Maica_n『Unchained』根岸考旨や斉藤和義らが後押し、10代の感性を表現した頼もしいメジャー第一作

2020.06.03

昨年6月のデビュー・ミニ・アルバム『秘密』は鮮烈だった。柔らかで涼やかながらグルーヴもあるリズムとメロディー。生き辛さを抱える10代の少年少女にとって共感性が高いであろう歌詞。何よりクールでいて芯の強さを感じさせる歌声の個性が際立っていた。リード曲“Dance With Me”にはトム・ミッシュ好きにも好まれそうなAOR~シティ・ポップの爽快さがあり、一方Spotifyが〈Early Noise〉に選出してプッシュしたことで注目された“秘密”はR&B的で、歌にはセンシュアルな雰囲気が内包されていた。

そのMaica_nが19歳になって5月にメジャーからEPを発表すると聞いたとき、“Dance With Me”のような軽快なポップス側と“秘密”のようなR&B側のどちらに焦点を絞るのかが楽しみだったのだが、果たしてここに登場した『Unchained』にはその両方の発展形的な曲がある上、『秘密』にはなかったバラード曲もあり、シンガーとしてもソングライターとしてもポテンシャルを大いに感じさせる作品となっている。即ち、こんなタイプの曲も書きますよ(歌いますよ)といった自己紹介的なEPであるわけだが、自身も「ライブのセットリストを作る気持ちで並べた」とインタビューで話しているように、曲順にも強い拘りが感じ取れる。

ギターのカッティングとベースラインがファンキーな1曲目“HYW 55”、ロック的なバンド・サウンドと歌謡曲的な哀愁成分が合わさった2曲目“Unchain”、この2曲のアレンジを根岸考旨が担当。オーガニックであることのよさが光っていた前作『秘密』に対して、この2曲はプロの手で作り込まれたサウンドという気がどうしてもするが、Maica_nのヴォーカルの個性と魅力はそれを凌駕する形で輝いている。3曲目“Go my way”は前作から引き続きgomes(中込陽大)がアレンジを担当。その軽やかさ・ポップさに19歳の等身大の感覚が最も表れている。4曲目“Flow”は“Dance With Me”の発展形とも言えそうなシティ・ポップ路線で、斉藤和義がエレクトリック・ギターで参加。小田原豊・斉藤和義・根岸考旨の3人がアレンジを担当した贅沢な曲だが、実際のところこれが白眉。英語詞と日本語詞の混ざり具合も自然で、Maica_nの全ての魅力がこの1曲に凝縮されていると言ってもいい。最後の“海風”は育った徳島の海を思い浮かべて書いた初めての自作曲だそうで、弦をフィーチャーしたgomesのアレンジも光る抒情的なバラード。

どの曲が好みかはひとによって分かれそうだが、名のあるヴェテラン・ミュージシャンたちのやり方に決して引きずられることなく10代の瑞々しい感性を歌と詞に表したMaica_nが、とても頼もしく思えるメジャー第一作だ。

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