【緊急ワイド】2004年の音楽アルバム
豊作じゃない年なんてないけれど、それでもやはり物事に始まりや節目があるのだとしたら、それはきっとこの年だったね!と思えるような2004年の音楽を紹介していきましょう。んで、20年を生き延びて私たちにいま発見されてくれる作品に改めてコングラチュレーションを!
20年前なんて生まれてなかったからわかんないんですよ〜(嘘)と思いながらも、もしさまざまな環境の変化によって世に出た年も何もかもがフラットになるのだとしたら、2004年の音楽も2024年の音楽も、いま出会ったあなたにとっては現在の音楽になります。今回はいろいろな作品の20周年に合わせて、記念リイシューがあったものなどを優先しつつ、注目タイトルをご紹介。近過去だけにまだリイシューのサイクルが巡っていなくて、廃盤のため紹介できなかったものも多いですが、そのあたりは各自の記憶で補っていただきつつ、気楽に楽しんでいきましょう!
グリーン・デイの2004年作の20周年記念盤『American Idiot (20th Anniversary Deluxe Edition)』(Reprise/ワーナー)
いまとなってはウンザリしている人も多いのだろうが、本作をピークとするとんでもない輝きが2004年を通じてシーンを照らしていたことは否定できない。ロッカフェラの諸作やアリシア・キーズの“You Don’t Know My Name”を手掛けてきた旬なプロデューサーがラッパーとして放った初作。チャカ・カーンの“Through The Fire”を早回しした“Through The Wire”、コモン&ピート・ロックが先日ネタ使いしていた“All Falls Down”、そして“Jesus Walk”などネタのメロウネスや哀感を抽出するクリエイティヴな手捌きはいま聴いても素晴らしい。 *亜蘭
彼らの最高傑作が本作なのかどうかは人によるとしても、パンクス3人組の音楽的な挑戦とメッセージがもっとも世界に響いた瞬間は、このタイミングに違いない。前年に始まったイラク戦争を受けて〈反戦〉を掲げ、パンク・オペラとでも言うべき構成でアメリカへのビターな感情を表現。グラミーの〈最優秀ロック・アルバム〉部門を受賞した。なお、今年の年明けに放映されたTVパフォーマンスでは、表題曲の一節を〈反トランプ〉なフレーズに変えて披露。大統領選を控えた現在、本作の重要性はさらに高まっている。 *田中
グラスゴー出身の遅咲きバンドによる初作。唐突なリズム・ チェンジ、セクシャルな事象を隠喩でほのめかす歌詞など〈フランツ節〉な磁力に加えて、大ヒットした“Take Me Out”などで歌われるシンガロング必至のコーラスが耳を離れなかった。この年のマーキュリー・プライズを受賞し、グラミーにもノミネート。ポスト・パンク・リヴァイヴァルにおいてもっとも成功した作品のひとつと言えるだろう。メンバー交代を経験しつつ、バンドは現在も元気に活動を続けており、2025年1月には新作『The Human Fear』をリリース予定! *田中
今年は久々のアルバムを発表して〈スーパーボウル〉のハーフタイムショウ出演も果たしたアッシャー。そのタイミングが本作からの節目を意識したものだったのは明らかで、この通算4枚目のアルバムは相性のいいジャーメイン・デュプリらと組んで私小説的なニュアンスを漂わせたコンセプチュアルな作品としてキャリア最高のセールスを記録した。リル・ジョンのクランクで花火を打ち上げる“Yeah!”も、濃密な歌世界に沈んでいく“Burn”や“Superstar”もここにしかない輝きを放っている。こちらも20周年記念ヴァイナルがリリース。 *亜蘭
日本では翌2005年に大きく盛り上がったレゲトンのムーヴメントを、中心的な存在としてアンバサダー的に牽引していたのがこのダディ・ヤンキー。やりとげた現在はキャリアに幕を引いているが、この当時のヒップホップ勢とリンクしたコラボ展開がレゲトンのリスナー層や支持基盤をググッと広げてきたのは確かだろう。ルーニー・チューンズの仕事ぶりもプリミティヴで最高。いうまでもなく本作から特大アンセムとなった代表曲“Gasolina”を筆頭に、ここにあるヒット・チューンがなければ20年後の景色はまた少し違っていたのかもしれない。 *亜蘭
同年にはD12の『D12 World』もリリースしていたラップ・モンスターが、じっくり練り上げた『The Eminem Show』(2002年)以来のソロ・アルバム。オービー・トライスを含むシェイディの仲間たち、前年にブレイクさせた50セントを経由したGユニットの面々、そしてドクター・ドレーを交えた帝国感のある作りはこの時期のアフターマス連合ならではだが、ビーフにあった面々に視線も投げつつ大統領選に向けて作ったシリアスな“Mosh”があったり、いつもの露悪的な華やかさだけではない側面が見え隠れ。いま聴くと“Mockingbird”が沁みる。 *亜蘭