バナナマンが毎年夏に行っている新ネタ披露単独公演。ライブでお馴染みなのが、〈おーちゃん〉と〈ひーとん〉のかけあいが魅力の音楽コント〈赤えんぴつ〉だ。そんな赤えんぴつがコントの世界から飛び出して、なんと日本武道館でライブを開催した。コントとリアルが交錯する、唯一無二の公演のレポートが到着した。 *Mikiki編集部


 

星野源も惚れ込むフォークデュオがゲストを迎えて武道館に立つ

バナナマンの設楽統演じる、おーちゃんと日村勇紀演じる、ひーとんからなるフォークデュオ・赤えんぴつの単独ライブが2月9日(金)、10日(土)の2日間にわたって、東京・日本武道館にて開催された。

これまでバナナマンの単独ライブにて毎回のようにふたりのコンサートが行われ、その都度数々のオリジナル曲を披露されてきた、バナナマンファンにとってはお馴染みのフォークデュオ。加えて星野源をはじめ多くのミュージシャンがその音楽に惚れ込むという、知る人ぞ知る音楽グループだが、そんな彼らが結成からおよそ30年を経て、聖地・日本武道館での単独ライブを実現するに至った。

これまでは赤えんぴつのライブはひーとんのアコースティックギターを伴奏に、四畳半フォーク的なサウンドを鳴らしてきたが、今回はふたりに加えてサイトウ”JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)をバンマスに豪華なバンドを従えてのパフォーマンスとなり、追加公演となる2日目にはchelmico、乃木坂46、三浦大知、トータス松本といった錚々たるゲストを迎えての公演となった。


バンドとの感動的演奏や中村倫也&黒木華出演ドラマを披露した初日

まずは初日、会場には多くのファンが、おーちゃんと同じく赤いチューリップハットを被って開演を待っていた。そんななか、ステージ上の光永渉が躍動感のあるドラムを叩くと、アリーナ後方からおーちゃんとひーとんが登場。ふたりがゆっくりと会場中央にあるステージに向かい、ふたりが向き合って握手するという、再結成COMPLEXを思わせるような登場シーンを経て、いよいよ赤えんぴつの武道館公演が幕を開ける……かと思いきや、おーちゃんは「イエー!」と会場をしきりに煽り、「ライブハウス武道館へようこそ」と発言。これまでのボソボソ声でダウナーな雰囲気の赤えんぴつからは想像できないアッパーな滑り出しに、ひーとんも「おーちゃん、盛り上げすぎ」とたしなめる。そこからは曲前に耳打ちをするお馴染みのムーブから、フォークソング“いちごみるく”を披露。一気にどんよりとした、しかし癖になるふたりだけの世界観が展開されていった。

以降はふたりのかけあいからの喧嘩(?)でひーとんの赤いタンクトップがズタズタになったりとお馴染みの光景が見られる一方で、普段のバナナマンのコント中にはあまり聴かれない歓声のなかでのパフォーマンスというのも新鮮だ。また楽曲のなかにはバンドの演奏をあしらうなどこれまでにないサウンドが聴かれる。そして赤えんぴつの〈弟〉でもある星野源のコメントVTRが流れたあとには、赤えんぴつのふたりもバンドのいるステージに移動し、ふたりが変わるきっかけになったという“自転車”を披露。

ここから本格的にバンドサウンドが加わって、フォーキーな赤えんぴつサウンドにポップな広がりが見られる。それに応じておーちゃんのボーカルはより情感豊かに響き、ひーとんのアコギもバンドと調和した素晴らしい音色を重ねていく。多くのミュージシャンが惚れ込む赤えんぴつの音楽が、色調も鮮やかになって耳に飛び込んでいく、実に感動的なパフォーマンスが次々と見られていった。

また中盤には、CMプランナー/クリエイティブディレクターの麻生哲朗が演出を手がけたミニドラマが流れ、俳優の中村倫也と黒木華が出演するという豪華なものとなった。ストーリーは作家の永井ふわふわの実体験をもとにした楽曲“よし子ちゃん”をモチーフにしたものとなり、2日目は“それを胸に”をモチーフとした、それぞれ異なるドラマが展開されていった。

初日の本編最後は昨年行われたバナナマン単独公演「bananaman live O」で初披露された“夢”をプレイ。武道館公演が決まったあとに作られたというこの曲、聖地のステージに立つおーちゃんとひーとんが夢を語る、ビターな哀愁も感じるその姿は、胸に迫るものがあった。