響きが混濁しないで、詩情豊かな美しい高音の弱音と柔らかく優美な低音が響く。ハフはベーゼンドルファーのピアノを使用し速すぎないテンポで自然で流麗、そして力強さも備えたベートーヴェンを表現した。第4番の第1楽章や各曲のラルゴやアダージョの緩徐楽章が優れている。第5番「皇帝」では冒頭のカデンツァを弾き飛ばすことを戒め、楽譜の音を抑揚をつけてしっかり鳴らして耳に届けてくれる。第3楽章の中間部のピアニシモの壮絶な美しさも聴きどころ。この演奏に大きく貢献したリントゥ指揮フィンランド放送交響楽団の爽快でキレのあるリズム感と音に立体感が素晴らしい。