四の五の言う前に、まずはライヴを観よう。昨年は142本のステージをこなし、〈フジロック〉に2年連続の出演も果たした。今年はBiSHに呼ばれたりASIAN KUNG-FU GENERATIONに呼ばれたりと、同業者からの視線も熱い。上半身ハダカ、童顔メガネと絶叫がトレードマークである大武茜一郎のインパクトも凄い。今もっとも輝いているライヴ・バンドのうちの一つ、それが突然少年だ。

 「高校の同級生で遊んでいて、スタジオで演奏する程度だったのが、〈バンドって何するものなんだろう?〉って改めて考えた時に、〈CD作ってツアー回るものじゃねぇか?〉って。それで実際やってみたら、抜け出せなくなっちゃった。ライヴをやっていないと調子が狂うし、ライヴの良し悪しでその後の生活が決まってくる感じ」(戸田源一郎)。

 そんな生粋のライヴ・バンドに、今年から新メンバーが加わった。オリジナルのメンバーより2歳下、20歳そこそこの岩本斗尉(ドラムス)の加入でリズムは強化され、何よりメンタル的に初心に返れたことが大きかった。

 「演奏の威力が上がった感じがあります。歌もそれに負けじとやらないといけないし」(大武)。

 「(岩本の加入前は)みんな同級生で8年間一緒だから、しゃべらなくてもわかるところがあったんですけど。今は〈お互いの好きな音は何だろう?〉って改めて話をする機会が増えて、そこはめちゃめちゃデカいと思います」(戸田)。

突然少年 『心の中の怪獣たちよ』 RED(2020)

 そして新生・突然少年から届いたセカンド・アルバム『心の中の怪獣たちよ』。ゴリゴリのハードコア・パンク、エモ、メロディアスなギター・ポップ、ヘヴィーなロック・バラードなど、楽曲は実に多彩。演奏の暴れっぷりも格別で、歌が終わったのにギター・ソロが2分も続いたり(戸田いわく〈大好きなbloodthirsty butchersの影響かも〉とのこと!)、言葉がメロディーをはみ出してアジテーションみたいになったり、迸る情熱がひたすらにエモい。

 「2020年はほぼライヴができない年だったので、そのぶんのエネルギーを注ぎ込めるように試行錯誤しました。まだライヴで直に聴いてもらっていない曲が中心だし、まっさらな新しいものになったと思います」(大武)。

 劇的な緩急の繰り返しで盛り上げる1曲目“青空”などを書いた大武と、壮大なヘヴィネスと悲しみを湛えた“伝えられなかったこと”を書いた戸田と、二人の作詞家がいるのも強みだ。大武はストレートな表現で、戸田は意外な組み合わせやレトリックを駆使して(戸田いわく〈大好きなベンジーさんの影響です〉とのこと!)、大人になり切れない20代前半の揺れる心象を、色鮮やかに描いてみせる。

 「“青空”はいろんな感情をごちゃまぜにしているんですけど、最後に言いたいのは〈愛を忘れちゃいけない〉ということ。いつも自分のことで精一杯だけど、やっぱり友達や家族の優しさに助けられているのが事実だし、それを忘れちゃいけないなという思いがあります」(大武)。

 「“伝えられなかったこと”は恋愛の歌に聴こえますけど、もっと大きな感情もあって、前のドラムが抜けた時に〈これは失恋に近いな〉と思ったことも入っています。ドラマーの先輩が最近亡くなったこともあって、友達や恋人と別れる時には〈伝えられなかったこと〉があるよな、でももう伝えられないな、ということですね」(戸田)。

 最後に、〈突然少年が好きな人は、どこを好いてくれていると思う?〉と訊いてみた。その誠実な答えから、このバンドが支持される理由がわかる気がした。突然少年、信じていいバンドだと思う。

 「僕らのライヴに来てもらっている人たちは、本当は暗いけれど、ネガティヴな穴に落ちないようにがんばっている人たちが多いと思うんですよ。僕らもそうで、でもそういう時に音楽というものがあって、いろんなことを考えさせてくれたので。お客さんとはそこで繋がっている気がします」(戸田)。

 


突然少年
大武茜一郎(ヴォーカル/ギター)、戸田源一郎(ベース/コーラス)、カニユウヤ(ギター)、岩本斗尉(ドラムス)から成る4人組。2012年に西東京の高校の軽音楽部で結成。ドラマーの交代を経て、2020年7月より現体制に。2014年に〈閃光ライオット〉でグランプリを獲得し、初音源『産声 e.p』を発表。以降は配信限定のライヴ盤やシングルなどリリースを重ねる。2018年、2019年は連続で〈フジロック〉へ出演し、同年に初アルバム『Thank you my Friend and my Family』を発表。2020年は6曲入りEP『辺りを見渡せばきっと側に誰かいる』、シングル“ボール”と立て続け、このたび、ニュー・アルバム『心の中の怪獣たちよ』(RED)をリリースしたばかり。