私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

【アーティストと音楽関係者が選ぶ〈コロナ時代の1曲〉】記事一覧はこちら


 

(左から)磯本雄太(ドラムス)、井上花月(ヴォーカル)、鈴木迅(ギター)、川島健太朗(ギター/ヴォーカル)

Laura day romance

2017年に結成。2018年にファーストEP『her favorite seasons』を発売するやいなや各店舗で売り切れが続出し、〈出れんの!?サマソニ!?〉に選出され、〈SUMMER SONIC 2018〉に出演。2019年に開催した自主企画〈Blanket ghost Thanksgiving〉はshowmore、ベランダを招きソールド・アウト。2020年6月にファースト・フル・アルバム『farewell your town』をリリース、9月に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEでレコ発配信ワンマン・ライブを開催。洋楽に影響を受けつつも日本的なポップさを持ち合わせ、アートや映画のようないつの時代も愛される音楽を奏でる。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

井上花月(ヴォーカル)が選ぶ1曲
Phoebe Bridgers “Savior Complex”(2020年作『Punisher』収録)

ずっと女性ヴォーカルに傾倒していました。歌うこと、その声を出す楽器としての自分、について見つめなおしていた時だったので、おなじ女性たちの声がどんな風に生まれ、ひとの心にふれていくのか知りたかったのかもしれないです。

その中でもフィービーの歌声はとくに心地よく、この安心感はなんだろう、とか、繊細でちからづよくて、でも震えた声の出し方はどうやって、とか、さいしょは思ってるのに、聴いてるうちになんだかどうでもよくなってしまうのです。その感じがとても好きです。この曲は数あるお気に入りのうちの一曲。どの曲もそうですが歌詞も最高です。

 

川島健太朗(ギター/ヴォーカル)が選ぶ1曲
Frank Ocean “Self Control”(2016年作『Blonde』収録)

『Blonde』の中で最も好きな曲を選びました。Self Control、すなわち〈自制〉。コロナ禍以降、思うようにバンド活動も出来ず精神的に苦しいタイミングが多々ありましたが、そんな時に決まって聴くアルバムが『Blonde』でした。フランク・オーシャン当人が楽曲に込めた感情とは違うのかもしれないけれど、この極めてパーソナルなトラックで溢れたアルバムを聴くことで、結局自己の悩みや苦痛は他の誰でもなく自分自身によってでしか解決できないと気付かされました。おびただしい情報が行き交うこの現代において他人が羨ましくなって、僻んでしまうことが自分には多々ありますが、結局は自己をSelf Controlして見つめ直すしかないのだと思います。

 

鈴木迅(ギター)が選ぶ1曲
Atlas Sound “Praying Man”(2011年作『Parallax』収録)

コロナ禍になってからしばらく経つと、テレビやインターネットをストレスの種と認識して距離を置くようになった。〈そんな何もかもに向き合わなくていいよ〉って言われるような音楽が欲しかったのでアトラス・サウンドの『Parallax』ばかり聴いてました、僕が落ち込んでる時に蹴りを入れてくれって歌詞、最高に情けない。聴いてると焦点が合うようなボヤけるような不思議な感覚、このアルバムとシド・バレットのアルバムにしか感じないかもしれません。

 

礒本雄太(ドラムス)が選ぶ1曲
サニーデイ・サービス “春の風”(2020年作『いいね!』収録)

いつもと比べ物にならない程家にいる時間が増え、私たちの殆どが力を入れたことは〈音楽を聴く〉ということでした。宅録で自主制作した音源や〈Stay Home〉の叫ばれたコンテンツがSNS上に溢れ、世の中がどこか知らない場所へ行ってしまっている感覚に陥るような毎日。リスナーとしては、それはそれで楽しいけれど、プレイヤーとしての自分はどこかで焦っていました。仕事無かったし。そんな中で、〈音楽をやりたい〉という気持ちを純粋なまま保つことって難しかった。止まらずに進み続けることは悪いことではないけれど、自分がもともといた場所を再確認し、焦らず、そこに立ち返ってみる。原点回帰、とまでは言わないけれど、そういう気持ちは日頃から持っていていいんだな、と感じさせてくれた一曲です。

 


RELEASE INFORMATION

“東京の夜”

リリース日:2021年6月9日
フォーマット:デジタル・シングル
配信リンク:https://orcd.co/tokyonoyoru

 

LIVE INFORMATION

Swich vol.6

2021年8月8日(日)東京・表参道 WALL&WALL
開場/開演:17:00/17:30
出演:Laura day romance/For Tracy Hyde/ステレオガール/peanut butters
前売り/当日:2,500円/3,000円(いずれもドリンク代別)
前売り予約受付フォーム:https://forms.gle/xsoStmDUYqSYMjqs8
http://wallwall.tokyo/schedule/210808switch/

 

真夏の真昼のVIVA YOUNG! 3DAYS!!「楽しい夕べに」

2021年8月14日(土)東京・下北沢 BASEMENTBAR
開場/開演:11:45/12:10
出演:Laura day romance/曽我部恵一
オープニング・アクト:hyou
DJ:片山翔太(BYE CHOOSE)
MC:クラヤマナオキ
料金:3,200円(ドリンク代別)
チケット窓口:https://t.livepocket.jp/e/nv_0r