J-FUSIONの集大成と言えるコンピ! シティポップの源泉がここにある。

VARIOUS ARTISTS 『GO GO J-FUSION! 2 The Best J-Fusion of Victor Archives: late 80s~early 00s』 ビクター(2023)

 日本のフュージョンシーンを支えた数多くのミュージシャンのフレイバーがこれでもか!と詰まったコンピレーションアルバムが2枚組という豪華版でリリースされる。

 ヴォーカルのいない、所謂インストゥルメンタルというジャンルは、古くはジャズに始まり、様々な分岐・進化を遂げ、70年代後半はクロスオーバー、そして80年代はフュージョンという一大ムーヴメントを形成する。ブレッカー・ブラザーズやウェザー・リポート、ハービー・ハンコックなどから受けた薫陶は、海外ではGRPの黄金期を築き、日本国内ではカシオペア、ザ・スクェアなどをスターダムへとのし上げた。それらはジャズ的なインタープレイなどを保ちつつも、全体としては細部までしっかりデザインされた日本人らしい緻密さがある。近年のシティポップ再評価に通じる源泉がここにあると言ってよいだろう。本コンピでは、その魅力を十分に堪能できる80年代後半から2000年代までの幅広い世代に愛される、未だ色褪せない名曲をラインナップしている。

 参加アーティストは、収録楽曲のクレジット以外にも、サポートやゲストミュージシャンを加えれば、70年代後半からこの現代に至るまでのジャズやロック、さらには歌謡曲まで、シーン全般に多大なる貢献をしてきた名手揃いである。すでに故人となってしまったプレイヤーの楽曲なども収蔵されており、当時をリアルタイムで知るものには懐かしく、初めて接するものにも新鮮な驚きを与えてくれるに違いない。

 また楽曲により名前を覗かせる海外ミュージシャンも時代を彩るトップランナーが多数参加しており、〈この人がここに参加していたのか!?〉なんていう驚きも嬉しい。

 このフュージョンというジャンルの効能は演奏のテクニカルな裏付けがありつつも、頭の中を解放できる爽快感、そして歌がない分、より誰しもが共有できる叙情感を持ち合わせていることではないだろうか?

 これからの時期には真夏の海や夕暮れのドライヴ等々色々なシーンに気持ちよく馴染んでくれる良盤だ。

 


TRACKLIST

Disc 1
1. セプテンバー/熱帯JAZZ楽団[1998]
2. ハイ・プレッシャー/マルタ[1987]
3. アイム・ゴナ・ビー・アローン(ラハイナ・ムーン)/パシフィック・コースト・ジャム・フィーチャリング・バド・ヌアネス、ポーリン・ウィルソン[1989]
4. キープ・ザ・フェイス/フォー・オブ・ア・カインド[2004]
5. アット・ザ・ライト・プレイス/J&B[2004]
6. ブリージン/小池修[2000]
7. ディスペンセイション/櫻井哲夫[2000]
8. コンドレンス/本田雅人[1998]
9. サドゥン・サンバ/赤木りえ[2001]
10. オン・マトリックス/重実徹[2000]
11. 変わらぬ想い/小林香織[2005]
12. トワイライト・ウェイヴ/浜口茂外也[2000]
13. ステッピン・アウト/天野清継、国府弘子[1993]
14. 淑女の想い/ポンタ・ボックス & 吉田美奈子[1998]

Disc 2
1. スリングショット/国府弘子[1990]
2. フェイス・トゥ・フェイス/タイガー大越[1989]
3. 悲しいうわさ/バンド・オブ・プレジャー[1996]
4. フィンガー・タフ/青木智仁[2000]
5. サマー・ソフト/フォー・オブ・ア・カインド[2004]
6. ディア・オールド・アヴィニョン/ウィットネス[2005]
7. キープ・スマイリング!/塩谷哲 with ソルト・バンド[2002]
8. ラーフター・イン・ザ・レイン/JとB[2006]
9. ミーンズ・ノウ/春名正治[2001]
10. ビーン/松原正樹[2004]
11. オレンジ・エクスプレス/熱帯JAZZ楽団[2005]
12. プリメーラル・ベソ/森村献[2001]
13. ミッドナイト・カウボーイ/ガープ[2001]
14. ソバカスのある少女/村上“ポンタ”秀一 feat. 角松敏生 & 南佳孝[2003]