個人的に、ショパン作品で最も好きな“夜想曲”全曲に名演が誕生した。声高に叫ぶことなく、淡々と美音を紡ぐハフのピアノは流麗で静寂の世界を現出させる。弦を叩いて鳴らすのがピアノという楽器だが、打鍵を感じさせずピアノ全体が響いているような響きの音楽が作品にぴったりとはまる。技巧を誇ることなく静かに歌うハフは、前作のベートーヴェンのピアノ協奏曲全集に続く名演で、好調さを感じさせる。ハフにとって2011年録音の『ワルツ集』以来のショパンだそうだ。これはまだ未聴で、ぜひ聴いてみたいと思う。きっと技巧を凝らしたショパン演奏とは一線を画した味わいを伝えてくれることだろう。