女優として、常に様々な表情を魅せる小西真奈美。その表現力の豊かさは、ミュージシャンとしても健在だ。2年ぶりのアルバムとなる『Cure』は、亀田誠治、後藤正文、堀込高樹、Kan Sanoという4人のプロデューサーを迎え、新たな彼女に出会える1枚に仕上がっている。
好きな音楽の話を皮切りに、今作にかける思いや作品に通じる小西のしなやかなマインドについて語ってもらった。
表現者になっても純粋なリスナーのまま
――小西さんは、普段どのような音楽を聴くんですか。
「邦楽も好きですが、大人になってから聴いているのは洋楽が多いです。ずっと好きなのは、リアーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。大人になって最初に買ったCDは、TLCとエリカ・バドゥでした」
――最近お気に入りの1枚をあげるとしたらなんでしょうか。
「ディスクロージャーの『ENERGY』です。コロナ禍の初期はスローダウンした世界に合わせてゆったりした気分だったのですが、夏が近づくにつれて盛り上がりたい気持ちになってきて。行き場のない思いを抱えていたタイミングで、ディスクロージャーのアルバムが発売されました。私のなかで大ヒットしちゃって、ずっと聴いていました(笑)」
――音楽遍歴をうかがっていると、聴いている音楽がご自身のクリエイティヴに強く反映されるタイプではなさそうですね。
「0から100まで自分の中から出てきているとは思わないので、影響を受けている部分は絶対にあると思います。だけど直近で聴いたものが、すぐ制作に反映されるっていうのはあまりないかもしれないですね。私の場合は、聴いてよかったら踊っちゃう(笑)。作る側になっても、普通にリスナーのひとりなんですよね」
――〈クリエイティヴに活かそう〉と思って聴くのではなく、あくまでもリスナーのひとりとして音楽を受け止めていると。
「音楽にも限らず、なんでもそうなんです。映画を観ていても、カット割りや役者さんの演技は後回しで、純粋に感動して号泣しちゃう(笑)。
以前は、そんな自分がコンプレックスでもあったのですが、〈純粋に楽しめていいよね〉って周りの方に言っていただいてから、〈いいことだよな〉って思えるようになりました」
――素敵なことだと思います。小西さんは鼻歌で作詞・作曲をされるそうですね。
「はい、基本的には。リズム・マシーンを鳴らしたりピアノを弾いたり、音先行で考えようとするときもありますが、あまり〈YES〉と思えなくて。技術的なことが気になり、自由に作れなくなっちゃうんですよね。なので、今はまだ鼻歌ベースでいいかなって思っています」
音楽を聴くことも作ることも〈Cure=癒し〉だった
――『Cure』はミュージシャン・小西真奈美として、すごく素敵な1枚になりましたよね。
「〈女優さんが歌ってるんでしょ〉と思う方がいても全く問題ないんですけど、1アーティストと見ていただくと、スタートラインに立てた感じがして嬉しいです。聴いていただいた方の言葉を聴いて、初めて〈よかった〉と自分で思えるので」
――アルバムを作ることが決まったのは、いつ頃だったんですか。
「話があがったのは、去年の年末くらいです。でも制作自体は、もう少し後になる予定でした。本来であれば舞台があるはずだったので、それを終えてからゆっくり取り掛かることになっていたんです。ところがコロナ禍が起きたことにより、いろいろ変わっていった感じで」
――コロナ禍での制作になったと。
「そうです。プロデューサーさんともリモートでやりとりをしながら制作を進めていきました。外出自粛になったときは、いつまでその状況が続くかわからなかったので、レコーディングができるか不安でしたね。結果的に、9月までずっと作っていったんです」
――アルバム・タイトルの『Cure』には、どのような思いがこめられているのでしょうか。
「〈自分にとって純粋に音楽ってなんだろう〉って、考えた答えが〈Cure〉だったんです。子どもの頃から音楽には、本当に助けられてきました。背中を押してもらったり、生きるヒントをもらったり、寄り添ってもらったり。〈音楽を聴くこと〉によって、たくさん救われてきたんです。
また、コロナ禍で制作を進めるうちに、〈音楽を作ること〉も自分にとってはCureになるのだと実感したこともあって。このアルバムが聴いてくださった方にとって、Cure的なものになったらいいなと思っています」
――4人のプロデューサー陣も、とても豪華ですよね。
「亀田さんは、2017年に“君とクリスマス”と“クリスマスプレゼント”をご一緒したご縁です。Kan Sanoさんと堀込(高樹)さんは、スタッフさんから〈どうですか〉とご提案いただきました。おふたりには全くお会いできず、リモートとメールのやり取りだけで制作を進めていったんです。ゴッチさんは私がラジオ番組をやっていた時にゲストで来てくださって、〈いつかご一緒できたら嬉しいです〉とお伝えしていたので、今回思い切ってオファーしたらOKしてくださいました!」