ロックンロールはまだ終わっちゃいない! 魂の震える瞬間を求め続けるギター・バンドに新たな仲間が加入。4人の運命共同体がめざす夢とは!?

バンドやりてぇと思わせたい

 ギラッとした光を放つギター、疾走するビートが〈無敵の青春〉へと直結する“起きろ!”、圧倒的な疾走感と共にロックンロールへの欲望が炸裂する“ヤバすぎるスピード”。最初の2曲でいきなりノックアウト。ロック・バンドの衝動と速さ、オーディエンスの心に火をつける熱量にやられてしまった。

 ハンブレッダーズから、ニュー・アルバム『ヤバすぎるスピード』が届けられた。配信シングル“カラオケ・サマーバケーション”、TVアニメ「忍の一時」のOPテーマ“光”などを収めた本作は、メジャー3作目のアルバムとは思えないほどの(?)、瑞々しく、鮮烈なロックンロールで占められている。この初期衝動感はまるでファースト・アルバムみたいだ。

 「2作目の『ギター』もよく〈ファースト・アルバムみたいですね〉って言われました(笑)」(木島、ドラムス)。

 「メジャー3作目って、アコースティックな曲や、BPMを抑えた大人の音楽をやるバンドもいるけど、自分としては〈そうなってたまるか!〉と。ロック・バンドはずっとファースト・アルバムを作ればいいと思うんですよ、クロマニヨンズみたいに。このアルバムをタワレコの試聴機で聴いて、音が鳴った瞬間に人生を狂わせられる――そんなアルバムにしたいという気持ちもありました」(ムツムロアキラ、ヴォーカル/ギター)。

ハンブレッダーズ 『ヤバすぎるスピード』 トイズファクトリー(2022)

 本作リリースの1か月前に、3年半に渡ってバンドをサポートしてきたギタリスト・ukicasterが正式加入。これまでもレコーディングやライヴで卓越したプレイを聴かせていた〈うきくん〉が正式にメンバーになったことで、制作の現場にも新たな刺激が生まれたという。

 「4人でスタジオに入れたのは大きいですね。『ギター』の製作時にはうきくんは大阪在住だったから、まず他の3人で8割くらい作ってから、僕らが大阪に行くタイミングでリード・ギターを重ねてもらってたんですよ。今回は一緒に音を出しながらアレンジできたので、意見のすり合わせもスムーズで」(でらし、ベース)。

 「〈一緒にやる〉って重要で、そこにバンドにしかないものが出てくると思っていて。4人でスタジオに入ってると、運命共同体という感じがしてくる……と俺は思ってるんだけど、どう?」(ムツムロ)。

 「僕も思ってますよ(笑)。前作までは〈ここにうきくんのギターが入る〉と想像しながらやってたんですけど、今回は同じ場所で演奏できて。やりやすかったし、演奏のテンションも上がったと思います」(木島)。

 「〈歌がいちばん大事で、リード・ギターは最後に花を添える存在〉というスタンスは変わらないですけど、一緒に演奏することで、ダイナミクスや緩急、抑揚を付けやすくなりましたね。正式加入を発表する前は、プレッシャーで落ち込んでたんですけど、いざ発表したら、〈こんなに期待してくれてるんや〉と実感できて。ファンの方の理想を崩したくないし、見られ方も意識するようになりました」(ukicaster、ギター)。

 〈4人のハンブレッダーズ〉の勢いと熱気がもっとも端的に表れているのは、タイトル・トラックの“ヤバすぎるスピード”。〈初めてギターをかき鳴らした/あの瞬間よりも今が最高〉と、ロックンロールと自分への確信を掲げながら一瞬で駆け抜けていくこの曲は、アルバムの支柱と言っていいだろう。爆音&速弾きのギター・ソロも最高だ。

 「ミックスが終わって聴いたときに、〈こんなギター弾いてたんや!?〉って。自分も盛り上げようとがんばって叩いたけど、完敗でした(笑)」(木島)。

 「あのギター・ソロ、やっぱり気になりますよね(笑)。あそこまで振り切ったギターを弾く人、今の日本にはあまりいないと思んですよ。ヤバすぎて笑っちゃうし(笑)、ラップをやろうと思ってた中学生がギターを手にしたくなるような演奏だと思います」(ムツムロ)。

 「中学生、高校生に〈バンドやりてえ〉と思わせたいんですよね。最近はロック・バンドの曲調も変わってきてますけど、それをぶち壊していきたいという反骨精神もあって。そのためにもフェスでトリをやれるバンドになりたいと思ってます」(でらし)。