男女混成ヴォーカルとトリプル・ギターが奏でるノスタルジーはよりポップに。夏休みは永遠に続かない。けれど、ここにある〈青さ〉は言わば、彼らそのもののようで……

 男女混成の歌唱によるノスタルジックなメロディーと、トリプル・ギター編成で鳴らされる瑞々しいバンド・サウンドで話題を呼んでいる京都発の7人組、バレーボウイズが新作『青い』を完成させた。昨年は東阪で初のワンマン・ライヴを開催し、地元の京都ではサーキット型の自主イヴェント〈ブルーハワイ'18〉を行うなど、バンドの充実した今がそのまま楽曲にも落とし込まれている。

バレーボウイズ 青い felicity(2019)

 「2018年は初めてのことにいろいろ挑戦した一年でした。ライヴもたくさんしたし、メンバーと過ごす時間も多くて、お互いをより知ることができたと思います。新しいアルバムには初期の頃から温めてきた曲も入っているんですが、今の僕たちやからこそ音源として形にすることができました」(前田流星、ヴォーカル)。

 前作『なつやすみ'18 猛暑』に続き、プロデューサーとして相対性理論の永井聖一、エンジニアには葛西敏彦が参加。サイケデリックなギター・サウンドに葛西色を感じさせつつ、ヴィブラスラップやスレイベルを盛り込んで、厚みのあるアンサンブルを聴かせる“ひとのこ”から一転、青春の匂いを漂わせた軽快な“渚をドライブ”、そして、昨年カセットテープと7インチで発表したシングルにも収録の“ひがしのまち”は、涼しげなコーラスやタンバリンを用いたビーチボーイズ風の味付けで、アルバム・ヴァージョンとして生まれ変わっている。

 「永井さんから曲のアレンジに関してたくさんのアドヴァイスをもらいました。今まで使ったことのない楽器の音を入れたり、曲の構成についても相談し、僕らが表現できることの選択肢が増えました。“ひがしのまち”のイントロのコーラスや要所要所に入っているタンバリンの音は永井さんのアイデアです。以前のアレンジよりも壮大で、哀愁漂う一曲になったと思います」(ネギ、ヴォーカル/ギター)。

〈君がゆく道は 果てしない遠い〉と、ザ・ブロードサイド・フォーの同名曲にオマージュを捧げたような3連バラード“若者たち”や、〈空に太陽が 出ているうちに〉という歌詞が、にしきのあきらの“空に太陽がある限り”を連想させる“よわむし”などからは、彼らのフォーク、グループサウンズ、歌謡曲に対する愛情が改めて浮かび上がる。また、かつてはシンプルなユニゾンが多かったコーラスには、ハーモニーを用いたり、強弱を意識したりと、確かな成長の跡が。そして、軽く跳ねたボ・ディドリー・ビートを基調としながらも、淡々と展開していく曲調が〈僕らはずっと いつまでたってもこのままさ〉というラインの温かみと切なさを演出する“タイトルコール”は、本作を象徴する一曲だ。

 「今の自分の周りの環境はとても居心地がよく、ずっとこのままでいたいと思っています。しかし、年をとるにつれて時間の流れが早くなったように感じており、時が過ぎていくことを悲しく思っています。それをいくら嘆いても仕方がないことなので、今まで以上に〈今〉という時間を大切にするようになりました。〈僕らはずっと いつまでだってこのままさ〉という歌詞は、いつか自分が変わってしまうことに抗っているようにも捉えられると思います。夢見心地な時間のなかをいつまでも生きていたいという“タイトルコール”の歌詞は、夏休みから時間が止まっているような〈バレーボウイズ〉というバンドのことを歌ったような歌だなあと思っています」(ネギ)。

 ラストは〈ワン、ツー!〉のカウントから勢いよく始まり、〈飯食って風呂入って寝るだけ〉と繰り返すアッパーな“人間大好き”で、ここには相変わらずなバレーボウイズが確かに存在する。〈文化祭を機に結成〉というエピソードからして、いかにも学生ノリだった初期から、永井や葛西との出会いを経て、ポップスとしての強度を高めながらも、彼らの〈青さ〉は決して失われてはいない。

 「『青い』という言葉や色はどこまでも自由で開放的で、でも〈青春〉〈青臭い〉といった刹那的で人間味溢れるいろんな想いも感じられて、自分たちそのものみたいだと思いました。ジャケットはメンバーの高山(燦、ギター)がデザインしてるんですが、そんなバレーボウイズの『青い』波紋がどんどん大きくなりますように、という想いを込めたジャケットになっています」(前田)。