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インタビュー

ガス・ダパートン(Gus Dapperton)の新作『Orca』とユース・カルチャーの深い関係

ドラマ/映画、ファッション、スケートへの愛を明かす

ガス・ダパートン(Gus Dapperton)の新作『Orca』とユース・カルチャーの深い関係

ノスタルジックなサウンドと類まれなメロディーセンス、そしてユニークなファッションによって新たなポップ・アイコンとして注目されるガス・ダパートン。97年生まれ、Z世代の彼は、デビュー・アルバム『Where Polly People Go To Read』と、ベニー(BENEE)とのTikTokヒット“Supalonely”で躍進を遂げた。

そんなダパートンが、早くも2作目『Orca』をリリースする。シンガー・ソングライターとしての深みをぐっと増し、ユース・カルチャーとの深い関わりを感じさせる『Orca』。その創造力の源とは? 映画にNetflixやHBOのTVシリーズ、ファッションなど、主に音楽〈以外〉のポップ・カルチャーからの影響をインタビューで探った。 *Mikiki編集部

GUS DAPPERTON 『Orca』 Gus Dapperton/BEAT(2020)

 

痛みや辛さを乗り越えるための『Orca』

「僕にとって、このアルバムをつくることはセラピーだったんだ」。

自身の新作をそう紹介してくれたのは、シンガー・ソングライターのガス・ダパートン。ニューヨーク州出身の彼は、このセカンド・アルバム『Orca』が完成にいたるまでの数年間をツアーに捧げてきたという。「以前とは状況が変わった」。ヨーロッパやアジア各国のステージにも立ち、そのたびに喝采を浴びてきたダパートンは、慌ただしかったツアー生活をそう振り返る。

「ツアー中は睡眠不足で食生活も不健康になるし、ショーの出来によっては高揚したり落ち込んだり、色んな意味で気持ちのアップダウンが激しくなる。だから、ツアーが終わったあとはすぐスタジオに入らなかった。痛みとか、辛い時期を乗り越えることとか、今回はそういうテーマにも触れているから、少しだけダウン・タイムが必要だったんだ」。

 

ロックンロール・シンガーとして惹かれるのはリアム・ギャラガー

演奏からミキシングまで自ら手がけたファースト・アルバム『Where Polly People Go To Read』は、ホーム・レコーディング然としたローファイなプロダクションが特徴的だった。一方でステージに立つ時のダパートンは、とにかくパワフル。そのパフォーマンスはデビュー作のベッドルーム・ポップ的なイメージを覆すほどにエナジェティックで、今作『Orca』にはツアーで鍛えられたバンド・アンサンブルの成長ぶりも収められている。

「僕らはロックが好きなんだ。僕らの音楽は超ロックではないけど、ロックを演奏するのは大好きなんだよ」。

『Orca』収録曲“First Aid”“Post Humorous”のライブ映像。ガス・ダパートンの自宅で撮影されたもの

昨年の来日公演では“Twist And Shout”をカヴァーし、ジョン・レノンばりの嗄れたシャウトも披露していたダパートン。そんな彼のフェイヴァリット・ロック・シンガーは誰なのだろう?

「リアム・ギャラガー。僕は生まれつき綺麗な声を持ってないから、歌に関しては特徴のあるトーンで勝負しないといけないんだけど(笑)、リアムにもそれを感じるんだ。彼は特に広い音域がをだせるわけでもないし、ファルセットが得意なわけでもない。でも、彼にはあの素晴らしいトーンがあるんだよね。リアムの歌声を聴いていると、ヴォーカルは音域や声の美しさがすべてじゃないんだなって思える。ハートを込めること。なによりもそれが大切なんだなって」。

 

「セックス・エデュケーション」「クィア・アイ」「ドニー・ダーコ」……映画/ドラマからの影響

ほとんどの楽曲をアコースティック・ギターで書いたという『Orca』は、ダパートンの内省がダイレクトに綴られた作品だが、一方でそれぞれのリリックにはストーリーテリングも読み取れる。どうやらそこには『Where Polly People Go To Read』同様、さまざまな映画/ドラマの影響も反映されているようだ。

「今回のアルバムはどの映画というより、映画そのものに影響を受けていると思う。実際、“Medicine”“Antidote”を書いている時はストーリーを想像していたし、意識的に映画っぽくしようとしていたからね」。

『Orca』収録曲“Medicine”

古今東西の名作映画をオマージュした“World Class Cinema”のミュージック・ビデオを例に挙げるまでもなく、ダパートンの映画好きはいまや広く知られるところだ。では、具体的に彼はどんな映像作品から影響を受けてきたのだろう。

「ドラマだったらNetflixの『セックス・エデュケーション』(若者たちの性の悩みを題材とした青春ドラマ)、HBOの『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』(原作は弟が精神疾患を抱える双子の苦闘を描いた小説『この手のなかの真実』)。笑えるやつだと『ラリーのミッドライフ☆クライシス』(ラリー・デヴィッド脚本/主演のシットコム・シリーズ)。アニメならSF作品の『リック・アンド・モーティー』(アルコール依存症の天才科学者が10代の孫と異次元を旅するSFコメディー)は、知的なところが大好き。あと、『クィア・アイ』(様々な分野のスペシャリストであるゲイの5人組が悩める人々を後押しするリアリティー番組)も面白いよね。『アバター 伝説の少年アン』(アバターの少年が戦争を終わらせるべく奮闘する冒険アニメ)もはずせないな」。

Netflixオリジナル・シリーズ「セックス・エデュケーション」「クィア・アイ」予告編

さらにダパートンは自分の人生に影響を与えた映画として、精神が不安定な高校生ドニーの身に起こる不可解な出来事を追った「ドニー・ダーコ」、石油産業の利権争いを背景に裏切りや欲望を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」、崩壊しかけていた家族の再生を描く「リトル・ミス・サンシャイン」、17歳の少年と24歳の大学院生が惹かれ合う様を描いた「君の名前で僕を呼んで」、10代の複雑な恋愛模様を描いた青春群像劇「パロアルト・ストーリー」の5作をチョイス。こうして並べてみると、メンタル・イルネスやジェンダー間の問題を扱ったヒューマン・ドラマが目立つ。ここにはダッパートンの内面的な痛みが描かれた『Orca』との共通点も見出せるかもしれない。

「特に青春ものはよく観るんだ。実際、僕はいろんな映画やMVから確実に大きな影響を受けてると思う。色、形、ライティング、スタイル……とにかくインスピレーションが沢山詰まってるからね」。

2013年の映画「パロアルト・ストーリー」予告編。監督はジア・コッポラ
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