津野米咲の書くポジティヴな歌詞は、ただのポジティヴじゃないところがいい。ネガティヴに陥りやすい僕らは、楽しいことと嫌なことが同時にあったとしても、どうしても負の感情のほうが勝ってしまう。でも津野は、おそらく自身もネガティヴに陥るのを何度も経験しているからこそ、そこから這い上がる術を描くことができる。(赤い公園の“KOIKI”や“NOW ON AIR”といった楽曲しかり、SMAP“Joy!!”といった提供曲しかり。もちろんそうでない歌詞もあるが)
ヴォーカルが脱退するという、それだけで一見ネガティヴに捉えられそうな出来事を経験したバンドが新体制になって最初にリリースする楽曲は、外野からも、そして自分自身からも発せられるマイナスなワードを、〈愛〉を持ってプラスに変換するという最強のポジティヴ・ソング。1番のAメロでは〈外野からの声〉、2番のAメロでは〈内面からの声〉にそれぞれ向き合う自分を描き、サビでは、1番は〈日中〉、2番は〈夜分〉にどうやって一息つくかを描くという対比もバッチリで、内外/昼夜、いつでもどこでも向かうところ敵なしの姿が生まれ変わったバンドにも重なるようだ。リーダー・津野が〈この曲は、凛として日々を過ごすための、ちょっとしたお守りのようなものです〉と表現した通り、バンドもリスナーも、ネガティヴに陥りそうになった時はおまじないのようにこの曲のことを思い出すだろう。
そしてそういった魔法の呪文を純真無垢に力強く歌い上げる石野理子のヴォーカルと、サビでグングン上昇していくギター、歪んでブリッブリのベース、疾走感あるドラムスが組み合わさって、バンドが再スタートを決めるのに相応しいナンバーに仕上がっている。