絵画がリアルを獲得するには遠近法が必要だった。映像ではサイレントを伴奏した音楽はリアルへの一手だったが、心理的なものだった。映像と完全にシンクロするサウンドが必要だった。トーキーが誕生、リップシンクが実現し、聴覚の供給するリアルは、映画のリアルを再構成するテクニック、サウンド・デザインによって実現される。大戦前すでに、映画の扱う音響的な要素は膨大になっていて、人間が聞いたことのない怪獣の咆哮や空間を、人の手によるサウンドが演出していた。戦後原始と未来を映像とサウンドでブリッジした「2001年宇宙の旅」が登場し、映画の中に再構成されるリアルはリアルを超えて、という映画音響史。