日本のヒップホップ・シーンの震源地はもはや東京だけではない。いま、それぞれの地元を背負ってシーンに羽ばたく若きMCたちが日本中に存在する。なかでも頭一つ抜き出た勢いを感じさせるのが兵庫県姫路市出身のShurkn Papだ。もともと音楽好きな父親の影響でさまざまな音楽に親しんできた97年生まれの彼が、初めてラップを聴いたのは小学2年生の時だという。
「家族で車に乗っていて、兄貴がエミネムのアルバムをずっと聴いていて衝撃をくらいました。それまではずっとソウルやファンクとか、80sのポップとかを聴いてたんです。ホール&オーツの“Private Eyes”が特に好きで、他にもドゥービー・ブラザーズやアース・ウインド&ファイア、マイケル・ジャクソンも好きでした」。
音楽、とりわけヒップホップに大きく興味を持ちはじめた彼は、現在はラップ・クルー、MaisonDe(メゾンド)のメンバーとして共に活躍する同級生のTaiyohと、小5の時に〈サブロク〉なるスケボー・チームを結成する。
「その時、ちょうど〈高校生RAP選手権〉が盛り上がりはじめて、気が付いたらみんなでフリースタイルをやっていたんです。でも僕はフリースタイルがまったくできなくて、DJに転向しました」。
しばらくはDJとして活動を続ける日々だったが、「高校生になって、サブロクとして関西中をライヴで回っていたんですよ。僕はバックDJでした。高校卒業後は服が好きだったからファッションの専門学校に入って。そのうちに、元からの友達で結成したMaisonDeもだんだんリリックを書くようになった。メンバーのljが宅録セットとかも持ってたので、自然と曲を作るようになっていったんです」。
SoundCloudやYouTubeなどで公開されたそれらの音源が、Shurkn Papが大きく注目されるきっかけになった。なかでも昨年発表した“Road Trip”はYouTubeでの再生回数が100万回に届く勢いである。そうして、徐々に都内でのライヴも増えて知名度を上げてきた彼が、いよいよファースト・アルバム『The ME』を完成させた。
「今回は〈自分〉がテーマ。まだ短いですが、いままでの自分の人生の音楽経験をすべて詰め込みたいなと」と話す通り、MaisonDeが得意とする流行りのトラップ・ビートを用いつつ、彼の音楽的ルーツが垣間見えるようなソウルフルでファンク色の濃い楽曲も目立つ。客演にはTaiyohやljらMaisonDeのメンバーのほか、Young CocoやWILYWNKAといった同じ関西圏の実力派ラッパー、そしてKANDYTOWNからIOとKEIJUらが参加。いずれも、Shurkn Pap本人がアツいリスペクトを寄せる面々だ。
「Young Cocoは15、16歳の時からずっとよくしてもらってて、WILYWNKAは僕をラップの世界に引き込んでくれた、まさにその人なんです。IOくん、KEIJUくんはすべてにおいてかっこいい。絶対にお願いしたいと思っていて、参加してくれてめちゃくちゃ嬉しいですね」。
そう語る一方で、「地元の姫路は、誇るべき姫路城もあるし、みんな愛情深くてあったかい。みんなにもいいふうに捉えられたら嬉しいです」と地元への愛情も忘れない。10月には大阪、11月には東京、そして12月には地元・姫路でのワンマン・ライヴも控えている。
「まだ若いけど、僕はいろんな音楽を聴いて〈やっぱり音楽が好きなんやな〉と実感してきた。だから、自分の作品やライヴを通じて、いろんな人に音楽の素晴らしさを知ってもらいたいです」。
Shurkn Pap
97年生まれ、兵庫は姫路出身のラッパー。2013年からDJ Koodyの名でDJ活動を開始。前後して幼馴染みたちとMaisonDeを結成し、2017年より本格的にラップ・キャリアをスタート。MaisonDeのミックステープ公開を経て2018年6月にファーストEP『Various』をリリースし、収録曲“Road Trip”のMVが大きな反響を呼ぶ。同年9月に『Various 2』、11月に『Pap's Building』とEPを連続リリース。今年に入って2月にEP『STYLISH NINJA』を配信。並行してTaeyoung BoyやCz Tiger、Gottz、GeG、WILYWNKAらとのコラボを次々に行い、MaisonDeのEP『The MaisonDe II』も話題を集めるなか、ファースト・アルバム『The ME』(Island State Music)を10月2日にリリースする。