「パラサイト」「ジョーカー」等、2019年は貧困問題を主題とした映画が世界で同時多発的に現れたことで話題となったが、本作はその中でも直球勝負の一本。個人事業主のシステムが真綿で首を締めるように主人公とその家族を翻弄し追い詰めていく物語が、時にユーモアを交え軽やかに、しかし確固たる〈怒り〉をもって描かれる。監督はキャリア50年一貫して労働者問題や〈社会的弱者〉の側に立って映画を撮り続ける巨匠ケン・ローチ。危機に陥りながらも揺るがぬ〈家族愛〉。それは観客の心の救いになると同時に状況自体の救いのなさをも際立たせる。これぞ名人芸である。