佐藤泰志の小説と映画化の相性がいいことは、「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」と作品を並べて見れば明らかだが、本作はその決定打ともいうべき作品だ。〈僕〉(柄本佑)と同居中の友だちで失業中の静雄(染谷将太)、そこに〈僕〉のバイト先の書店で働く佐知子(石橋静河)が加わったことで起こる微妙な三角関係の物語。ひと夏のモラトリアムの終わりの始まり、関係性の微細な変容を浮かび上がらせる三宅唱の演出と、三宅の演出に応えた役者たちの生々しい実在感が映画に命を吹き込んでいる。