研究家気質のサックス奏者・小林香織が生み出す、ユニークな音がつまった最新作!

 「私がやっていることは創作というよりも研究という表現が相応しくて、〈どうやったらメロディーをもっとポップに聴こえさせられるのか? どんなストーリーを構築したら新感覚のサックス・ミュージックができるのか?〉と、日夜研究しているんです。たぶんその作業はこれから先も変わらず続いていくでしょうね」

小林香織 『NOW and FOREVER』 キング(2021)

 なるほど、表題の『NOW and FOREVER』にはそんな意味合いも込められているわけか。デビュー15周年を記念したこの新作は、自然と湧き上がる好奇心に基づきつつジャンルレスでタイムレスな音楽作りに勤しむ日本屈指の女性サックス奏者、小林香織の不変のスタンスや方向性を明確に示してみせる。アルバムは、気心知れたレギュラー・メンバーとのバンド・スタイルに加えて、ライヴ活動を通して親交を深めた鈴木茂&ハックルバックとの2曲、世界を股にかけて活躍するM-Swiftをプロデューサーに迎えた2曲という3本柱で構成されているが、ラグジュアリーでメロウな空間を演出するハックルバックとの共演、90年代のヒップホップやUKアシッド・ジャズのテイストを採用したM-Swift関連曲(ヴォーカルをフィーチャーして新機軸を打ち出している)などインスト音楽の可能性を探る小林の積極果敢な姿勢が随所で確認できる。かつてバーシアおたくだったという出自や、松任谷由実(彼女のライヴ〈SURF & SNOW in Naeba Vol. 40〉に小林がサックスで参加)などジャパニーズ・ポップスの先駆者へのリスペクトが滲むところもいかにも自然でいい。

 「影響を受けたアーティストの曲を広く捉えつつ、 間奏などにはジャズの醍醐味でもあるアドリブ・ソロの要素を取り入れながら、独自のスタイルを追求してきたつもりなので、そういう音楽を聴いて育った音楽家が作るサックス・アルバムになっていると思います。シンガー・ソングライターになっていればもっとわかりやすかったのかもしれませんが、 そんな私が思いがけずサックスという楽器を持ってしまった。そこに尽きると思う。そういう意識で聴いていただけたら、私の音楽の世界観を理解していただけるかもしれません」

 どこかに属するよりも、とにかく好きなものを取り入れたい気持ちが勝った結果、やけにハイブリッドなサウンドや何ともユニークなグルーヴが生れ落ちてしまったというその痛快さ。これから先も永遠にその意思を曲げることなく彼女は進んでいくはずだ。

 「そもそもサックスという楽器でありそうでないものを創ろうと研究していること自体が変わっているでしょうね。でもそこに興味が向かってしまうのですから仕方がないですよね(笑)。それから何があろうともつねに前を向いていること。音楽的にも、精神的にも。それが私全体のコンセプトと言えるかもしれませんね」

 


LIVE INFORMATION

小林香織 New Album報告会
〇2021年3月5日(金)19:00開演
【会場】目黒 Blues Alley Japan

鈴木茂 ホワイトデーライブ
〇2021年3月6日(土)1st Stage 14:00開演 /2nd Stage  18:00開演
【会場】まほろ座 MACHIDA

小林香織 SPRING LIVE 2021
〇2021年3月14日(日)18:00開演
【会場】北見芸術文化ホール(きた・アート21)中ホール(北海道)

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