赤い公園と言えば、複雑で、奇抜で、轟音なのがいいところだと思っていたけど、それは一面的な印象でしかなくて、もしかしたら本人たちはとっくの昔に、自分たちのもっと違う良さを見つけていたのかもしれない。その良さとはきっと、石野理子のヴォーカルを中心に据えた、どストレートなポップスである、ということなのではなかろうか(似たことは『THE PARK』のレビューにも書いた)。今作に収録された3曲は、それぞれドラマのオープニング曲、エンディング曲、劇中曲のセルフカヴァーであることを差し引いても、あまりにも実直かつストレートなポップスで、そんな楽曲で勝負しているところにバンドの新たな決意を感じてしまうのだ。

作詞作曲を担う津野米咲は、以前自身のTwitterのプロフィールに〈目指せ!じぇいぽっぱー!〉と記していた。ああそうか、彼女はロックでもオルタナでもシューゲイザーでもない、〈多くの人に響くポップス〉としてのJ-Popをずっと作りたかったんだな。それが今作を聴いた印象だった。

そして、ドラマのために1年以上前に作られた曲であるにもかかわらず、それらの中に含まれた〈最後くらいかっこつけたい〉(“オレンジ”)や〈それじゃ、またね〉(“pray”)というフレーズを聴いた多くの人は、まるで彼女が突然の別れを予期していたかのように感じて、驚きを覚えることだろう。前体制ラスト・シングルの“journey”の時も同じようなことを思ったが、時にこのようなシンクロニシティを生じさせてしまう音楽というものの不思議さを今もまた感じると同時に、こういう気持ちを湧き起こせるのが〈多くの人に響くポップス〉なのかなとも思う。

今作のリリース前、年末の「COUNTDOWN JAPAN 20/21」への出演を発表した赤い公園。偉大な〈じぇいぽっぱー〉の遺志は、きっと残る3人のメンバーが受け継いでいってくれることだろう。