務川慧悟は2012年第81回日本音楽コンクール第1位、2019年ロン=ティボー=クレスパン国際音楽コンクールピアノ部門第2位の実績を持ち既に内外で活躍中の若手。本アルバムはピアノ作品全曲演奏の経験を持つラヴェルがメイン。どの曲も粒のくっきりしたタッチ、淡い光が明滅する端正な語り口で描いたムラのない出来ばえ。なかでも“クープランの墓”は一見快活な楽想に潜む影を丁寧に映した名演。余白にはリストとバッハの作品を収録。前者のバラード第2番では動と静、明と暗のコントラストを鮮烈に打ち出した奥行きある音楽が聴けて、大型ピアニストへの飛躍を予感させる。