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インタビュー

小西真奈美『Cure』4人のクリエイターと表現したシンガー/ソングライターとしての等身大

©MITSUO SHINDO

歌の世界でも際立つ唯一無二の透明感——4名のプロデューサーと織り成した、シンガー/ソングライターとしての等身大の表現とは?

 小西真奈美の未知なる魅力が満載のニュー・アルバム『Cure』。女優として確かなキャリアを積んできた彼女が個性的な声と雰囲気を持ち、言葉選びのセンスに長けたシンガー・ソングライターであることは、KREVA全面プロデュースのデビュー作『Here We Go』(2018年)において認識していたけれど、4人のプロデューサーと組み、自身が作詞/作曲したオリジナルとカヴァーを1曲ずつ制作するというオムニバス映画のような構成の新作を聴いて、どの局面でも刺激的で豊かな物語性をしっかり提示してみせる彼女の能力にかなり驚かされたもの。そんな充実作のレコーディングのひと幕を振り返ってもらおう。

 「椎名林檎さんの“ギブス”のカヴァーを、原曲をアレンジした亀田誠治さんにプロデュースしてもらったのですが、〈これまでこの曲のカヴァーのオファーを何度か貰ってきたけど、真奈美ちゃんならいいかなって思った〉と言ってくださって。それはもう感動と同時にかなりのプレッシャーで、レコーディング前夜に悪夢を見たほどでした(笑)。二人ともこの曲が好きすぎるから歌入れでお互い熱量が上がりすぎてしまい、何度も冷たい水を口にして気持ちをクールダウンさせました」。

 亀田の他にも、Gotch Bandの面々が生み出す荒々しいバンド・サウンドの渦に彼女を放り込んだ後藤正文、打ち込みと生音感を組み合わせて不可思議な色彩を添えてみせる堀込高樹、雑多な要素を混ぜ合わせた奥行きのあるサウンドで鮮やかな模様を浮かび上がらせるKan Sano、と4者4様のサウンド・アプローチが実践されているが、それぞれの持ち味を吟味しつつ、理想的な音色を選別していく小西のセルフ・プロデュース力の高さをどの曲からも読み取れるところがおもしろい。

 「曲を作る時は、いつも頭の中で完成形が鳴っているんです。役を演じる時も頭にまず映像が浮かんできて、それを頼りにお芝居を組み立てていくことが多い。ただ、演出家や周りの役者さんと呼吸することで全然違うキャラクターになることもあるし、一回組み立てたものをゼロにしてから現場に入るようにしています。それは今回も同じで、現場での呼吸を大事にしつつ、そんな音があるんだ!と発見する喜びを楽しみながら作り上げていきました」。

 演技/音楽という表現の方法は異なるものの、彼女の中でそこに意識的な切り替えはないという。

 「不思議なぐらいオートマティックに切り替わっていて、こうするぞ、ってギアを入れるわけでもないんです。自分で書いた曲とは長く付き合っているので、〈こう歌ってみるぞ〉みたいに演じるような感覚はまったく湧かないですね。その作品が産声を上げた最初の瞬間から知っていることなんて、お芝居の場合はないですから。だから他のフィルターを通す必要が何もないし、音楽は〈私〉という人間をいちばん感じてもらえると思います」。

 魅惑のウィスパー・ヴォイスを十二分に活かし、自身の奥にあるさまざまな感情を丁寧に掬い上げてみせるオリジナル曲もさることながら、星野源“Ain't Nobody Know”や映画「はじまりのうた」挿入曲の“Lost Stars”などカヴァー群の仕上がりもナイスだ。なかでも、中学の頃に出会ってからのフェイヴァリットだというジャネット・ジャクソンの名バラード“Again”がピカイチで、歌の端々から〈音楽が好きでよかった!〉という切なる思いが滲んでくる点も感動的だったりする。

 「小さい頃から今日まで音楽を聴かなかった日は一日もないような気がします。音楽がない人生を想像することができない。初めて自分でチケットを買って観たライヴの感動はいまもまったく色褪せないですし。これまでずいぶん背中を押してもらって、生きるうえでのヒントを貰いましたが、願わくは私の音楽もそういうものでありたい。ということで、今回『Cure』というタイトルを付けました。もちろん私の曲を気に入ってくれたら嬉しいですけど、それをきっかけに音楽の広い世界を知り、音楽が手助けしてくれる力を知る人が増えたとしたら、こんなに幸せなことはないですね」。

 シンガー・ソングライター、小西真奈美の言いたいことのほとんどがここに入っている――そんな表現も過言ではない等身大のポップ・アルバム『Cure』。なお、彼女が初めてチケットを買って行ったライヴは、アジカンだったということを最後に記しておこう。

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