鈴木実貴子ズの音楽を聴いていると、傷だらけの真心が光明を見出していくまでの生々しいドキュメントを見ている心地になる。
2012年結成、鈴木実貴子(ヴォーカル/アコースティック・ギター)とイサミ(通称〈ズ〉、ドラムス)による2人組。名古屋・吹上のライブ・スペース〈鑪ら場(たたらば)〉を運営しながら、同地を拠点に精力的なライブ活動を行ってきた。2019年には〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉のオーディション枠〈RISING★STAR〉への出演が決まるも、出演予定の初日は台風で中止。当日は急遽札幌のライブハウスでゲリラ的にイベントを開催し、盛り上げたことも話題となった。
そんな経験を経た鈴木実貴子ズが、1年ぶりのセカンド・アルバム『外がうるさい』を4月にリリース。本作は新曲5曲と名古屋HUCK FINNでのライブ・レコーディングされた3曲で構成されている。物事の本質を覆い隠すあらゆるものを関係ないと切り捨てていく“問題外”、正義が人それぞれにあることのやるせなさを吐きつける“限りない闇に声を”、死のあっけなさに直面している“夏祭り”など、鈴木が実際に体験した出来事をオルタナティヴ・サウンドに乗せて昇華した2019年のダイアリー的な作品だった。
鋭利な言葉と煮えたぎったフラストレーションそのものである歌を表すのに、〈ロック・バンドの美学〉なんて言葉は整いすぎている。絶望の先のわずかな希望を拠り所にして揺らぎながら歩んでいる魂の轍をバンドと共に辿るような聴きごたえに、思わず惹きつけられてしまうのだ。
今回、『外がうるさい』にスーパーヴァイザーとして関わっているアラヤジャパンを迎え、実貴子ズの2人との鼎談形式でSkype取材を行った。雑談主体の会話は、〈今の時世の中でどう行動していくか〉という問いにまで及んだ。そこから滲むのは、彼女たちのブレない芯。バンドおよびライブハウスを運営する、音楽に生きる者としての率直な言葉に触れてほしい。