左から、カズマ・タケイ、中村郁香、もっさ、朝日、藤田
 

一昨年リリースの初全国流通盤『ONE!』が大きな話題を呼び、昨年は、ギタリスト・朝日がボカロP(石風呂)名義で発表してきた楽曲の、バンドによるセルフ・カヴァー作『MEMORIES』をリリースしたネクライトーキー。抜群にノレて、おもしろくて、時に切なく、インパクトの強い楽曲と、一度聴いたら忘れられないヴォーカリスト・もっさの歌声にハマるファンは増え続け、ツアーの動員数はうなぎ上り。そして昨年は名だたるフェスにも数多く出演した。そんな快進撃を続ける5人が、1月29日(水)にいよいよメジャー・デビュー作『ZOO!!』をリリースする。もっさ(ヴォーカル/ギター)、朝日(ギター)、藤田(ベース)、カズマ・タケイ(ドラムス)、中村郁香(キーボード)に話を訊いた。

ネクライトーキー ZOO!! ソニー(2020)


晴れてメジャー・デビュー!!

―― 一昨年の『ONE!』から〈これはブレイクするぞ!〉と思っていたら、本当にブレイクされて。

朝日「いえいえ、まだまだです」

――この度、晴れてメジャー・デビューとなるわけですが……このスピード感にはついていけてますか?

もっさ「全く……。うわああああって感じです」

――ものすごい急な流れに身を任せてる感じですか?

もっさ「どうですか?」

朝日「俺は曲を作るだけであんまり変わっていなくて、ライブに関しては、やると決めた分はやるってだけなんですけどね」

中村郁香「でも、知らない間にジェットコースターに乗ってたみたいな感じはあるよね」

――いまもジェットコースターに乗ってる途中ですか?

中村「実感はないんですけど(笑)」

藤田「乗ってるけど、その実感はないんだ(笑)」

カズマ・タケイ「でも朝日の言う通り、昔からやることは変わってないし、自分たちのいる位置もあんまりわかってないし、気付いたらいまがあるみたいな。そこはそんなに意識せずに続けてますね」

藤田「メジャー・デビューだからと言ってスタッフも別に変わってないし、ずっと同じままやっていけてます」

中村「〈メジャーになるからこうしてね〉みたいに言われたこともないし、いつも通り過ごしてよさそうだし(笑)」

朝日「もちろんソニー(・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)からメジャー・デビューするので、レコーディングやライブにソニーの方が来てくれるようになったんですけど、その方々もネクライトーキーのスタンスを尊重してくれてるので、すごくありがたいなと思いますね」

タケイ「そうだね」

――そのバンドのスタンスは、5人のメンバーやスタッフさん方ときちんと共有できているものですか?

朝日「はい。むしろ、メンバー5人に話が通ってないことは止めよう、みたいに話していて。バンドのスタンスについて、毎回きちんと話し合ってるわけではないですけど、メンバーが聞いて納得しないことはやらないでいようっていうのはありますね」

タケイ「〈やりたくないことはやらない〉っていうことは、ずっと貫いていることですね」

朝日「で、メンバー内で意見が割れたら、その都度話し合いだね」

――今作の制作中に、何か意見が割れたことはありますか?

藤田「どの曲を収録するかっていうことに関してだけは意見が割れましたね」

朝日「1、2曲、入れる入れないでね」

藤田「最初は〈これを入れよう、これは入れるのをやめよう〉って話し合ってたけど、レコーディングをして上がった曲を聴いたら、自然と〈これで行こう〉ってなったよね。出来た曲がよかったから」

――レコーディングはいつごろ行われてたんですか?

朝日「(2019年の)9月、10月に何回かに分けてですね」

タケイ「夏にワンマン・ツアーの追加公演(〈ゴーゴートーキーズ!全国編「〆」〉)があって、その前後に合宿をしてました」

――あのライブでメジャー・デビューを発表したので、その前にメジャー行きは決まっていたんですよね。

朝日「決まっていました。でもさっきも言ったように、何か特別な変化があるわけでもなく。もちろん〈前より良くしたい〉っていうのはありますけど」

藤田「それはメジャーに行く行かない関係なく、いつも思ってることですね」


締切のほうから来た!!

――前作『MEMORIES』のレコーディングではヴォーカル録りが大変だったらしいですが、今回はどうでしたか?

もっさ「今回は何日かに分けて録ってるので大丈夫でした。けど、今回はすごい速さで曲が出来て、歌詞が上がって、すぐ歌う〉みたいな感じで。それこそその時のスピード感はすごくって」

――えっ!? 曲は前々からあったものじゃないんですか?

もっさ「むしろレコーディング期間中に完成した曲ばかりで」

藤田「朝日さんが夜に曲を作って、朝みんなでそれを聴いて、午前中に練って、昼からレコーディングを始める(笑)」

タケイ「っていうのが合宿の最後の3日間だったね」

もっさ「だから『ONE!』の時より衝動感は強いんじゃないかと思います」

――それは締切が迫ってたんですか?

朝日「そうですね。ずっと〈どういうのを作ろう〉って悩んでいて、でも締切のほうは決まっていたので」

藤田「締切のほうから来た(笑)」

一同「(笑)」

――それが結果的に勢いのある作品になった。

朝日「〈勢いを持って作ったらこうなるんだぞ〉っていうことだけはわかりました」

タケイ「もちろん朝日のなかでは曲の断片がいっぱいあったと思うし、それをどう組み合わせていくかを練りに練ってはいたんですけどね。それがなかったら1日とかじゃ出来なかったよね」

もっさ「だから、『ONE!』の時は活動を始めてからずっとやってた曲をレコーディングしたのに対して、『ZOO!!』はレコーディング期間にできた曲を〈ぎゅっ〉って入れたので、よりハチャメチャになってるなって思います」


秩序のない動物園!!

――『ZOO!!』というアルバム名はどこから来ているんですか?

朝日「アルバムが完成してから、やたらと動物が出てくる歌詞が多いなと思って」

――ネコとかタヌキの他に、虫とかカエルもいますよね。

朝日「〈それ動物?〉っていう(笑)」

もっさ「動物園のなかでも、めっちゃ端っこにいそうなのばかり(笑)」

タケイ「夜行性コーナーね」

藤田「そうそう、ジメッとしたゾーン(笑)」

もっさ「でも、そういう動物がいっぱいいるのいいなって思っちゃった」

朝日「まあ1作目が『ONE!』だったから(指で2を作りながら)『ZOO!!』で」

藤田「ツーじゃなくてズー(笑)」

――ビックリマークも2個に増えて。

タケイ「よくお気付きで(笑)」

藤田「1作目が1つだったから次は2個で(笑)」

中村「次のアルバムはビックリマーク3つ並べる?」

朝日「3つは並べたくないよな」

中村「え、2個までなの?」

タケイ「まあ、こんな飲み会みたいなノリで決まりました(笑)」

――今回もジャケットはもっささんが描いていて。ジャケだけ見るとどんな動物がいるんだろうって思うんですけど、ジャケに描かれているようなメジャーな動物は全然出てこないですよね(笑)。

もっさ「そうなんです。ネズミとタヌキくらいしか出てこない(笑)」

――でも、曲調もバラエティに富んでいるのが動物園らしくて、いいタイトルだなって思いました。

もっさ「〈ZOO〉って言葉の意味を調べたら〈無秩序な〉っていう意味もあるらしくって、〈それいいね〉ってなりました(笑)」

――秩序のない作品ですか(笑)。

朝日「ないね」

藤田「全然ない」

もっさ「だからいいタイトルなんじゃないかと思ってます」

――いま無秩序という言葉が出ましたけど、ネクライトーキーの楽曲を聴いていると、キーボードの音色とか、ドラムスやベースのフレーズとか、すごい変わった音が鳴っていて、〈これは誰が思い付くんだろう?〉っていつも疑問に思うんです。それは朝日さんの作ったデモの時点でそうなってるんですか?

タケイ「3~4割はデモの時点でそうなっているんですけど、残りの6~7割はおのおので作ってますね」

藤田「けっこう自由に任されてるよね。不思議な音が鳴っているところは、むーさん(中村)がいろいろ練って作ってるし」

中村「うん。好き勝手にやって、採用されたらラッキーみたいな感じです。物足りない時とか、音の抜けが良くない時は朝日さんに言われますね」

朝日「判断する人がいないと本当に無秩序になっちゃうので、最終的には俺が判断します。でもどんどんアイデアを出してもらわないと曲を作るのも間に合わんかったしな(笑)」

一同「(笑)」


もっさの主人公感!!

――それと、今回もっささんが曲によって歌声を使い分けてたりして、すごく成長を感じました。その点はいかがですか?

朝日「レコーディング・エンジニアの方は〈大人びたね〉って言ってたね」

もっさ「そう! 〈大人びた〉って言われました」

中村「聴いてて艶っぽくなったっていうか。前作は子供が〈ワー!〉って歌ってて、今回は20歳過ぎた感じ?」

もっさ「エンジニアさんは〈女児から女子になった〉って言ってた(笑)。でも、曲調も意識して歌ってます……」

藤田「そうそう。曲によって歌い方は変えてるよね」

もっさ「けっこう変えたつもりなんです!」

――以前は、朝日さんがヴォーカルについて指示を出してもあんまり言うことを聞かなかったみたいですけど。

もっさ「もう指示されなくなりました(笑)」

朝日「そこは諦めました。粘り勝ちですね」

――なんていうか、もっささんって主人公感がありますよね。

もっさ「(小さな声で)主人公……感……」

――いちばん音楽の経験もなくって、朝日さんのいちファンだった少女が、いまや一緒にバンドをやっていてどんどん成長していってる感じが、物語の主人公みたいだなって思えて。

朝日「それ、めっっっっちゃわかります! 『アイシールド21』って漫画知ってますか? セナ(小早川瀬那)っぽくないですか?」

――わかりますわかります!!

朝日「〈足が速い〉っていうひとつの才能だけでヒル魔さんに見出されて、アメフト部に連れ去られて、どんどん物語に巻き込まれていって。でも気付いたらアメフトが楽しくなってるっていうあの感じ。あとは『BECK』のコユキね。普段そんなに前に出るタチじゃないのに、一点の才能を周りのヤバいやつに見付けられて引き抜かれて、気付いたら表に立たされてるっていう」

もっさ「(朝日を見ながら)ヤバいやつ……」

朝日「めっちゃ主人公っぽいんですよね」

――きっとファンからもそう見えてると思いますよ。

もっさ「こんなボヨボヨのフロントマンなのに……」

藤田「ボヨボヨって何(笑)」

朝日「それにこの人(もっさ)『BECK』を読んでないんですけど、コユキとギターが一緒なんですよ。知らずのうちにね」

もっさ「〈めっちゃいい〉と思って買ったギターが、年代まで一緒だったみたいで(笑)」

――そんな主人公が、ライブ中にウインクするまでに成長して(※)。

※今作の初回盤に収録されているライブ映像のダイジェストが公開された際に、もっさがウインクしていると朝日がツイートした

一同「(笑)」

もっさ「あれは情報操作です! そんなことやらんし! ウインクとか! やめてくれ(笑)!」

――それと、朝日さんの曲を聴いていると、いつも自然と情景が思い浮かぶんです。必ず孤独そうな主人公がいて、そのストーリーの主人公と、もっささんの主人公感が重なるのかもしれないです。

朝日「たしかにそれに近いことはあるかもしれないです。僕のなかで情景描写から入る歌詞が好きだから、まず舞台設定みたいなものを用意して、そこから作ることが多いので。それに自分が歌うんじゃなくて、もっさに歌ってもらうから、ある程度舞台を用意して、好きに歩き回ってもらえたらなっていうニュアンスもありますね。でも、結局は自分の生活の歌になっちゃうんですけど」

――じゃあある意味でもっささんは、朝日さんが作った舞台の上で演じる主演女優的な立ち位置でもあるんでしょうか。

もっさ「……」

中村「主演動物(笑)? ネズミの役とかさ」

もっさ「いや、大丈夫です……(笑)」

朝日「とにかくもっさは巻き込まれ主人公なんですよね。『千と千尋の神隠し』の千尋とか。グズグズしてたらいつの間にか事件に巻き込まれてるっていう」

もっさ「まあグズグズはしてますけど(笑)。こんな冴えないヤツがフロントマンだなんて、ヤバいヤバいと思ってますよ」

朝日「少年漫画の主人公なんて冴えないヤツが多いよ」

中村「そうだね、たいてい最初は冴えない」

藤田「でも途中で覚醒するとか、実はいい血筋だったってわかるとか(笑)」