あなたのココロの奥底に眠る大切な思い出をそっと呼び覚ます、優しさと切なさに溢れた全12編の音楽と物語が交差する感動のコンセプト・アルバム
AKIHIDEが、約1年半ぶりとなるアルバム『星飼いの少年』を完成させた。今作は彼が書き下ろしたオリジナルストーリーと楽曲が絡み合うコンセプト・アルバムとなっている。本作についてAKIHIDE本人に話を訊いた。
――まずは〈NAKED MOON2-星追いの少女-〉ライブお疲れさまでした! 初の〈完全独奏〉ということでしたが、終えてみていかがでしたか?
「とても楽しかったです。一人だからこそ、会場の皆さんと作りあげていく空気感というものを強く感じましたね。会場が盛り上がればテンポが上がったり、皆さんが静かに聴いてくださっているときはよりつま弾くように弾けたり。同じ曲でもその時その時で違うアレンジになって僕自身も色々発見がありました。ファンの皆さんとの距離も近くあらためて感謝を感じたすごく実りのあるツアーでしたね」
――ありがとうございます! ではここからは約1年半ぶりのリリースとなるニュー・アルバム『星飼いの少年』についてお話を伺えればと思います。今作の制作はどんな風に始まったのでしょうか? 楽曲ありきだったのか。物語ありきだったのか。
「最初のきっかけは去年行った〈NAKED MOON〉ツアーでシンプルなスタイルの面白さを発見して、またやりたいな。作品にしたいな。と思い、ガット・ギターとウッド・ベースとパーカッションという3人編成が浮かびました。でも、その時にはストーリーというのは全然なくて。曲を作っていく過程のなかで、いくつか物語が浮かんだんですけど、自分のなかでしっくりこなくて。それである日〈星飼いの少年〉というタイトルだけが決まって。〈あ、これいいな〉ってしっくりきたんですね。そこからストーリーが広がっていった感じですね。なので、楽曲制作と並行してストーリーも考えていきました。最初は、10曲目にある“星飼いの少年”だけの物語を考えていたんですけど、作っていくうちに星飼いの少年が現在にいたる前後に出会いや別れがあるなと思えてきたんです。そうして少しずつ物語と楽曲を膨らませていきました」
――なるほど。ではこのストーリーのテーマはずばり〈出会いと別れ〉ですね。
「そうですね。昔から僕のなかで〈人は思い出とともに生きている〉という考えがあって。生まれた時から、その生涯を終えるまでに数えきれないほどの〈出会い〉と〈別れ〉を思い出として抱えながら日々を過ごしている姿を描きたかったんです」
――ではここからは1曲ずつ楽曲についてお話を伺いたいと思います。物語の幕開けを飾る“おもひで流星群”は主人公のいろんな思い出が駆け巡るっている様子が想像できる緊張感のあるエモーショナルなナンバーです。
「この曲はテンポが速い曲で大変です(笑)。自分で作っておきながら言うのもなんですが、めちゃくちゃ練習しました(笑)。右手の指の動きが速くて。今作では思い出を〈星〉になぞらえているので高速で弾くことで星(思い出)が夜空にたくさん散りばめられている様子を描きました。そこにウッド・ベースとパーカッションが加わることで、シンプルなんだけれどもちゃんと熱を伝えられるようなアレンジを考えて作っていきました」
――続いてはアートワークとともにMVが公開されたリード・トラックとなる“星追いの少女”ですが、観た時はドキッとしました。これまでのAKIHIDEさんのソロ作品のイメージとは対照的な赤色を纏われていたので。さらにMVでは複雑に絡まった無数の赤い糸がAKIHIDEさんに巻き付いていて、血のような雰囲気でした。今回赤色を選ばれた理由は?
「インターネットが主流とされるなかで、目から入ってくる情報というものが日々強くなっていると感じるんです。そうした時に、自分の作品にも強さがほしいなと思ったんです。僕のなかであまりない〈赤〉というものを使うことでインパクトを出せるかなと。
あと、先ほども話しましたが人間というのは思い出で出来上がっていると思うんです。思い出というのは、ある意味、人間にとっての血肉的要素であるというのも表現したくて。なので思い出の星も赤色なんです。僕は男女の出会いと別れも赤い糸で絡まっているものだと思っているので、“星追いの少女”のMVでは楽しいメロディーを奏でられるものでもあるし、悲しいメロディーを奏でられる象徴として赤い糸を使って表現しました」
――たしかに、赤ってすごくパワーを秘めた色ですよね。赤が入ることで、より少女の葛藤や恋焦がれる気持ちが痛切に伝わってきます。交差点で見知らぬ人に傘を渡された少女が運命を感じ、再会を夢見てしまう姿が描かれています。再会できたら〈運命〉だと思えたりするのですが出会えず。「運命はそう簡単にうまくいかないよ? 甘くないよ?」とAKIHIDEさんに言われているような気がしました。
「あ、本当ですか(笑)。僕自身そんな厳しい考えではないですよ(笑)。歌詞っていろんな書き方があると思うんですけど、yasuさんに歌詞の表現の仕方を教えてもらってから〈出来事の一部分、ほんの数秒〉を描くことにトライしているんです。なので“星追いの少女”では恋焦がれている状況を描きたかったので、その後までは描かないようにしました。
もちろん僕のなかではその後の物語はありますが、正解はないです。各々感じて聴いてもらえたら」
――また、アルバムのジャケットの赤い星のなかに〈デビルナミダくん〉がいたりと遊び心が感じられますね。
「これはデザインチームが遊んでくれた感じですね。実はデビルナミダくん以外にもキャラクターが散りばめられています。赤い星は思い出の象徴であり、思い出が描かれているということだけ伝えたらこんな素敵なデザインに仕上げてくれました」
――ファンの皆さんはくまなく作品をチェックされると思うので、ジャケットにも注目ですね。
「そうなんですよ! よくファンの皆さんに考察されちゃうんですよね(笑)。ネットを見ていると、あ、そこを考察するんだ!?と思うことがよくあります(笑)。でもありがたいですね。僕も考察するのが好きなので細かく見て頂いているというのは」