ユニゾンの美しさで響かせる世界中の星にまつわる歌

 テノールとバリトンによるデュオ、SiriuSの新作『星めぐりの歌』は、彼らのユニット名にちなみ、星にまつわる歌が集められた。幅広い時代とジャンル、さらに意外性のある選曲が大きな魅力になっている。

 「星の名前なのだからと、ライヴで星にまつわる歌を歌い始めたのが最初かもしれないですね」(大田翔)

SiriuS 『星めぐりの歌』 コロムビア(2020)

 前作では膨大な数の楽譜から収録曲を厳選したが、今回は、「星って昔から音楽の題材になり続けてきたのか、それこそ星の数ほどあるんですよね。そのなかから僕らが歌いたい曲を少しずつ選んで、配信を先行させたので、曲探しを続けるなかで、素敵な曲に今も巡り合っているところです」(田中俊太郎)

 ミュージカルの名曲を原語で歌った前作に対して、今回も“星に願いを”などは英語で歌うが、多くは日本語の歌で、宮沢賢治の“星めぐりの歌”もある。

 「オペラやミュージカルとは異なり、日本語の歌を歌う時は、いかにシンプルに言葉と音楽を紡いでいくかがすごく大事だと気付かされました。宮沢賢治の“星めぐりの歌”は、『双子の星』という作品に出てくる歌で、宮沢賢治の世界でこの歌がどう響いているのか。没入しながら聴いていただけると、大人の僕らがこの曲を歌う意味があるのかなと思います」(田中)

 他に“上を向いて歩こう”や“銀河鉄道999”など有名曲がある一方で、1970年代に放映された園山俊二原作のアニメ「ギャートルズ」のエンディングテーマ曲“やつらの足音のバラード”など、SiriuSの世代は知らない曲があったりもする。

 「ほとんど知らなかった作品ですが、『ギャートルズ』は、園山さんのメッセージとして東西冷戦とか、何もない理想の世界を求めていきたいとの思いから、原始時代の物語を描かれたようで、今の大変な時期と重ね合わせて、僕の心に一番刺さった曲ですね」(田中)

 それらを歌うなかで大切にしているのは2人の声のキャラクターであり、声を重ねるユニゾンでもある。 「テノールとバリトン、違う種類の声が寄り添うユニゾン、さだまさしさんの“ふたつならんだ星~アルビレオ~”もそれぞれが歌った後で、声が合わさった瞬間、自分でも感動するところがありましたね」(大田)

 「ユニゾンを鳴らす時に2人で寄り添うわけですが、どちらかに寄るのではなく、共に寄り添うことが今回はうまくいったかなと思います。その塩梅がレコーディングではとても重要になってくるので……」(田中)

 ハーモニーとは異なるユニゾンの美しさと、こんな曲もあるのか、という発見が詰まった作品である。さらに4か国語で歌うフランス民謡の童謡“Kirakira☆星”も新鮮。これも大いなる発見だ。