清涼感だけじゃない彼らの魅力がたっぷり詰まった、これまでの集大成と言えるファースト・アルバム
ヴォーカル・うららの透明感と凛々しさを併せ持つ歌声を活かし、ケルト音楽のテイストも加えた爽やかなポップソングで、J-Popシーンにおける新たな王道を歩まんとするSalley。これまでに4枚のシングルを発表してきた2人が、結成からの集大成となるファースト・アルバム『フューシャ』を完成させた。この〈フューシャ(fuchsia)〉とは、アイルランドで初夏に咲くピンク色の花の名前を指している。
「最初〈Salley〉っていうユニット名が決まる前に、〈fuchsia〉も候補に挙がってたんです。ユニット名としてのわかりやすさを考えて〈Salley〉を選んだんですけど、〈fuchsia〉もすごく気に入っていたので、いつかこの言葉を使いたいと思っていて」(うらら)。
「このタイトルが決まって、〈じゃあ、“fuchsia”っていう曲を作ろう〉ってなったときに、以前カヴァーしたアイルランド民謡“Down By The Salley Gardens”の、あの素朴な感じでいこうって。僕は伴奏がなくても成立する、口ずさむだけでいいメロディーだなって思える楽曲を作りたいとずっと思っていたので、今回この曲でそれにチャレンジしてみました」(上口浩平)。
全13曲が収録された本作には、シングルで聴くことのできた清涼感のあるナンバーや叙情的なバラードはもちろん、パーカッションを配したSalley流のダンス・ナンバー“Agreed Greed”や、ファンキーなカッティングを軸とした攻撃的なバンド・サウンドを聴かせる“プレゼント”など、ライヴ映えしそうな楽曲も目立つ。
「“Agreed Greed”はイントロのリフとバックのグルーヴがまず思い浮かんで、それだけでおもしろい曲になりそうだなって思ったんです。あと、この曲にはこれまでのシングルにも関わってもらっている安原兵衛さん(福原美穂やハルカトミユキらを手掛けるプロデューサー/エンジニア)に参加してもらっていて、兵衛さんから〈もっと熱を加えたほうがいいんじゃないか〉っていう意見をもらって、パーカッションを加えたりしました」(上口)。
“Agreed Greed”は、直訳すると〈同意された強欲〉となるが、うららはこの言葉に〈欲張りでもいい、素直になっていい〉という思いを込めたという。女性が持つある種の欲深さは、シングルの“あたしをみつけて”でも綴られるなどSalleyの楽曲のスパイスとなっていたが、マイナー調の“リセットの呪文”はさらに振り切れた歌詞になっている。
「この曲は曲調からして他と違ったので、いつもは爽やかななかに毒を入れるぐらいだったのが、もう毒のままいっちゃえと思って、サスペンス・ドラマとか昼ドラのイメージで書きました(笑)。本当は好きな相手を自分の支配下に置きたいけど、一度でも相手を疑ってしまうと、その気持ちはなかなか晴れないっていう内容なので、仮タイトルは〈覆水盆に返らず〉だったんです(笑)」(うらら)。
アルバムのラストを飾るのは、哀愁漂うフィドルと勇壮なマーチ風のリズムに乗せて、これからも先に進んでいくことを歌った“My little girl”。うららの歌声の持つ繊細さと力強さがもっとも引き出されている一曲だと言っていいだろう。
「1曲目を私たちがいちばん最初に作った“その先の景色を”にして、最後はそれと対になるような曲で締めようっていうコンセプトだったんです。まだ何も見えてないけど、前に進みたいっていう曲が“その先の景色を”で、いろいろな景色を見たうえで、やっぱり前に進みたいっていうのが“My little girl”なんですよね」(うらら)。
「今回のアルバムに入ってる曲自体、いろんな時期に録り溜めてきたものなので、この2曲で挟むことによって、これまでのSalleyのヒストリーというか、〈こうやって歩いてきた〉っていうのを感じてもらえるんじゃないかと思います」(上口)。
PROFILE: Salley
大阪出身のうらら(ヴォーカル)と、地元・福井でのバンド活動を経て上京した上口浩平(ギター)によるデュオ。2011年に東京で結成。その後は曲作りを重ね、2013年5月にTVアニメ「トリコ」のエンディング・テーマとなったシングル“赤い靴”でメジャー・デビュー。そこから立て続けて、7月にタワーレコード限定リリースとなった“green”、10月に“その先の景色を”、2014年3月にTVドラマ「科捜研の女」の主題歌に起用された“あたしをみつけて”と、3枚のシングルを発表。“赤い靴”は2013年USENの〈上半期J-POP総合ランキング〉の1位を獲得するなど着実に知名度を高めていくなか、このたびファースト・アルバム『フューシャ』(ビクター)を4月9日にリリースする。