ラブリンス、シーア、ディプロ──3つの才能を精製した極上のパーティー・ミュージック! このポップで奇天烈な気持ち良さからはもう逃れられない!

3人の天才

 ラブリンスとシーア、そしてディプロがLSDなるユニットの結成を各々のSNSアカウントで告知し、デビュー・シングル“Genius”をリリースしたのは昨年5月3日のこと。同時に公開されたベン・ジョーンズ監督によるMVもカラフルでサイケでファンシーなポップソングの魅力を伝えるものとなっていた。それぞれが問答無用のヒットメイカー、文字通りのジーニアスとして名を立てている3人の揃ったスーパーグループはすぐさま話題を呼ぶことになる。1週間後の5月10日には早くもセカンド・シングル“Audio”を投下し、これが一発の企画コラボや戯れではなく継続的な展開を見据えたパーマネントなプロジェクトであるということを知らしめた。

 LSDと聞いて別のバンドなどを思い出す人もいるかもしれないが、この名前は音楽シーンにおけるさまざまな固有名詞として頻繁に用いられてきたお馴染み(?)のワードではあるだろう。ただ、ヴィジュアル・イメージも込みでドラッギーな何かを連想させつつ、実際は単純に3人の頭文字を繋いだだけの名前というのも人を喰っている。人を喰ったといえば音楽性もそうで、どんなサウンドが出てくるのかと思いきや、各々がふだん取り組んでいる音楽の中でも最上級のポピュラー志向を注いでいるのがおもしろい。まさに天才的な技量やセンスを持ち合わせた3人が、純粋に親しみやすいポップ・ワールドを構築することだけに従事する試みこそがLSDなのだ。

 そもそもの発端はLとSがスタジオで共同作業していた際に、たまたまDに声をかけたことだという。ラブリンスとシーアは2017年の映画「ワンダーウーマン」のサントラ用に“To Be Human”でコラボした経験があり、そうでなくても以前からの友人関係だったそうだ。一方でディプロもシーアの“Elastic Heart”(2013年)や“Waving Goodbye”(2016年)をプロデュースしたり、もっと遡れば“Clap Your Hands”(2010年)をリミックスしていたり、ブリトニー・スピアーズ“Passenger”(2013年)をコライトするなど何かと縁があり、彼女を〈世界でいちばん好きなシンガーの一人〉と評するほどだった。なお、LとDにコラボ経験はなかったようだが、タイニー・テンパーやウィークエンドの盤上でニアミスしたこともあり、互いにヒットメイカーとして認識はしていたのかもしれない。ともかく、そんな3人が揃ったLSDは水面下で動き出した。

 

キャッチーな中毒性

 そんなトリオにとって3曲目のリリースとなったのが昨年8月の“Thunderclouds”。この懐かしくも新鮮なポップ・ナンバーはCMソングとしても一気に広がり、LSDの名をさらに遠くまで届けることに成功した。その後11月にこれまたキャッチーな緩急を備えた“Mountains”を発表。合法な中毒性のあるダンス・ポップ・サウンドとカラフルに統一されたMVやアートワークなどの世界観で多くのレスナーを魅了するに至った。もちろんその間には個々の活動も並行しており、特にディプロはマーク・ロンソンと組んだシルク・シティの“Electricity”にて今年のグラミーの最優秀ダンス・レコーディング部門を受賞してもいる。そして、ちょうど今夏の〈フジロック〉にシーアのヘッドライナー出演も決まった絶妙のタイミングで、待望のファースト・アルバム『Labrinth, Sia & Diplo Presents...LSD』がリリースされたわけだ。

LSD Labrinth, Sia & Diplo Presents...LSD Records/Columbia/ソニー(2019)

 アルバムの基本的な作りや制作スタッフの布陣はこれまでの先行曲と変わらず。ディプロの参謀であるジュニア・ブレンダーやキング・ヘンリー、ラブリンスの共作者でもあったナサニエル“デトネイト”レッドウィッジといった馴染みの裏方たちと手合わせしながら、シンプルでいてクセになるポップ・ワールドを構築している。ゲームミュージック風のブリーピーな意匠を纏って掛け合う“Angel In Your Eyes”、ほんのり南国なビートにコクのある歌唱が冴え渡る“Heaven Can Wait”、厳かなピアノ演奏に乗った驚きのバラード“It's Time”などが心地良く並ぶ、コンパクトながらも耳残りする展開ばかりの楽曲集となった。特にダンスホール~トロピカル味をふんわり溶いた“No New Friends”はひときわキャッチーな出来映えで、これはMVも公開されたばかりだ。

 ちなみにラストにはリル・ウェインを迎えた既発リミックス“Genius(Lil Wayne Remix)”が収まっているが、日本盤にはさらにリミックスが4曲追加。バンクス&ランクスやCID、ロスト・フリークエンシーズといったEDM~ECM系の人気者が集っていることにも留意しておきたい。

関連盤を紹介。

 

LABRINTH——ヴォーカリストとしての才能を開花させたUKのヒットメイカー

 89年生まれでLSDにおいては最年少となるラブリンスはもともとグライム~ラップ畑の裏方として名を上げてきたUK出身のクリエイターだ。タイニー・テンパーの大ヒット“Frisky”を手掛けた後にあのサイモン・コーウェル主宰のサイコと契約。メジャー・デビュー曲“Earthquake”(2011年)が全英2位、エミリー・サンデーをフィーチャーした“Beneath Your Beautiful”(2012年)で全英No.1を獲得し、ヴォーカリストとしての自身を前面に押し出していく。

 自身のアルバムは大ヒットした初作『Electronic Earth』(2012年)以来出ておらず、外部での露出もそこまで頻繁ではないが、これまでにリアーナやウィークエンド、シグマ、カイゴ、ノア・サイラス、マイク・ポスナー、ニッキー・ミナージュ、ギグスら幅広い顔ぶれと仕事をしている。2017年にはCM曲“Misbehaving”がヒットし、昨年はステフロン・ドンを迎えた“Same Team”をリリース。今年はCMソングとしてスタンダードの“Don't Fence Me In”を発表しているが、そろそろ本腰を入れて自作に取り組んでほしい気がしなくもない。

ラブリンスの参加作品を一部紹介。

 

SIA——顔なき天才ヒットメイカー

 別格のヒット・スケールと4度のグラミー賞ノミネート歴を誇り、リアーナやビヨンセ、ケイティ・ペリー、ブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラら超大物アーティストたちに楽曲を提供するSクラスのソングライターとしても、唯一無二の歌声を聴かせるヴォーカリストとしても圧倒的に支持されているオーストラリア出身のシーア。メディアに顔を見せないことで知られているが、それも利用して自身のヴィジュアル・イメージをカラフルに創造しているのも大きな特徴だ。自身名義では“Chandelier”(2014年)や“Cheap Thrills”(2016年)が破格のヒットを記録し、アルバム単位ではアトランティック移籍作でもあったクリスマス盤『Everyday Is Christmas』(2017年)以来途絶えているものの、コラボ名義や客演での露出はゼイン“Dusk Till Dawn”(2017年)やデヴィッド・ゲッタ“Flames”(2018年)などコンスタントに続いている。ソングライターとしても近年はブロンディやパロマ・フェイス、フォール・アウト・ボーイ、TQXなど幅を広げているのが興味深い。

シーアの参加作品を一部紹介。

 

DIPLO——現行ミュージック・シーンの最重要プロデューサー

 ディプロがダンス・ミュージック・シーンにおける最重要プロデューサーであることはこの15年以上変わっていないが、彼の取り組んできたようなクラブ・ミュージックの流行がメインストリーム化して一般化し、結果的に双方に差違がなくなってきたことを思えば、遊び心のあるトレンドセッターとしてのコアな影響力という意味でも、この数年のメインストリームにおけるヒット・スケールという意味でも、その両方を併せ持つ者はやはりなかなかいないと言えるだろう。メジャー・レイザーの“Lean On”(2015年)やスクリレックスと組んだジャックUの“Where Are U Now”(2015年)が破格のヒットとなって以降は自身を触媒にした大がかりなプロジェクトで多彩なアーティストと絡む機会がさらに増えていて、LSDと並行してマーク・ロンソンとのシルク・シティが話題になったのも記憶に新しいところだ。プロデューサーとしてもリル・ヨッティやXXXテンタシオン、リル・ザン、トリッピー・レッド、ポピーら新鋭との絡みを好みつつマルーン5やショーン・ポールらとの大物仕事も順調に継続中。

ディプロの参加作品を一部紹介。