重要なのは自由であること フランスのNo.1ライヴバンドが日本デビュー
ブールヴァール・デ・ゼールの日本デビュー盤『旅立ちの朝』は、フラメンコ音楽で始まる。9人組の彼らは、フランス出身。冒頭の曲《もし僕が眠ってしまったら、愛する人よ…》で女性シンガーは、スペイン語で歌い、語り、中盤で加わる男性シンガーは、フランス語で歌う。違和感はないけれど、なぜこのエキゾチックな曲から始まるのかと不思議に思ってしまう。
「この曲は、僕らの多様性を象徴しているんだ。僕らの中に音楽の境界線は存在しない。いつもオープンマインドで音楽を作り、世界中のあらゆる音楽にインスピレーションを受けているから」(フローラン)
「歌っているのはフローランがスカウトしたスペイン人シンガーのメリッサ。彼が歌声に聴き惚れて、グループへの参加を打診した人なんだ」(シルヴァン)
取材に応じてくれたのは2人のヴォーカリスト、シルヴァンとフローラン。母国ではジャーナリストに「君達の音楽はジャンル分け出来ないから大変」と言われるそうだ。大胆なほどのオープンマインドの背景にあるのは「ヒューマニズムという価値観」だという。
2004年にフランス南部のタルブで結成された彼らは、エネルギッシュなパフォーマンスで評判となり、2011年にCDデビューする際は、レコード会社の争奪戦が繰り広げられたほどだった。彼らが契約の条件としたのは創作の自由だった。
「音楽、ジャケット写真、ビデオに至るまで、僕らが自由に創作し、レーベルはクリエイティヴ面に関して一切介入をしない契約になっている」(フローラン)
それもあってか、日本デビュー盤は、フランスで2015年に発売された3作目になるが、制作はいつもかなり自由で、コンセプトを決めたことがないという。
「楽曲優先というか、グループ内に4人の作曲家がいるので、それぞれが楽曲を持ち寄るところからアルバム制作は出発する。だから、当初は方向性が見えず、すごくバラバラな感じなんだけれど、制作が進むなかで不思議と自然に統一感が生まれていく。そのやり方が僕らには楽しいんだよね」(フローラン)
成功した現在もパリに進出することなく、地元タルブを拠点に活動している。
「快適な環境の街だし、小さいながら自分達のスタジオを所有しているので、わざわざスタジオを借りることなく、自分達のリズムでレコーディングし、創作の全てを操縦して音楽を作れる自由がタルブにはあるからね。街を離れる気はないよ」(シルヴァン)
自由が彼らのエネルギー源。加えて、本能というか、考えすぎないことが生命力あふれる音楽を生んでいる理由だろう。自由がまぶしく感じられる音楽だ。