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インターポール再入門
インターポールはインターポールでしかない

ポスト・パンク、NYインディー・シーン――インターポールを形容するときに付随してきたいくつかの枕詞たち。バンド自身はデビュー時にポスト・パンクというジャンルに閉じ込められることに強烈に抵抗していたし、結果的に広く流通した表現はなかった。

それは幸か不幸か、ジャンルを象徴させられることでバンドが停滞してしまうことから解放したと同時に、〈インターポールが何者か?〉をわかりにくくしたことで、バンドを知るきっかけを減らしてしまったのかもしれない。

しかし、いまや〈インターポールが何者か?〉という問いにジャンル名で答える必要はないだろう。彼らは21年のキャリアで〈インターポールはインターポールでしかない〉という場所まで来たのだから。それはレッド・ホット・チリ・ペッパーズやU2といったバンドたちがいる稀有な場所でもあり、市場からのプレッシャーのなかでブレずにいた者たちだけが辿り着ける場所だ。

本稿では〈インターポール再入門〉と銘打つことでバンドのヒストリーを振り返りつつ、第二最盛期を迎えつつあることを示した久々の快作でもある新作『Marauder』について紹介したい。

INTERPOL 『Marauder』 Matador/BEAT(2018)

インターポール結成
アメリカに彼らの居場所はなかった

まずはバンドの成り立ちから始めよう。結成は古く、97年に遡る。ポール・バンクス(ヴォーカル/ギター)とダニエル・ケスラー(ギター)、カルロス・デングラー(ベース。以下、カルロスD)がNY大学のクラスメイトであったことがきっかけ。いまでこそ生粋のニューヨーカー然とした佇まいで街を象徴するような印象があるが、グランジの残り香とラップ・メタルの隆盛が始まりつつあった当時のアメリカに彼らの居場所はなかった。

そんな彼らに目をつけたのは、後にトレンドを一変させるストロークスと同様〈アメリカのメインストリームが見落としている場所〉を発掘するイギリスだった。バンドはまず名門のインディー・レーベル、ケミカル・アンダーグラウンドからEPをリリース。

そして2000年にはドラマーが現在のサム・フォガリーノに替わり、かねてからデモを送り続けてきたNYの老舗インディー・レーベル、マタドールとの契約を勝ち取る。そして2002年にデビュー作『Turn On The Bright Lights』のリリースに漕ぎ着けることになる。

最新作で6枚目となるフル・アルバムをリリースしているインターポールだが、今回は各アルバムを紹介する形式でその歩みを振り返りたい。

 

ファースト『Turn On The Bright Lights』
絶賛されたデビュー作、マンハッタンの街のドキュメント

まずはデビュー作の『Turn On The Bright Lights』。代表曲“NYC”の「地下鉄はまるでポルノ、通りは混沌としている」という歌詞の通り、洗練と粗野が同居したマンハッタンの街の空気をドキュメントしたような音像が印象的だ。

“Obstacle 1”や“PDA”、“Stella Was A Diver And She Was Always Down”のような直線的で勢いがあり、強力なフックのある曲も数多い。これら代表曲はいまでもライヴのハイライトでもあり、色褪せていない。メディアの評価もすこぶる良好で、ピッチフォークは何度もこの作品の時代性と質の高さを讃えているほどだ(2002年は年間ベストにも選出)。

2002年作『Turn On The Bright Lights』収録曲“NYC”