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ブルース・スプリングスティーン ©Robbie Documentary Productions Inc. 2019

マーティン・スコセッシ ©Robbie Documentary Productions Inc. 2019

エリック・クラプトン ©Robbie Documentary Productions Inc. 2019

 映画では当時の映像や写真が数多く登場するが、やはりウッドストック時代のものが素晴らしい。農家の一室で楽しそうに演奏している映像からは、音楽と生活が溶け合っていたことが伝わってくる。フォトセッションで撮影された写真の佇まいは、まさに〈アメリカーナ〉。サマー・オブ・ラヴの華やかさとは無縁のダウンホームな雰囲気が漂っていて、ブルースやカントリー、ゴスペルなど、ルーツ・ミュージックを掘り下げていた彼らの姿勢が、その佇まいからも伝わってくる。ビッグ・ピンクは彼らの理想郷だったのだ。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。

 アルバムが話題を呼び、順調に音楽活動を続けるなかで、ロビー以外のメンバーはアルコールやドラッグを楽しむようになる。一方、ロビーは結婚して子供も生まれ、音楽を職業として続けるために、毎日ピアノに向かって曲作りをする。大人として振る舞うロビーと、大人になれないメンバーとの間に溝が生まれていく。やがてロビーは大物プロデューサー、デヴィッド・ゲフィンに誘われて、セレブが住むマリブに家族と移住。他のメンバーはウッドストックを離れようとせず、ザ・バンドは分裂してしまう。ビッグ・ピンクはザ・バンドにとって学生寮のように心地良いアジール(聖域)だった。ロビーは前進するために、そこを〈卒業〉することを決意。実質上、バンドの解散ライブとなった〈ラスト・ワルツ〉を企画するが、それはザ・バンドへの決別であり、彼にとっての卒業式だったのかもしれない。そして、ザ・バンドは解散。5人はバラバラになってしまう。