大阪在住の3人組ロックバンド、ハンブレッダーズ。ファースト・フル・アルバム『ユースレスマシン』でメジャーデビューを果たし、表題曲が全国ラジオオンエアチャートで第1位にランクインするなどバンドが着実に注目を集めはじめている中、全国流通作品として初のシングルをリリース! そこでメンバーの3人に本作の裏側を語ってもらった。

2020年2月にファースト・フル・アルバム『ユースレスマシン』でメジャーデビュー。思春期の感情の揺れ、音楽とバンドに対する強い思いを反映させた歌、シンプルにして生々しいバンドサウンド、そして、シンガロング必至のメロディーによって、リスナーの幅を大きく広げたハンブレッダーズ。アルバムリリース直後からコロナ禍によりワンマンツアーの中止という事態に見舞われた彼らは、急遽、配信シングル“ライブハウスで会おうぜ”をリリースし、バンドキッズ、ライブハウス関係者を中心に大きな反響を集めた。

ムツムロ アキラ(ヴォーカル、ギター)「“ライブハウスで会おうぜ”は、ライブハウスの人たち、レーベルや事務所のスタッフなど、顔を知っている人たちを思い浮かべながら書いた曲ですね。作ったときは〈こういう曲をリリースして、またライブハウスの人たちが叩かれないだろうか〉という心配もあったんですけど、ベースのでらしが〈この曲はいま出したほうがいいんじゃないですか?〉と言ってくれて、スタッフのみなさんも協力してくれて。お世話になっている方々に〈曲を通してメッセージを出してくれてありがとう〉と言ってもらえて嬉しかったです」

でらし(ベース、コーラス)「ここまで直接的なメッセージの曲を出せるのは、ハンブレッダーズしかいないと思うんです。バンドのキャラもあるし、自分たちが叩かれても叩かれなくても、(コロナ禍で)感じていることを曲にして出すべきだなと。この曲で救われた気持ちになる人も必ずいると思ったし」

木島(ドラムス)「今まで応援してくれてた人たち、お世話になっているライブハウスの人たちに〈こんな曲は……(リリースしないほうがいい)〉と言われるのがいちばんダメだと思ったんですよね。なのでMVの撮影は馴染みのあるライブハウスを使わせてもらったり、リリースするときにムツムロが曲に関するコメントを出したりして。丁寧に届けられて良かったです」

でらし「2020年の春から夏にかけて、ライブが出来なくなって、〈バンドも一生できないんじゃないか〉と思うこともありました」

木島「ツアーが中止になって、『ユースレスマシン』がどう受け止められたかが分からなくて」

とメンバーそれぞれに不安を抱えながら過ごした2020年。そんな閉塞感を打ち破ると同時に、リスナーの気持ちを強く鼓舞してくれるのが2021年1月20日にリリースされる『COLORS』だ。

ハンブレッダーズ 『COLORS』 Toy's Factory(2021)

 表題曲“COLORS”(TVアニメ「真・中華一番!」第二期エンディング主題歌)は、ハンブレッダーズらしさがたっぷり注ぎ込まれたアッパーチューン。心地よい疾走感をたたえたバンドサウンド、親しみやすさと解放感を併せ持った――つまり、聴いたそばから一緒に歌いたくなる――メロディーライン、そして、日常の中にある〈ささやかな彩り〉を大事にしながら、前を向いて生きていく決意を描いた歌詞が一つになったこの曲は、メジャーというフィールドに進む時期の思いが反映されているという。

ムツムロ「“COLORS”はコロナの前に書いた曲で、〈メジャーデビュー1発目のシングル〉に向けた心境の変化みたいなものが込められていて。自分たちはずっとリリースとツアーを続けてきて、それはメジャーになっても変わらないし、地続きではあるんだけど、〈新しいフィールドでがんばっていこう〉という気持ちもあったので。自粛期間中に“COLORS”を聴いて、〈自分でこんな曲を書いてるんだから、がんばらないとな〉と思いましたね。聴く時期や状況によって捉え方が変わるというか。普遍性のある曲になったと思います」

木島「BPM180のアニメのエンディング曲っていうのもいいですよね(笑)」

記念すべきメジャー・ファースト・シングルの制作は、〈ハンブレッダーズらしさとは何か?〉という根本的なテーマと向き合うきっかけにもなったという。

でらし「ファースト・シングルのためにムツムロさんが最初に書いた曲も良かったんですけど、スタッフから〈ハンブレッダーズらしさをもっと出していいんじゃないか?〉という意見が出て。次に書いてきた曲はミドルテンポで、周りの評判も良かったんですが、今度は僕が〈ハンブレッダーズのファースト・シングルがゆったりした曲だと、リスナーからガッカリされちゃうんじゃないか〉と思ってしまって。元気、疾走感、勢いというイメージもあるバンドなので」

ムツムロ「バンドのアイデンティティについていろいろ考えた挙句、占いの本を買いまして(笑)。そこに〈来年(2020年)はいいことがある〉と書いてあって、その勢いで書いたのが“COLORS”なんですよ。〈らしさ〉については、いい意味で適当に考えてますね。僕が曲を書いて僕が歌って、バンドで演奏すればハンブレッダーズらしくなるはずなので」

 

シングルのカップリング曲にも、このバンドにしか描けない風景や感情、サウンドが込められている。“フェイバリットソング”は、好きなバンドの曲に対する〈誰にも知られたくないのに/誰かにわかってほしいんだ〉というアンビバレンツな思いを描いたアッパーチューン。

ムツムロ「本当に好きな音楽のことって、あまり口にしたくないし、簡単に触ってほしくないという気持ちもあって。〈何でこのバンドが知られてないんだよ〉という思いと、自分だけのものであってほしいという気持ちが両方あるというか」

でらし「何だろうね、あの感じ(笑)。そういう尖った感覚は大事だし、大人になる過程で経験できてよかったと思います」

木島「歌詞に関しては、じつはそこまでみないんですよ(笑)。語感で捉えたほうがドラムのアレンジを作りやすいので。たとえば〈愛してる〉と〈大好き〉では語感が全然違うし、ドラムのフレーズにも影響するんですよね」

 

3曲目の“パーカー”は、恋人と別れた男子が、後悔と未練をじんわりと滲ませる姿を綴ったミディアムチューン。ムツムロの作家性が強く表れた楽曲だ。

ムツムロ「“パーカー”は実際の出来事を曲にしたのではなくて、頭のなかで設定を決めて書いたんです。〈ちょっと笑っちゃいそうだけど、こういうことありそう〉というギリギリのところを突くのが好きで(笑)」

木島「もうちょっと派手にしたいという気持ちと〈やりすぎると歌が聴きづらくなる〉というせめぎ合いのなかでアレンジしました。結果、すごくシンプルな演奏になってますね」

ムツムロ「いつも〈17歳の自分が聴いて、どう感じるか?〉を意識していて。このバンドを続ける限り、そこはブレないと思います」

というスタンスを貫くハンブレッダーズ。思春期のヒリヒリした感情を刻み込んだ楽曲はここから、さらに幅広い層のリスナーを巻き込んでいくはずだ。

でらし「曲をいっぱい出して、出来るだけライブもやって。2021年はバンドらしいことをたくさんやりたいです。昨年の8月に〈RUSH BALL 2020〉に出た時、半年ぶりのライブということもあって、すごく緊張感があって。あのときに〈またバンドの1年目が始まった〉という感じがあったし、また1から始めたいと思ってます」