メジャーデビューを飾ったファーストフルアルバム『ユースレスマシン』以来、約1年9か月ぶりとなる待望のセカンドフルアルバム『ギター』を11月24日にリリース! 閉塞感漂うコロナ禍の中でロックバンドとしてハンブレッダーズのメンバー3人が出した答えとは。

ハンブレッダーズ 『ギター』 トイズファクトリー(2021)

生々しいライブ感に溢れたサウンド、喜怒哀楽を注ぎ込んだ歌、そして、〈この閉塞感を打ち破りたい〉という意志。ハンブレッダーズのセカンドフルアルバム『ギター』は、ロックバンドとしての魅力と凄みに貫かれた作品となった。

ムツムロアキラ(ボーカル/ギター)「前作の『ユースレスマシン』は、それまで培ってきたこともありつつ、J-Popを意識したところもあって。〈次はもっと大人びたポップスっぽいものを作ることになるのかな〉と思ってた矢先に(コロナ禍で)ツアーが中止になったんです。世の中的にも閉塞感、孤独感を感じざるを得ない状況だったし、〈その雰囲気をぶち壊したい〉という曲が自然と増えたんですよね。今回のアルバムは全編を通して歪んだギターが鳴ってるし、バンドらしい作品になったのかなと」

木島(ドラムス)「前作は〈歌詞に合うように〉とか〈ベースやギターに合わせて〉みたいなことを意識してたんですけど、今回はいい意味で、好き勝手にやった曲が多くて」

でらし(ベース/コーラス)「溜まったフラストレーションを爆発させたというか。〈自分たちが17才の頃に聴いたら、めちゃくちゃワクワクしただろうな〉と思えるアルバムになりました」

歪んだギターと解放的なメロディー、現状を打破する音楽のパワーを注ぎ込んだリードトラック“再生”は、現在のハンブレッダーズの姿勢を端的に示す楽曲。根底にあるのは〈どんな状況になっても、必ず再生してみせる〉という強い思いだ。

ムツムロアキラ「2曲目の“ギター”、3曲目の“BGMになるなよ”もアルバムを象徴する楽曲だと思うんですが、ロックに興味がない人にも聴いてもらえる曲がほしいと思って、最後に作ったのが“再生”なんです。いちばん伝えたいのは〈理不尽や絶望じゃ/止められやしないんだ/僕達の再生を〉の3行。この先、すべてが元通りになるかはわからないけど、音楽が好きという気持ちを持った人が集まれば、必ず再生できると思ってるので」

でらし「この曲が出来たことで、アルバムの最後にピースがハマった手ごたえがありましたね。歌詞もメロディーも、ハンブレッダーズがやってきたことと地続きになっているのもいいなと」

木島「アレンジはすごくシンプル。サビもみんなで歌ってたり、ギターのカッコよさもありつつ、僕ら3人の勢いを見せられたらいいのかなと思ってレコーディングしました」

〈レッド・ツェッペリンみたいなギターリフの曲をやってみたくて(ムツムロアキラ)〉という“ガチャガチャ”も、ロックバンド本来のカッコよさを体感できる。濃密なグルーヴを放ちまくるベース、ドラムのコンビネーションからも、バンド全体の成長ぶりが伝わってくるはずだ。

でらし「“ガチャガチャ”のベースラインは、アルバムのなかでも一番カッコいいと思いますね。歌詞にはそんなに意味がないんですけど(笑)、本気でふざける感じもウチのバンドらしいのかなと」

木島「こういうハードロックっぽい曲も好きなんですけど、ドラムはかなり難しくて、しんどかったです(笑)。ライブでしっかり叩けるようにがんばらないと」

さらに、青春時代の爽やかさ、切なさを描き出した“スローモーション”(ポカリスエット協力Webムービー「15歳での挫折と決断。インターハイで果たす3年前の約束」テーマソング)、〈子どもの頃に聴いていたパンクっぽいアニソンをイメージしてました〉という“名前”(TVアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」エンディング主題歌)などのタイアップ曲、恋人に対する複雑な感情を綴ったバラード“天国”、オーソドックスなR&Rと求婚をテーマにした歌詞が一つになった“プロポーズ”など色彩豊かな楽曲を収録。

また、〈僕らはいつだってひとりで/どこにだって行けるんだ〉と歌う“アイソレーション”と〈君は絶対 ひとりになれない/ひとりにさせない〉と語り掛ける“君は絶対”の対比も強く心に残る。

ムツムロアキラ「〈人間はひとりだ〉と思うこともあるし、〈いや、そうじゃないはずだ〉と感じることもあって。それは矛盾しているようでいて、そうじゃないと思うんですよ。他の曲もそうなんですけど、〈その瞬間は、こう思った〉という記録でもあるんですよね」

〈今〉のリアルを切り取り、歪んだギターを軸にしたサウンドとともに放ちまくるアルバム『ギター』。自分たちの表現欲求に従い、トレンドや時流に抗うような音楽を鳴らす――その姿勢こそが本作の最大の魅力であり、ハンブレッダーズの本質。ロックの新たな名盤『ギター』が、ライブハウスで響き渡る瞬間を心待ちにしながら、本作を何度も再生したいと思う。