6年ぶりに届いた新作は、 ノラ・ジョーンズやスフィアン・スティーヴンスらとの仕事で知られるトーマス・バートレットがプロデュースを担当。深いエコーに包まれた幽玄な“Tao Bom”やエキゾなムードが横溢した“Na Cara”など何とも摩訶不思議な音世界が構築されているが、何よりも聴きものなのは爛熟という表現がピッタリくるべべウの歌唱で、いままでに感じたことのない苦みを舌先に感じたりしてやけに刺激的だったりする。
水面に浮かび揺れるような心地さを届ける歌声と、ボサ・ノヴァをベースにしたラウンジ・スタイルで本国はもちろんここ日本でも圧倒的な人気を誇るベベウ・ジルベルトが6年という長い間沈黙を経て遂に帰ってきた。一昨年、昨年と立て続けに父母を失い、計り知れない困難な時期に本作は制作されたようだが驚くほどに力強く、これまでにない成熟を感じさせる。今回、彼なしでは完成しえなかったとベベウが語るほどプロデューサーのトーマス・バートレットが重要な役割を担ったそうで、彼が鍵盤を務めるアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズなどにも通じる創作の深さを示した内容となっている。