INTERVIEW

NAGAN SERVER『NR』 アーティスティックな音と言葉の領域を拡張した新たな出発を語る!

NAGAN SERVER『NR』 アーティスティックな音と言葉の領域を拡張した新たな出発を語る!

生き急ぐほどの気持ちで音楽に身を委ねた渾身の一撃。後戻りのない新たな出発を飾ったニュー・アルバムは、アーティスティックな音と言葉の領域をさらに拡張する!

 初作『MU-ROOTS』(2010年)発表以降は、2作目『線-SEN-』(2012年)に加え、Olive Oilらとの楽曲や、lee(asano+ryuhei)、MANTISとの各コラボ作などリリースを重ねてきたNAGAN SERVER。それら過去作の成り立ちは、「日々のガイダンス的な出会い、出来事が感情となり、音楽になっていく」という発言が説き明かしてくれる。このほど発表のニュー・アルバム『NR』も、そうした繋がりが作らせたもの。本作への取り組みは、6曲をプロデュースした新進トラックメイカー、Phis Lightとの出会いがきっかけだという。

NAGAN SERVER NR MONO ADAPTER.(2018)

 「Phis Lightがよくトラックを聴かせてくれてたんで、〈これで作ってみたら?〉と大事なレコードを(サンプリング用に)一枚託してみたんですよ。〈出来ました〉って次の日には完成物を持ってきたんですけど、聴いた瞬間ラップしはじめるぐらいの初期衝動があり、これは新たな始まりだなと思い、サード・アルバムを作ることにしました。 お互いの直感が吉と出ましたね」。

 ヴィジュアル・イメージをベースに曲を作る彼にとって、スペイン在住のsrgerが担当したアルバム・カヴァーは今回の世界観を表現するもの。ことリリックにおいても「言葉の配置や余白を大事にした」という。また、本名の頭文字となるアルバム・タイトルの『NR』には、〈No Return〉という意味も掛けられている。そこには、大阪で6年間経営したレーベル・ショップ兼ギャラリーを閉め、現在はラッパー一本となった彼の決意がある。

 「結局、自分が表現するなかで何がいちばん人に伝わってるかって考えた時、初めに音楽がきました。サード・アルバムのテーマのひとつ〈ミニマル〉が見えた時に、生き方も研ぎ澄ましていかないといけないと感じ、お店を辞める覚悟をしたんです。そうしないと自分自身が新しい領域に行けないし、人には伝わらない気がしたんですよ。生き急ぐぐらいの気持ちで音楽に身を委ねてみたいなと」。

 〈この一瞬にかけろ〉と歌う“se-ka-i II”や、アルバムでもっともラフなトラックに〈恐れなく行け、道を生き急げ〉と硬派なマイクを寄せる“hi fu mi”も、そんな強い意志の表れだ。アルバムを通してジャジーな要素が色濃いサウンドには、ジャズのレコード店に通った時期もある彼の音楽的背景が映る。同時に、これまたジャズの影響で近年ライヴで彼が披露するまでになったコントラバスの音も、日頃からライヴを共にするKenT trioのバンド・メンバーやDJ YASAらとの演奏を交えて初めて音源化。アルバム全体の表情はよりふくよかになった。さらには、彼の決意が引き寄せたかのような不思議な縁やタイミングにも導かれ、今回はKeycoやRITTO、Marter、Nao Kawamuraとの共演も形に。なかでも彼がいちばん影響を受けたアーティストだというJun Takayama(slomos/speedometer.)制作の“s>ss”は、ここに来てようやく実現した念願の一曲だ。

 「前作でもオファーしたかったんですけど、まだその領域には行けなかった。そこで実現しても嘘になる気がしたんです。今回は、このタイミングを逃せばもう次はないなと思い、オファーさせてもらいました。高山さんと打ち合わせを繰り返し、念願の一曲が届き、耳にした時は鳥肌が止まりませんでした。7分の壮大なサウンドスケープは衝撃的でした。〈無〉の空間に一つの造形物〈有〉を完成させていくイメージで言語を配置してます。制作ラストに完成したこの曲でネクストが見えました」。

 『NR』を新たな出発に、「さらにいろんなアーティスト、ミュージシャンとおもしろいことをやっていきたい、自身の音楽活動は始まったばかりだ」とも話す彼。3年あまりレギュラー出演を続けているKenKen(RIZE/Dragon Ash)& DOCTOR-HASEGAWA主催のセッション・イヴェント〈ランチキンスキン〉や、川谷絵音のオファーを受け、ゲスト・ラッパーとしてライヴに加わるインスト・バンド、ichikoroとの動きなど、その種は少しずつ蒔かれてきた。そして、それをより広くリスナーに蒔く時がここに来たのだ。

 「ライヴでは、活力になるものを持って帰ってほしい。だから等身大で嘘なくありたい。自分の存在がきっかけとなり、リスナー同士の繋がりが濃くなれば嬉しいですね」。

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