スクールカースト最下層からの反逆と大切な女性への追悼
彼らのメジャー・デビュー作となった通算2作目『Three Cheers For Sweet Revenge』(2004年)は、通算150万枚をアメリカで売り上げた。

MY CHEMICAL ROMANCE 『Three Cheers For Sweet Revenge』 Reprise(2004)
その好セールスに少なからず貢献したのが、当時脚光をあびていたスクリーモ(スクリームとエモを掛け合わせた造語)というジャンルの象徴的な存在であったザ・ユーズドのヴォーカル、バート・マクラッケン。そして、彼のプッシュに促されて、どれどれと聴いてみたら一気に惹き込まれた、という人がうじゃうじゃいたに違いない1曲が、アルバムからの第1弾シングル“I’m Not Okay (I Promise)”だ。この曲のミュージック・ビデオは、スクールカースト最下層の学生を演じるメンバーがそれぞれの形でリヴェンジするという内容で、俺たちはイケていないんだからと諭すレイと、それでも現実を打破したいジェラルドの会話から始まる構成に、かつて心を掴まれ揺らされ、いま観ても涙を流してしまうという人も少なくないはず。もちろん、ジェラルドやフランクをはじめとするルックスの美麗さからハマった人もいるだろう。
そしてMVといえば同作からのシングルで、ジェラルドとマイキーのウェイ兄弟の祖母エレナさんを追悼した “Helena”もおさえておかねばならない。2020年現在、YouTubeで2600万回再生されているこのビデオは、彼らの映像作品における最高傑作のひとつ。兄弟に音楽やアート、ダンスの手ほどきをしただけでなく、バンドの初期を熱心にサポートした恩人である彼女の晩年に、なぜもっと側にいなかったのかという自己嫌悪を歌っている曲だからだろうか。純粋に悲しく美しい葬送のストーリーではなく、ジェラルドの自責による怒りも同時に伝わってくるのが切ない。ライブバンドとしての評価も然ることながら、メッセージや思いを届けるために丁寧に作り込まれたMVも、彼らの人気を絶対的なものにすることに大きく貢献した。