〈TOWER PLUSアーカイブ〉は、これまでMikikiに転載されていなかった過去のTOWER PLUS+(tower+)の記事を転載するシリーズです。情報は掲載当時のものです。オリジナル記事:tower+ 2015年12月号

 

〈お早う始めよう 一秒前は死んだ〉
あぁ、星野源と同じ時代に生まれてよかった。みんなで一緒に未来を踊りたいんだ。
〈今を生きる すべての人に捧ぐ〉、あなたの想像を遥かに超えたあなたのための14曲。

前作『Stranger』から2年7か月ぶりとなる4枚目のアルバム、『YELLOW DANCER』が完成。シングル楽曲“地獄でなぜ悪い”“Crazy Crazy”“桜の森“SUN”が収録されており、ドラマの主題歌にして自身最大のヒット曲となる“SUN”を中心に繰り広げられる最新の星野源の世界は、わたしたちの想像をかるーくダンスしながら飛び越えてくる、大名盤である。

星野源 『YELLOW DANCER』 スピードスター(2015)

すでに様々な本人インタビューでも〈ブラックミュージック〉〈J-Pop〉〈イエローな音楽〉というワードが聞こえてくる中、1曲目の“時よ”はブラックな音楽を感じさせずに、アナログシンセの音が響きながら始まる。季節を感じる歌詞に、最初の曲にして〈バイバイ〉で終わるのに〈動き出せ 針を回せ/次の君に繋がれ〉と未来を予感させるアップテンポさがこのアルバムのさらなる展開を想像させる。

「めざましどようび」のテーマソングとなっている2曲目“Week End”が流れた瞬間の一気に踊り出す感覚、日常に変えて言うならば、寒い朝の出勤途中の信号待ちも楽しくなってしまうような。そんな高揚感から、3曲目の“SUN”に続くのである。

“ミスユー”では星野源の素の部分を覗くような、ファースト・アルバムに近い、温かいソウルバラード。〈さよならあなた〉の歌詞の歌い方が最高に素敵。ソロとして歌い始めた時とは違う、今だからこそな力強い歌声にグッとくるソウルフルな“Soul”で身を委ねる。そう、星野源がライブでもよく言うように〈自由に踊ればいい〉のである。

そして、アルバムで唯一の弾き語り曲“口づけ”は彼の真骨頂とも言える名バラード。そして次の7曲目の“地獄でなぜ悪い”のイントロで妙なテンションにさせられるのである(笑)。シングルリリース当時、病に倒れたあの後だから出来たこの曲は、奇跡的な1曲であり、このアルバムで改めて聴くと、違って聴こえてきたりもするから不思議。そして、唯一のインスト楽曲“Nerd Strut”では、マリンバが鳴る、細野晴臣との競演作だ。

アルバム後半は、『YELLOW DANCER』が出来る序曲だったかのような2曲のシングルが収録され、アルバム発売前にもかかわらずフルサイズで解禁されていた“Snow Men”へと続く。クールでセクシー、エロスな星野源まで堪能できてしまう。今まで見たことのなかったミュージック・ビデオもぜひ見て欲しい。

そのムードから一転、ラテン風なドラムが印象的な“Down Town”。河村”カースケ”智康と伊藤大地の豪華ツインドラムのナンバーはポップで音がダンスしてるのが耳から入ってきて心地いい。そして、アルバムはエンディングに向かって、ピアノが美しいバラード、“夜”へ。こんなに高い声で歌っているのも意外だったが、夜から朝になっていく、ゆっくりとした時間が流れる。

アルバムの最後を飾る“Friend Ship”は〈いつかまた 会えるかな〉という別れの部分と、目の前が爽快に広がっていくようなメロディーと前向きさが明日への一歩を踏み出せるようなダンスナンバーで締めくくられる。どうでしょう? 最後まできて、1曲目の〈バイバイ〉に再び繋がるみたいな全14曲。

初回限定盤A、Bにはアルバムとしては初となる映像作品(Blu-ray/DVD)が付属となっており、2015年8月12日と13日の2日間で行われた単独ライブ「星野源のひとりエッジin武道館」公演の模様を全22曲、127分収録! この日、ライブで初披露となった“Snow Men”や弾き語りでは昔からよく登場するNUMBER GIRLのカバー“透明少女”、ひとりで楽器を重ねての“桜の森”、さらには、ファンにはお馴染み、今年はまさかのフジロックフェスでも登場となったニセ明さんの“君は薔薇より美しい”も収録された超ボリュームな内容。

そして2016年の年明けからは2年ぶり、待望の全国ツアー『YELLOW VOYAGE』がスタートする。このアルバムがどんなバンドメンバーで、どう披露されるか今から楽しみで仕方がない。さぁ、君だけのダンスを踊る準備を。