今年のサマーミューザは生音+生配信!
フェスタサマーミューザは東京・神奈川の主要オーケストラなどによる工夫された内容のコンサートをお手頃価格で楽しめるいわば日本版プロムス。本番以外にも開演前の室内楽コンサートやトークが盛り込まれ、〈みんな大好き夏音。〉のキャッチコピー通り、いまや関東のクラシックファンの夏の風物詩。本年もミューザ川崎シンフォニーホールで2020年7月23日~8月10日の日程で開催予定。時勢を考慮しオンライン鑑賞券と限定600席のホール座席券の2種類のチケットが用意された。たくさんのコンサートの中からいくつかを選りすぐって御紹介する。
中心はやはり2020年が生誕250年のベートーヴェンを取り上げたコンサート。
トップに挙げるのは本フェスタ初出演の群馬交響楽団が名誉指揮者・高関健の指揮で披露する交響曲第2番と第4番(8月1日)。地方オーケストラの草分けと言われる群馬交響楽団の創立は1945年の敗戦直後。焼け跡から立ち上がろうとする人々の意思が結実して生まれた。厳しい社会状況のなか楽団は苦しみながらも学校や施設訪問を続けつつ次第に成長。1947年にアマチュアからプロとなり、1949年には財団法人化する。この歩みは1955年の映画「ここに泉あり」(今井正監督)で描かれ、大きな反響を呼び楽団の存在を全国に知らしめた。そして現在、日本の主要オーケストラの一つになった群馬交響楽団がベートーヴェンに通じた高関健の指揮で節目の年に奏でる2曲は私達の背中を押す力強いメッセイジとなるはず。
楽壇の長老、秋山和慶は約60年共演を重ねる東京交響楽団と交響曲第5番、第6番を披露(7月30日)。長年演奏、教育両面で日本の指揮界やオーケストラの発展に尽力し、今なお旺盛に活動中の重鎮がどんな“運命”“田園”を響かせるか。心して聴きたい。
8月2日(尾高忠明指揮、東京フィルハーモニー交響楽団)は2019年ミュンヘン国際コンクールチェロ部門優勝の佐藤晴真と戸澤采紀(ヴァイオリン)、田村響(ピアノ)によるトリプル・コンチェルト。チェロが難しい作品ゆえ佐藤の切れ味鋭いテクニックや深い輝きを持つ音色が存分に生きるだろう。後半はチャイコフスキーの交響曲第5番。
久石譲:新日本フィルハーモニー交響楽団(8月4日)も注目。冒頭に自作の“Encounter for String Orchestra”を置き、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:豊嶋泰嗣)と交響曲第7番が連なる。久石譲指揮のベートーヴェンといえば交響曲全集のCD(オクタヴィア・レコード)が多くのクラシック・ファンをうならせた(本誌Vol.144の俵孝太郎コラム〈クラシックな人々〉にも登場)のは記憶に新しい。〈ベートーヴェンは、ロックだ!〉を掲げ、リズムの舞いや管打の打ち込みが冴える演奏スタイルに第7番はピッタリ。暑さも消し飛ぶスパイスのきいたサウンドが聴けるだろう。
そして3曲のピアノ協奏曲を黒木雪音(第1番)、阪田知樹(第4番)、清水和音(第5番)とそれぞれ違うピアニストで聴ける贅沢なコンサートが行われるのは8月6日。若手実力派、ヴェテランの持ち味を楽しめるはず。共演は渡邉一正指揮の神奈川フィルハーモニー管弦楽団。
もちろんベートーヴェン以外にもワクワクするコンサートが並ぶ。
恒例の〈サマーナイト・ジャズ〉は7月26日。国府弘子(ピアノ)と井上陽介(ベース)がダブルリーダーを務め、40年以上の芸歴を誇るジャズ・ヴォーカルの第一人者、阿川泰子がゲスト出演。日頃の疲れを癒す大人の時間を味わえそう。
下野竜也:読売日本交響楽団(7月29日)のコンサートには売れっ子ピアニストの反田恭平と務川慧悟が登場。2人はプーランクの協奏曲を弾くほかサン・サーンスの“動物の謝肉祭”のピアノパートも担当する。まさに〈フェスタ〉ならではの趣向。
他にも多種多様な演奏会が目白押しのフェスタサマーミューザ。是非オンライン鑑賞も活用して音楽を聴く喜びに浸って頂きたいと思う。
LIVE INFORMATION
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2020
会期:2020年7月23日(木・祝)~8月10日(月・祝)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
演数:全17公演
オーケストラ公演13(うち昭和音楽大学公演1)/オルガン公演1/ピアノ公演2(うちこどもフェスタ1)/ジャズ公演1
https://www.kawasakiーsymーhall.jp/festa/hg