インディー・ナードと文学少女が出会う

――結成当初のLaura day romanceは鈴木さんと川島さん、井上さんの3人組だったそうですね。早稲田大学で出会ったとか。

鈴木「そうですね。まずは僕から川島に声をかけて、そのあとかっちゃん(井上)がやっていたバンドが活動休止したので、一緒にやろうと誘いました」

――鈴木さんと川島さんはどんな感じで意気投合したんですか?

鈴木「大学で話しかけたら、高校時代まで出会ってこなかった音楽オタクで、すごいナードなヤツだと思って」

川島「僕もそう思いましたね、大学ってすげえなって(笑)。最初、くるりとヴァンパイア・ウィークエンドの話をしたんだよね。お互いのiPodとウォークマンを見せあいっこしながら」

――そこに井上さんが合流すると。他のインタビューによると、松任谷由実さんやチャットモンチーがお好きだったそうですが。

井上「そうですね。この2人に洋楽の良さをガンガン教えられるまでは、主に邦楽を聴いていて。ユーミンは小さい頃から家でずっと流れていたし、チャットモンチーは小学4年生の頃に『耳鳴り』(2006年)が出て、狂ったように聴き続けていました(笑)」

――Laura day romanceを知るうえで井上さんのパーソナリティーは重要な気がするので、生い立ちの話も聞かせてもらえますか。どんなお子さんだったとか。

井上「えっと……正直に言うと、周りには嫌われてたと思うんです。そんな好かれるタイプではないというか」

鈴木「いきなりどうしたんだ(笑)」

井上「我が強いのと、やりたいことが多すぎたんですよ。小学校では合唱、中学でも吹奏楽部とかいろいろやっていたけど、友達に対しては〈ごめん、今日は1人で遊ぶから!〉みたいな。そんな感じだから、1人でいた思い出のほうが多い気がします」

――自分の世界を大切にしてそうですよね。読書もお好きらしいですし。

井上「小さい頃は青い鳥文庫とか、〈ハリー・ポッター〉みたいなファンタジー系、あとはホラー小説も好きで、江戸川乱歩シリーズとかをずっと読んでいました。そのあと中学生くらいの頃に、綿矢りささんの『蹴りたい背中』に衝撃を受けてから、女性作家の描く物語にズブズブ嵌り込んで。吉本ばななさんとか江國香織さん、山田詠美さんとかが大好きです」

――そんな文学少女が、鈴木さんや川島さんと一緒に音楽をやることにした理由は?

井上「(周囲の人間のなかで)群を抜いて音楽を好きだし詳しいし、2人とやったら面白いだろうなと思って。あと誘われた時に、迅くん(鈴木)が作った“night flight”って曲を聴かせてくれて。それがめちゃくちゃ良かったから、〈やる!〉って即答しました」

2018年のEP『because the night』収録曲“night flight”
 

――逆に、鈴木さんはなぜ井上さんを誘うことにしたんですか?

鈴木「周りに女性ヴォーカルはたくさんいたんですよ。でも、かっちゃんはレベルが違いました。すごく特別な声をしてるなって。そこに可能性を感じたんです」

井上「そういえば私が誘われる前に、みんなでお酒呑みながらアコースティックで演奏する会をやったよね。その時、私は弾き語りで……何の曲やったんだっけ?」

川島「(椎名林檎の)“ありあまる富”じゃない?」

井上「そうだそうだ。あのとき、他の人は酔っ払っててあんまり聴いてなかったけど、迅くんはいちばん前でちゃんと聴いてくれてたんだよね。それがすごく嬉しかったし、いま思えばそこから誘われたのかな、みたいな(笑)」

――自分の歌には自信ありました?

井上「全然! 難しいことを考えず、好きなように歌っているだけです」

――その飾らない歌声が、それこそアメリカン・ポップスへの志向とも噛み合ってる気がします。

鈴木「そうですね。柔らかくて温かい」

川島「アクがないし、嫌いな人はいないと思う」

――その後、しばらくして磯本さんが加入するわけですよね。

磯本雄太(ドラムス)「そうですね、最初はサポートとして誘われて。ただ当時、僕はインディー寄りの音楽をそんなに聴いたことがなかったんですよ。当時好きだったのはミスター・ビッグですね。高校生のときは、楽器もスポーツみたいな競い方をしてました(笑)」

川島「僕のなかでは〈TOTOの人〉ってイメージです」

磯本「いちばん好きなドラマーを訊かれたら(TOTOの)ジェフ・ポーカロと答えるくらい(笑)。で、大学に入ってからはパンク、R&B、ソウルとかに手を出していきました」

――他の3人と趣味が全然違うじゃないですか!

磯本「そう、被ってないんですよね。最初は〈なんで誘われたんだろう?〉と思ったくらいで。でもとりあえず参加してみたら、インディー独自のドラム・フレーズの使い方とか、僕の知らない世界が楽しくなってきて。そこから正式加入することになりました」