(ギター/ヴォーカル)と前田流星(ヴォーカル)は、この曲についてこんなふうに語ってくれた。

バレーボウイズ なつやすみ'18 猛暑 Volleyboys Club/felicity(2018)

 「海に行く時の昂揚感が半分、残りの半分は〈海に着いたら何をしよう?〉っていう妄想です。僕が作った音源を一度みんなに聴いてもらって、それを崩して作り直しました」(ネギ)。

 「曲のテンポをちょっと遅くしたりしたんです。僕らが海に行くんだったら車じゃなくて自転車だろうっていうことで、自転車のスピードに」(前田)。

 そのほかさまざまな夏ソングが並ぶなか、『なつやすみEP』に収録の“マツリ”を録り直した“マツリ~猛暑~”は、タイトル通りの猛暑ぶり。残響音をたっぷり効かせたギター・サウンドのなかで曲のテンポがだんだん遅くなっていったりと、うだるような暑さが想像できる。

 「オリジナルはもっと爽やかなお祭りっぽい感じだったんですけど、それから1年経ってみて、俺らの祭りってそんな爽やかじゃなかったぞ、と思って。それで裏にレゲエっぽいギターを入れたり、残響音を加えたりして京都のじめじめした暑さを出そうとしたんです。ライヴでこの曲と“ミラーボウル”を続けて演奏するとすごく気持ち良くて、今回もそういう流れにしました」(前田)。

 その“ミラーボウル”では、ループするリズムとエフェクトをかけたギターが浮遊感を生み出すなかで、スライ&ザ・ファミリー・ストーン“I Want To Take You Higher”のギターのフレーズが蜃気楼のように浮かび上がる。こうしたサイケデリックなサウンドは「メンバーのみんなが好きやから、前回(『なつやすみEP』)より強くなってると思う」と前田は言う。

 「ゆったりしてるけどドロッとしてて、たまにギターの音がキーンってきたりする。それが、僕らの感じるサイケ感かな。ギターの子ら(高山燦、九鬼知也)も、自分らで弾く時にそういうのは意識してると思うし、チャッキー(高山)とかはエフェクターの音色にすごい凝ってて、永井さんにいろいろ相談してましたね」(前田)。

 〈永井さん〉とは、本作のプロデュースを手掛けた相対性理論の永井聖一。バンドとは以前から付き合いがあり、ネギいわく「僕らが伝えたい音楽を一番理解してくれてて、それに合うやり方を教えてくれる」という頼れる先輩だ。今回のレコーディングにおける永井とのやり取りで、前田が特に印象に残ったのはコーラスの付け方だったとか。前田、ネギ、そしてオオムラツヅミの3人によるコーラスは、バレーボウイズの大きな魅力だ。

 「コーラスは3人で考えるんですけど、オオムラがスゴすぎて(笑)。〈彼女の歌はちょっと外れているように聴こえるけど、それが彼女の魅力だから〉って永井さんが言ってたんですけど、彼女は自分の感覚で自由にハモるんです。“フラッシュバック”では、まず僕とネギちゃんの2人でヴォーカルを録ったんですけど、その後、オオムラの歌を入れたら、一気に曲の雰囲気が変わってゾクッとしました」(前田)。

 〈バレーボウイズはみんなバラバラな感じがおもしろい〉と永井は言っていたらしいが、メンバーが同じ風景を見て団結するというより、自由に混ざり合うことで新しい風景が見えてくる──それがバレーボウイズらしさなのかもしれない。

 「僕が書いた曲をみんなで演奏することで、自分で表現できなかった部分をみんなが補ってくれるし、さらに僕の想像を超えたところまでいく。それがバレーボウイズの歌だと思うんですよね」(ネギ)。

 「海辺に6人がいるとしたら、砂の城を作ったり、石を投げたり、ギター弾いたり、それぞれがバラバラなことをしてるけど、引いて見たら一枚の絵になってる。僕らはそんな集まりやと思います」(前田)。

 バレーボウイズはバンドを舞台にした青春群像劇。彼らの歌を通じて、自分だけの特別な夏の思い出が甦ってくるはずだ。