〈禁忌がタブーの電磁的恐怖こうげき。なにひとつ思い通りにならない世の中だから、幽世からこうげきを開始しますけど。〉――そんなキャッチコピーを掲げて2017年夏に結成された幽世テロルArchitect。ぜんぶ君のせいだ。、ゆくえしれずつれづれといったコドモメンタルINC.の先輩グループがバンド・サウンドをベースとしているのに対し、彼女たちは電磁的恐怖こうげき=エレクトロを主軸としながら、〈禁忌がタブー〉と謳う通りの多彩に色付けされたサウンドをレッドゾーン振り切れんばかりの熱量で放つグループだ。この夏からは新メンバー2人が加わり、アタック・レヴェルもさらに増したところ!
「新メンバーの個性とかもステージを重ねていくうちにだんだんわかってきて、それがどう活かされてるかみたいなのが、いまの幽世のライヴでの観どころかなって思っていて」(ヤマコマロ)。
「聖涙丸はステージに上がるとめっちゃかっこよくて、季は可愛い表情がめっちゃ得意だから、あっ、これはヤバい!と思って、自分もどんどん前に出て行こうみたいな闘争心が沸いてきました」(个喆)。
「もう、ライヴ中にステージでぶつかっちゃう(笑)……って、最初はそんな感じで勢い余ってゴタゴタしちゃってましたけど」(のなめら)。
「とにかく3人のキャラがすごく立っているので、そこで私が何をすれば良いスパイスになるだろうっていうのをずっと考えていたんですけど、ツアー3本目ぐらいでやっと見えてきて」(聖涙丸)。
「自分の直すべきところとか課題を発見できたので、7月のお披露目の時よりもかなり力もついたんじゃないかなって思います」(季)。
と、好調の波に乗ってきたところで届けられた新体制での初作品が『アイデンティティークライシス』。5人のお気に入りも見事にバラバラっていうぐらい、これまでにも増してキャラ立ちの強さを感じさせる5曲入りのミニ・アルバムだ。まず、オープニングを飾るトランシーな表題曲“アイデンティティークライシス”は……。
「私、人生のテーマを〈弱い自分に勝つ〉と決めていて、歌詞をもらったときに自分と重なるところがすごくあると思ったんです。歌っていてグッときますね」(聖涙丸)。
続く高速エレクトロの“Too Late”は、「〈後悔に絶望「戻る」はないね〉とか〈甘えてると 気づけず麻痺で〉とか、歌詞を見てすごくヤル気が出てきた曲。ライヴ前にはこれを聴くようにしようって思いました(笑)」(个喆)というハードなギターの絡むナンバー。一方で“星群”は、キラッとしたテクノ・ポップ調で、彼女らの楽曲ではもっともアイドルっぽい曲かも?
「この曲に出てくるような感傷的な子……でありたいっていう自分が、実はいて。歌詞のテイストも他とは違うし、印象的な繰り返しがあって、それでいきなりヘンテコなラップがあって、で、なんかエモさがあって泣けてくる曲」(のなめら)。
5人のヴォーカルも際立つ“だいいんぐあかさたな”は、シンプルなコード展開が中毒性を生むナンバー。
「自分が歌っている〈もううるさーい♪〉っていうところが個人的にはとてもうまくできたなって思っていて、気に入ってます(ニッコリ!)」(季)。
そして、多彩なフレーズを駆使したギター・サウンドが叙情的なメロディーをより引き立てている“Oblivion”で、ドラマティックに締め括り。
「歌詞を見て、レコーディングする前に自分の中でイメージを作り上げていったんですけど、なかなか表現が難しい曲で。録り直しを何回もお願いした感じで、それぐらい魂を込めました」(ヤマコマロ)。
このインタヴューが載る頃には、9月から始まった〈現世神楽TOUR〉も大詰め。観逃してしまった人も『アイデンティティークライシス』を聴けば満たされる……けど、聴けば無性にライヴに行きたくなる。そんないたずらな声が傑作の便りと共に幽世から聞こえてきそうだ。
幽世テロルArchitect
のなめら、个喆、ヤマコマロ、聖涙丸、季から成るコドモメンタルINC.所属の5人組ユニット。2017年7月にのなめらと个喆で活動をスタートする。8月にヤマコマロが加入し、10月にデビュー・シングル『かごめかごめ/Hybrid TABOO』、翌11月にセカンド・シングル“ユビキリゲンマン”を連続リリース。今年に入って1月に初のワンマン・ツアー〈SUBTABOO TOUR〉を開催し、3月にファースト・フル・アルバム『Cultural Mixing』を発表する。5月からの〈ODD TOUR 2018〉を経て、7月に聖涙丸と季を加えた現編成となる。9月に始まった〈現世神楽TOUR〉を行うなか、初のミニ・アルバム『アイデンティティークライシス』(コドモメンタルINC.)をリリースしたばかり。