Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣の5人が毎週火曜(歌謡)日に〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今週も張り切ってまいります。紹介した楽曲は下記SpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめているので、併せてお楽しみくださいね。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyのプレイリスト
 
YouTubeのプレイリスト

 


【田中亮太】

木(KI)“Neiro”

いまだ謎めいている4人組。ですが、この曲を聴くと、ちょっとただことじゃないバンドだとわかるはず。心臓の鼓動のようなビートを中心に、さまざまな管弦楽器の音色やサウンド・エフェクト、幽玄な歌声が有機的に重なっていく6分13秒。まったく無駄がないです。ウリチパン郡やパンダ・ベアを背後に感じさせつつ、ニューエイジ再興から反響した新たなエレクトロニカ的感性の台頭を象徴するであろう1曲。今年は彼らのものになるのかも。

 

w.o.d. “HOAX”~LIVE AT w.o.d. presents〈スペース・インベーダーズⅣ〉

『XTRMNTR』(2000年)~『Evil Heat』(2002年)期のプライマル・スクリームばりの超攻撃的なエレクトロ・ロックンロール。かっこいい! GEZAN『狂(KLUE)』とはまた異なる、バンドからダンス・ミュージックへのアプローチとしても興味深いです。

 

DÉ DÉ MOUSE “baby's star jam (Edit 001)”

この曲のオリジナルが自主制作のCD-Rでリリースされたのは2006年。当時自分が住んでいた京都におけるクラブ・シーンのなかで、徐々にジャンルをクロスオーヴァ―した一大アンセムになっていった渦中にいた人間としては、それはもう特別に思い入れがあるわけで。14年越しのセルフ・エディットは、原曲よりローテンポでよりバレアリックになっていて、〈いろいろあったけど、みんなまだ踊っているよねー〉と優しい気持ちになりました。

 

平賀さち枝とホームカミングス “かがやき”

ご飯を食べているシーンの入ったMVは傑作! それに加えて今回は亀も出てきて、まさに僕得! 曲についてはこちらでレビューを書かせてもらいました。

 

【高見香那】

ARSKN “99.9”

ジワジワと注目を集めている、奈良が拠点のリョウナさんによる一人バンドの新曲。グランジなムード満点。只者ではないムードが伝わってきます。アートワーク含めヴィジュアルもキメているところが頼もしいですね。

 

突然少年 『辺りを見渡せばきっとそばに誰かいる』SPOT映像

突然少年。『サンキュー・マイ・フレンド・アンド・マイ・ファミリー』リリース時に怒髪天・増子さんとの対談を担当して以来、(それまでもライブを観てかっこいいなーと思っていたものの)そのピュアで歪な魅力にヤラれています。とだくん(ベース)の描くなんかスゴイ絵も好きですね。

そんな彼ら、いよいよ2月12日(水)に新作をリリースするそうです。ドラマー脱退というアクシデントがあった中、Akira Kawasakimouse on the keys)、岡山健二classicus、元andymori)、マシータ(God bless youBEAT CRUSADERS/NATSUMEN)の3人のドラマーを迎え制作したアルバム、果たしてどんな内容になっているのか。楽しみですよ。

 

【小峯崇嗣】

Lil Hyvää  “シーヒムの海”

東京を拠点に活動しているLil Hyvää(リル・ヒュバー)のSoundCloudに上がっていた楽曲”シーヒムの海”がリマスターされ、ストリーミングに配信されました。淡く空に溶けてしまいそうな美しい一曲です。

 

春がふる ”言葉は”

春がふるは、仙台を拠点に活動する3人組バンドです。メロディーと歌詞が心に突き刺さりました。個人的に、荒井由実時代を想起させる優しく包み込む歌声がとても好きです。

 

【酒井優考】

ネクライトーキー “北上のススメ”

取材前に、「ドラゴンボール」の主題歌(“摩訶不思議アドベンチャー”)みたいだなとか思いながら何気なく聴いてたんですが、聴けば聴くほど歌詞の沁みること沁みること。こんな曲調&MVに〈哀しいこともムカつくことも捨てる手前で溜まる、黙る〉ですよ。負の感情、捨てる前に溜まっていくよね本当に。〈娯楽だって裏めくりゃあ人が生きてるんだぜ〉なんてもう音楽家の究極の嘆きだと思います。2020年のいい歌詞ランキング暫定1位。インタビューでもそういう歌詞についてちらっと訊いていますのでぜひご一読を。

 

The World Will Tear Us Apart “September Song”

例えば旅行に行ったり、引っ越ししたりすると新たに出会ったその街がすごくキレイに輝いて見えることがあるけれど、見慣れたいつもの街のいつもの日常だって実は輝いてるんだと思います。

 

Chara+YUKI “楽しい蹴伸び”

作曲&サウンド・プロデュースはTENDRE。蹴伸びなんて最近全然してないなあ。

 

高井息吹 “瞼”

高井息吹と眠る星座のメンバーでもあった君島大空&新井和輝(KingGnu)が共同制作・プロデュースした配信シングル『欠片/瞼』より。休日の一瞬のまどろみのような曲です。1月に観た弾き語りのライブは、歌も演奏もこれまで以上にフリーダムになっててビックリしました。

 

宇宙団 “エンドロール”

毎回メンバーが固定されていないジオラマラジオのライブである日、すごくキュートなのにすごくパワフルなドラムスを叩く女性ドラマーがいて、ツチさんというその方が宇宙団というバンドをやっていることを知りました。この曲は開始数秒からずーーーっと胸がギュッと締め付けられるような曲で、文字通り映画のエンドロールで流れるような、大作アルバムのいちばん最後の締めくくりみたいな曲です。

 

赤い公園 “絶対零度”

3拍子を4拍子に聴かせるAメロのトリックとか、AメロからBメロ、Bメロからサビへの大胆な転調(思わず通勤中に〈えっこれどうなってんの!?〉と思ってガレージバンドで音確認したらなんてことはない転調だった、なのに)とか、金魚鉢から出て死の大海に挑む金魚をモチーフにした歌詞とか、とにかく工夫の詰まったすごい曲に出会うと自然と話したいこと・書きたいことがたくさん出てきます。

 

日野市立七生緑小学校合唱団 “歌が息をする”

長男の授業参観を観に行ったらこの歌を練習していて、いい曲だったのでえらく感動しました。古き良き合唱のテイストも汲みつつ、3音ずつ動くサンバチックなリズムとか切ない和音も取り入れていて(開始1秒でいきなり切ない!)、欧米のコーラス隊とか霊歌隊もたまに聴くけど、こういうのって洋楽にはあまりない日本独特のいいメロ&進行&和声だなと感心しました。ピアニスト高橋晴美さん作曲、合唱指導者の渡瀬昌治さん作詞。

 

【天野龍太郎】

Awich “Gangsta (Prod. Chaki Zulu)”

もはや〈2020年のベスト・アルバム!〉と言いたくなるAwichの『孔雀』から。ダンスホール・レゲエなビートと〈Gangstaは仲間を裏切らない〉というAwichの歌。向かうところ敵なし。

 

没 a.k.a NGS “Sneeze (prod. botsu)”

Dos Monosの没くんの新曲。くぐもった声のラップが、いつもとちょっとちがう感じ。海外のリスナーに発見されてもおかしくないと思うんだけど。

 

Gimgigam “Like Tears in Rain (feat. KYOYO)”

先週に続き、Gimgigamさんの新曲が発表されました。KYOYOのラップとギター・リフ、タイトでファンキーなハウス・ビートがかっこいい。Gimgigamさん、どんな曲を作ってもすごい。

 

は、とり “退屈 with ホッホ(ウッチェッリ)さん”

先日、大久保ひかりのうまでライブを観た(たぶん2度目)、シンガー・ソングライター〈は、とり〉さんのライブ音源。曲を演奏する前にその背景を語るは、とりさんのライブのスタイルが好きです。ピアノはuccelliさん。

 

久野かおり “Adam & Eve 1989”

イリーガルなコンテンツでごめんなさい! 編著書「オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド」をドロップしてディグ界を混乱に陥れているlightmellowbuが、ライムスター宇多丸さんのTBSラジオ番組「アフター6ジャンクション」に出演。そこで部長のハタさんと柴崎祐二さんが〈僕たちのアンセム〉と紹介していたのがこの久野かおり“Adam & Eve 1989”(88年作『LUNA』に収録)です。bu員のINDGMSK aka 台車のミックス「シティポップがんばるぞ」でも局所的に知られているクラシック。本当に素晴らしいですよね。ソプラノ/アルト・サックスを美しい音色で吹く久野さんですが、やっぱり歌声がとんでもなくいい、と私は思います。伸びやかだけど、切なく、儚げ。稀有なヴォーカリストです。